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(1) 企業部門の改善-増加基調の続く設備投資
今回の回復局面では企業部門が家計部門に先んじて回復し、中でも設備投資の力強さが内需を支えている。
新設の工場立地件数をみると、03年は中国を除いた全地域で前年を上回っていた。これに続き、04年は全地域で前年を上回った(第2-3-1図)。
第2-3-1図 全地域で増加した工場立地件数 |
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(%、前年比) |
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北海道 |
東 北 |
北関東 |
南関東 |
東 海 |
北 陸 |
近 畿 |
中 国 |
四 国 |
九 州 |
全 国 |
2003年 |
31.4 |
19.9 |
32.8 |
3.8 |
45.0 |
5.0 |
51.4 |
△ 7.4 |
21.6 |
14.0 |
24.6 |
2004年 |
10.9 |
13.7 |
43.0 |
21.0 |
32.9 |
23.8 |
22.6 |
4.0 |
13.3 |
23.9 |
24.0 |
|
(備考) |
1. |
経済産業省「工場立地動向調査」により作成。 |
|
2. |
地域区分はA。ただし、九州に沖縄を含む。 |
|
3. |
2004年は速報値。 |
|
日銀短観をみると、04年度の設備投資実績では、製造業は全地域で前年を上回ったが、非製造業では、前年を下回った地域も多かった。これは、建設や不動産、運輸などが軒並み前年割れとなっているためである。一方、中国では建設、不動産、卸・小売、飲食・宿泊など幅広い業種にわたって動きがみられ、沖縄では小売の新規出店や、ホテル建設があったことから、前年超えとなった。
05年度計画をみても、製造業は全地域で前年を上回っている。目立つものをみると、北海道は輸送用機械の工場新設が計画されており、高水準だった04年度をさらに上回る計画となっている。東北は輸送用機械が能力増強を予定しているほか、電気機械も引き続き高水準の投資が見込まれるところである。東海は04年度に引き続き、自動車、一般機械、電気機械がけん引する見込みである。九州は輸送用機械が大きく伸長する見込みであり、福岡県が推進している「北部九州自動車100万台生産拠点推進構想5」が達成される見通しになっている。
非製造業をみると、東海と北陸は増加に転じており、両地域ともに、卸売がけん引する見込みである。特に東海は中部国際空港の開港や愛知万博の開幕により、建設が反動減となるにもかかわらず、非製造業全体としては前年を超える計画となっており、東海地域の景気の底固さを示す結果となっている(第2-3-2図)。
第2-3-2図 製造業がけん引する設備投資 |
2004年度実績
|
2005年度計画
|
(備考) |
1. |
日本銀行各支店「企業短期経済観測調査」により作成。 |
|
2. |
東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。 |
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3. |
北関東は日本銀行前橋支店管内、南関東は神奈川県。 |
|
4. |
東海は3県(岐阜県、愛知県、三重県)であり、静岡県を含まない。九州は沖縄も含む。 |
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1) 倒産は減少
企業部門の好調さは倒産の減少にも現れている。04年は03年に引き続き、倒産件数が大幅に減少した。大型倒産の中身をみても、ゴルフ場や不動産業など、過去の過剰な投資という負の遺産を引きずっていたところが倒産に至ったケースが少なくなかった。
05年に入ると、前年比で横ばいや増加する地域もみられる。これは倒産件数自体が低い水準で推移しているためである(第2-3-3表)。
第2-3-3表 低い水準で推移する倒産件数
(前年(同期)比、%) |
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北海道 |
東 北 |
北関東 |
南関東 |
東 海 |
北 陸 |
近 畿 |
中 国 |
四 国 |
九 州 |
沖 縄 |
全 国 |
2004年 |
△ 18.3 |
△ 18.0 |
△ 24.1 |
△ 14.1 |
△ 20.2 |
△ 18.6 |
△ 10.3 |
△ 21.4 |
△ 19.4 |
△ 18.0 |
△ 30.3 |
△ 15.8 |
2005年上半期 |
△ 4.8 |
△ 1.4 |
△ 0.3 |
△ 17.4 |
9.4 |
△ 36.9 |
△ 11.3 |
△ 6.9 |
△ 14.3 |
0.5 |
5.3 |
△ 9.5 |
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(備考)(株)東京商工リサーチ「倒産月報」により作成。 |
(2) 家計部門の改善-雇用情勢
1) 各指標で確認する雇用情勢の改善
雇用情勢の改善も続いている。
有効求人倍率をみると、1年前と比較して、全地域で上昇しており、直近の05年4-6月期では北・南関東、東海、北陸、中国の5地域では1倍を超えている(第2-3-4図)。近畿(0.92倍)、沖縄(0.45倍)でも過去2回の景気回復局面における最大値を超えるまでとなっている(近畿は97年4-6月期の0.62倍、沖縄は同期の0.26倍)。
第2-3-4図 有効求人倍率は各地域で上昇 |
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(%、前年比) |
|
北海道 |
東 北 |
北関東 |
南関東 |
東 海 |
北 陸 |
近 畿 |
中 国 |
四 国 |
九 州 |
沖 縄 |
05年 4-6月期 |
0.55 |
0.73 |
1.07 |
1.10 |
1.42 |
1.15 |
0.92 |
1.09 |
0.84 |
0.69 |
0.45 |
直近の同水準時期 |
97年
4-6月期 |
97年
10-12月期 |
93年
7-9月期 |
92年
1-3月期 |
92年
10-12月期 |
93年
7-9月期 |
92年
1-3月期 |
93年
7-9月期 |
97年
10-12月期 |
93年
1-3月期 |
91年
4-6月期 |
0.56 |
0.81 |
1.10 |
1.16 |
1.46 |
1.16 |
0.98 |
1.10 |
0.84 |
0.74 |
0.45 |
|
(備考) |
1. |
厚生労働省「一般職業紹介状況」により作成。 |
|
2. |
パートタイムを含む。 |
|
3. |
季節調整法はセンサス局法による。北海道、沖縄、全国を除く地域は内閣府で季節調整を行った。 |
|
4. |
直近の同水準時期は、2001年10-12月期以前に2005年4-6月期の有効求人倍率と同水準または上回った直近の時期。 |
|
完全失業率をみると、1年前と比較して、ほとんどの地域で低下している。中でも北関東、東海、北陸、中国は4%を下回っている。近畿は5.1%ながら、近畿としては98年以来の低い水準である(第2-3-5図)。
第2-3-5図 ほとんどの地域で低下した完全失業率 |
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|
北海道 |
東 北 |
北関東 |
南関東 |
東 海 |
北 陸 |
近 畿 |
中 国 |
四 国 |
九 州 |
05年 4-6月期 |
5.0 |
5.2 |
3.7 |
4.6 |
3.3 |
3.3 |
5.1 |
3.8 |
4.3 |
5.2 |
直近の同水準時期
(4-6月期) |
99年 |
2001年 |
2001年 |
97年 |
97年 |
98年 |
98年 |
98年 |
2000年 |
99年 |
4.8 |
4.8 |
3.7 |
4.0 |
2.8 |
2.8 |
5.0 |
3.1 |
4.1 |
5.1 |
|
(備考) |
1. |
総務省「労働力調査」により作成。 |
|
2. |
直近の同水準時期は、2001年以前に4-6月期の完全失業率が、05年4-6月期の完全失業率と同水準または下回った直近の年。原数値のため、同月期で比較。 |
|
3. |
地域区分はC。ただし、九州に沖縄を含む。 |
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地域別の日銀短観で雇用過剰感をみると6、1年前と比較して、四国で過剰感がやや上昇しているものの、その他の地域ではおおむね横ばいか緩和している。南関東、東海、北陸、近畿、中国、九州ではむしろ雇用の不足感が感じられるようになっている(第2-3-6図)。
第2-3-6図 地域別にみた雇用過剰感 |
|
(備考) |
1. |
日本銀行及び日本銀行各支店の公表資料により作成。 |
|
2. |
東北は6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)であり、新潟県を含まない。北関東は日本銀行前橋支店管内。南関東は神奈川県。東海は3県(愛知県、岐阜県、三重県)であり、静岡県を含まない。九州は沖縄を含む。 |
|
高校新卒者の就職率をみても、全地域で改善している。大学新卒者の就職率は、北海道・東北地域、中国・四国地域ではやや悪化しているが、例えば北海道では04年12月の景気ウォッチャー調査で大学の就職担当者から、「採用活動が終盤にもかかわらず、求人件数が増えている。企業担当者から充分な採用ができず、良い学生がいれば採用したいとの申し出がある」というコメントが寄せられるなど、新卒者の雇用環境は必ずしも悪くないと考えられる。むしろ、学生側の能力が企業の求めるそれに追いついていないという可能性がある(第2-3-7図、第2-3-8図)。
第2-3-7図 高校新卒者の就職率は全地域で改善 |
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(備考)厚生労働省「高校・中学新卒者の就職内定状況等」により作成。2004年と2005年の就職率の差を比較。 |
第2-3-8図 大学新卒者の就職率は北海道・東北と中国・四国を除き改善 |
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(備考) |
1. |
厚生労働省「大学卒業者就職状況調査」により作成。2004年と2005年の就職率の差を比較。 |
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2. |
地域区分はC。ただし、出典調査のサンプルは、全都道府県から抽出されたものではない。 |
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2) 賃金の動向
雇用情勢の改善が進み、むしろ人材不足感の強まる地域もみられる中で、賃金にもその影響は及んでいるのだろうか。
毎月勤労統計の地方調査をみると、04年は四国が前年を大きく超えており、北関東や南関東もこれに続いていた。しかし、北海道や東北では上半期までは前年を超えていたものの、下半期に入って、むしろ前年を下回る動きがみられた。また、とりわけ近畿、九州、沖縄では前年を大きく下回って推移していた。
05年7に入ってからは、南関東、東海、沖縄で前年を超える動きがみられ、近畿や九州では前年を下回っているものの、減少幅は05年に入ってから縮小してきている。一方で、北海道、東北では前年を大きく下回っている(第2-3-9図)。
第2-3-9図 持ち直しの動きもみられる定期給与
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3大都市圏を含む地域
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地方圏 I
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地方圏 II
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(備考) |
厚生労働省「毎月勤労統計地方調査」、各県労働局資料により作成。5人以上。金額の前年比。
各都道府県の就業者数でウェイト付けして地域別に集計。
毎月勤労統計地方調査は04年12月までしか公表されていないため、05年1月以降は内閣府試算値。 |
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5. |
北部九州地区で年間100万台の自動車の生産を達成すること、そのために福岡県では03年2月に「北部九州自動車100万台生産拠点推進会議」を設立し、関連企業の誘致等を進めている。 |
6. |
地域別の景況感と同様、雇用判断DIにおいても、地域ごとの数値を並べて比較することは正しくない。 |
7. |
毎月勤労統計の地方調査は04年12月までしか公表されていないので、05年に入ってからの値は、都道府県の労働局の公表データを内閣府が集計した試算値。 |
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