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以上みてきたように、地域経済は昨年秋口ごろの踊り場的局面を克服し、再び緩やかな回復軌道に乗っている。これは今後も続くと言えるのだろうか。
景気ウォッチャー調査の先行き判断DI(2~3か月先の見通しを尋ねたもの)をみると、4月以降6か月連続で横ばいを示す50を上回っている(第2-5-1図)。とりわけ、愛知万博閉幕後の反動が懸念された東海も上昇しており、50を超える状況が続いている。一方で、原油価格の高騰に伴って、ガソリン価格や灯油価格の上昇が続いていることから、その家計への影響を懸念するコメントも各地域で目立ってきている。
第2-5-1図 おおむね「良くなる」と期待される先行きの景況感 |
大都市圏
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地方圏 I
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地方圏 II
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(備考)内閣府「景気ウォッチャー調査」により作成。 |
ガソリン価格の推移をみると、今年に入ってから、地域を問わずに大幅に上昇しており、9月の全国平均店頭価格は、13年8か月ぶりにリッター当たりで130円を突破している(付図2-1)。
付図2-1 各地で高騰するガソリンと灯油
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レギュラーガソリン価格
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灯油価格(店頭)
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(備考) |
1.石油情報センター「給油所石油製品市況調査」により作成。
2.毎月10日現在の価格(消費税込み)。
3.地域区分はB。 |
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しかし、地域によって、消費支出に占めるガソリン支出の割合は異なる。都市圏では低く、地方圏は高いという傾向がみられる。冬場にかけては灯油の消費が増加することが予想される。同様に消費支出に占める灯油支出の割合をみると、北海道が格段に高くなっており、以下、東北、北陸で全国平均を大きく上回っている。灯油価格も値上がりが続いており、寒さを我慢することは難しいため、灯油支出は個人消費の圧迫要因になることが懸念される(第2-5-2図)。さらに、最終製品にまで価格転嫁が進んで消費者物価が跳ね上がることや、ガソリン価格上昇による心理的な影響のほうも出てくるかもしれない10。消費者物価をみると、05年4-6月期で自動車等関係費がすべての地域で上昇に寄与している(付図2-2)。
第2-5-2図 家計に占めるガソリン支出と灯油支出
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ガソリン支出割合
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灯油支出割合
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(備考) |
1. |
総務省「家計調査」により作成。 |
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2. |
なお、ガソリン支出割合は、2002年8月~2005年7月の消費支出に占めるガソリン支出の単純平均。灯油支出割合は、過去3年の冬季(12月~2月)期間中の消費支出に占める灯油支出の単純平均。 |
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3. |
地域区分はC。 |
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付図2-2 消費者物価指数
(2005年4-6月期 前年同期比・寄与度) |
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(備考) |
1. |
総務省「消費者物価指数」により作成。 |
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2. |
地域区分はB。 |
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原油価格の影響は製造業全般や非製造業、特に輸送業にも見られる傾向である。その上昇の影響を価格に転嫁できずに、利益率が悪化しているとも指摘されている。
原油価格の動向には引き続き注意が必要だが、雇用情勢の改善が賃金の上昇を伴い、個人消費につながるという面からの下支え効果は今後も続くと考えられる。
また、現状でも残存する地域間・地域内の回復のばらつきは解消されていくのだろうか。地域の景気を平準化していた公共投資の削減が続くなか、地域間の景気回復が一様でないのはある意味当然とも言える。しかし、例えば、現在、地域の生産をけん引しているのが電子部品・デバイスと輸送用機械だからと言って、それらの工場を回復の遅れている地域にも建てるようなことは、景気平準化の一助となるのだろうか。今回はあり得るかもしれないが、次回以降の景気のけん引役がこれらの業種であるという保証はない。地域の独自性を活かしつつ、景気循環にも強い地域を作っていくことが必要である。落ち込みがあまりなければ、回復が緩やかであっても、人々の暮らしはあまり変わらないだろう。地域の産業の底力をいかに強くしていくのかが求められている。
10. |
石油製品の業界団体である「石油連盟」のアンケート調査(05年9月公表、ホームページによるアンケート調査、28,756人が回答)によると、ガソリン価格の上昇によって、ガソリン消費を節約している人は48.2%、節約したいができない人は39.0%、節約していない人は12.8%。 |
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