第2章 4.未だに残る地域間・地域内のばらつき
1) 北海道と東北はやや弱含み
05年8月現在、各地域の景気判断をみると、東海が「力強く回復している」一方で、北海道や東北では「やや弱含んでいる」。とりわけ北海道では、03年5月以降10四半期連続で「やや弱含んでいる」状態が続いている。この景況感のばらつきは何によってもたらされているのだろうか。また、ばらつきが解消する見込みはあるのだろうか。
これら2地域をみると、特に個人消費にやや弱さがみられる。他の地域では、05年の半ばになって、持ち直しの動きがみられているにもかかわらず、である。賃金の動向をみると、前述のとおり、北海道、東北ではこのところ前年を大きく下回って推移しており、所得要因からの下押し圧力があるとみられる。また、この2地域では6・7月の天候が悪かったこと(両地域では7月上旬まで低温が続き、東北地域では梅雨明けが8月上旬までずれ込んだ)も大きいと考えられる。
しかし、明るい動きもみられる。北海道では来道者数が前年比横ばいまで持ち直してきており、知床半島の世界自然遺産への登録効果もあって(コラム1を参照)、今後さらに観光客の増加による活性化が期待できる。東北では電子部品・デバイスの生産調整がほぼ終了し、生産面からの弱さは解消されている。
2) 生産面のばらつき
生産のばらつきをみると、全く縮小していない。前回、前々回の回復局面においては、地域間のばらつきはほぼ一定か、もしくは縮小する傾向すらみられた。今回の回復局面では、生産の回復は一様ではなく、各地域の産業構成や輸出競争力の差異が現れる結果となっている(第2-4-1図)。
第2-4-1図 景気回復時の鉱工業生産指数のばらつき | |||||||||
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3) 雇用面のばらつき
雇用面をみると、有効求人倍率の地域間のばらつきは縮小していない。これは有効求人倍率の上昇テンポに差があるためと言える。最大の地域が力強く上昇する一方、最小の地域は上昇が緩やかにとどまっており、結果として差が開くことになっている。変動係数をみると、景気回復局面に入ったころ(02年)にはおおむね横ばいで推移していたものの、03年の中ごろから上昇が目立ち始め、05年に入ってからも高いままで推移している。
過去と比較すると、前回、前々回の回復局面においては、地域間のばらつきはむしろ縮小する方向にあった。今回の回復局面は、有効求人倍率の最大地域が大きく上昇し、最小地域の上昇幅が緩やかという意味でバブル経済時とよく似た傾向となっている。しかし、変動係数の水準をみると、前回の回復局面程度のものにとどまっている。ばらつきは解消されていないものの、必ずしも大きくはないと言える(第2-4-2図)。
第2-4-2図 有効求人倍率のばらつき |
(備考)厚生労働省「一般職業紹介状況」により作成。 |
4) 地域内のばらつき
今までは、大くくりの「地域」の景気動向を見てきた。しかし、人々が感じる景気動向は大括りの地域や全国の値よりも、より身近な単位における景気であるとも言える。
こうした問題意識に立って、「地域内9。
生産について、景気の谷である02年1月からの推移をみる。ばらつきは東海、北陸、近畿、四国でやや拡大傾向となっているが、東北、北・南関東、中国、九州では横ばい程度となっている(第2-4-3図)。
第2-4-3図 各地域内でみた鉱工業生産指数のばらつき | ||||||
大都市圏 |
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地方圏 I |
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地方圏 II |
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有効求人倍率について、同様に02年1月からの推移をみる。東北では一貫して拡大しており、南関東や中国は05年に入って、拡大傾向となっている。東海や近畿は04年まで上昇してきたが、05年に入ってほぼ横ばい傾向となっている。北関東、北陸では横ばいで推移している(第2-4-4図)。
第2-4-4図 各地域内でみた有効求人倍率のばらつき | ||||||
大都市圏 |
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地方圏 I |
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地方圏 II |
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完全失業率について、02年と04年を比較すると、ばらつきは5地域で拡大している一方、1地域でほぼ横ばい、3地域で縮小している。
東海は両年ともにばらつきが一番小さいが、四国は大幅に拡大している。これは四国内で3県は失業率が下がったものの、1県だけ大幅に上昇したためである。北陸も大幅に上昇しているが、04年の北陸3県の失業率はいずれも全国平均の4.7%を下回っているため、ばらつきが拡大しているからと言って一概に雇用情勢が悪化したとは言えないだろう(第2-4-5図)。
第2-4-5図 地域によって異なる完全失業率のばらつき | ||||||
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8. | 地域別かつ都道府県別で入手できるデータには、鉱工業生産指数、有効求人倍率(以上月次)、完全失業率(年次)などがある。 |
9. | 北海道と沖縄は単一県で地域としているため、ここでの分析では除外している。 |