第2章 第1節 1.地域経済の自立と地域財政の自立

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第1章でみたとおり、地域経済は総じて回復の方向に向かっているものの、その状況にはばらつきがある。しかし、その中で、経済の好調な地域をみると、好調さ故に人を惹きつける力を持ち、人が多く集まることによって消費が喚起され、新しい産業が生み出され、それによってさらに人が集まるというように、地域経済をめぐる好循環が形成されている。

以下では、地域経済を構造的に分析することによって、地域経済が自立するための条件を検討していくことにする。

第1節 地域経済と地域財政の自立の現状

1.地域経済の自立と地域財政の自立

地域の経済は自立しているか。こうした問いかけに対して、自信を持って、肯定できる地域は少ないだろう。

「地域経済の自立」とは、江戸時代の藩制度のように、一地域、一都道府県内でおよそ全ての需要と供給がまかなわれる経済を想定しているわけではない。江戸時代においても、年貢米を大阪の米市場に運び、それを売りさばくことで必要なお金を得ていた。ましてや、グローバル化が進展し、ヒト・モノ・カネの移動にほとんど制約のない現在、一地域、一都道府県内で全てが循環する経済を想定するのは、不可能と言える。

公的部門に寄り掛かる経済では、民間の知恵や創意工夫を発揮して成長していくことが困難になると考えられる。公的部門は一般的に生産性が低いため、この部分に資源がシフトすれば、経済全体の生産性の低下を招きかねない。また、中央政府や多くの地方政府の債務残高を考えると、公的部門に依存した成長には持続性がないと考えられる。

「地域経済の自立」とは、公的部門、例えば公的投資に極力依存しないで、民間主導で地域経済が成り立つことと考えられる。また、「地域財政の自立」とは、地方交付税や中央政府からの補助金などを過度に当てにせずに、自分の仕事を自らの責任で調達した資金でまかなうことと考えられる。これらは容易に実現するわけではないが、現状はどうなっているのかについて、以下でみることにする。

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