第2章 <コラム4> 公共投資と建設市場の動向済

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保険事業会社協会の「公共工事前払金保証統計」で、公共工事請負額の推移をみると、90年代は景気後退局面において公共投資を中心とする経済政策が累次にわたって発動された結果、公共工事請負額は増加、高止まり傾向にあった。しかし、99年度以降減少に転じ、01年度以降は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)によって公共投資の投資規模や中身が見直され、公共工事は着実に縮小を続けている(図1)。

発注者別の内訳をみると、2000年度から04年度にかけて、全地域で大きく減少している。寄与度をみると、特に地方機関からの発注の減少が大きい(図2)。

次に、国土交通省の「建設投資見通し」で国内の建設市場全体の動向をみると、97年度から一貫して減少基調が続いており、05年度の建設投資額は、ピーク時の92年度の約6割にまで減少する見通しである(図3)。

一方、建設業の許可業者数は、3大都市圏、地方圏ともに99年度をピークに減少に転じたが、足元でやや増加している(図3)。これに対し、建設業の就業者数は、97年をピークに減少を続け、04年では90年代初頭の水準まで減少しており、そのスピードは、三大都市圏より地方圏の方が早くなっている(図4)。建設投資額の減少は、建設業許可者数よりも就業者数、つまり雇用面から調整が行われていると言える。

05年度も公共投資の削減は続く見込みであり、その影響から建設市場規模はさらに縮小するとみられる。厳しい状況が続く中、今後建設業で生き残りを図るには、さらなる経営基盤の強化や経営の合理化、企業間提携などの取り組み、また建設業関連の有望分野や建設業以外の新分野への事業展開が必要となる。

なお、公共工事費における災害復旧工事費の寄与度をみると、北海道南西沖地震が起きた93年度、阪神・淡路大震災が起きた翌年の95年度、そして非常に多くの台風が上陸し、また新潟中越地震が発生した04年度など、大災害が発生した年は増加に寄与している(図5)。直近の公共工事の動向においても、昨年の台風・地震に対する災害復旧等事業費の予算措置(平成16年度補正予算)を反映した受注増加がみられた(図6)。

図1 公共工事請負額 図2 公共工事請負金額 (00→04年度増減率 発注者別寄与度)
図1 公共工事請負額 図2 公共工事請負金額(00→04年度増減率 発注者別寄与度)
図3 建設投資額と建設業許可業者数 図4 建設業就業者
(00→04年度増減率 発注者別寄与度)
図3 建設投資額と建設業許可業者数 図4 建設業就業者
図5 公共工事受注全体に対する
災害復旧費の寄与度
図6 公共工事請負全体に対する
北陸、新潟、四国の寄与度
(00→04年度増減率 発注者別寄与度)
図5 公共工事受注全体に対する災害復旧費の寄与度 図6 公共工事請負全体に対する<br>北陸、新潟、四国の寄与度
(備考) 1. 図1、2、6は保証事業会社協会及び北海道建設業信用保証(株)・東日本建設業保証(株)・西日本建設業保証(株)「公共工事前払金保証統計」により作成。
2. 図3は国土交通省「建設投資見通し」により作成。建設投資額の03~04年度は見込み、05年度は見通し。建設業許可業者数は年度末。三大都市圏とは、北関東、南関東、東海、近畿。地方圏はその他の地域。
3. 図4は総務省「労働力調査」により作成。
4. 図5は国土交通省「建設工事受注動態統計」により作成。

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