第1章 第2節 2.(1) 地域経済とサービス業

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2.高付加価値型産業への転換

(1) 地域経済とサービス業

経済が成長するにつれて、サービス業の比重が高まるという傾向はよく知られている。前節で見たとおり、個人消費のサービス化は全地域で着実に進んでいる。このような傾向があるなかで、地域経済の活性化には、サービス業の活性化が欠かせないテーマとなる。そのためには何が必要なのか、どういう条件を解消すれば良いのか、また、一口にサービス業とくくらずに、その中身を見たときに何が言えるか。かつ、人口減少・少子高齢化の進行と合わせると、どのような業種がサービス業のけん引役となるのか。まずはサービス業の現状を少しみてみよう。

1) サービス業と人口の関係

サービス業は新しく事業を始めようとする力が強い。すなわち、開業率は、どの地域も製造業よりもサービス業のほうが高くなっている。また、サービス業の開業率・廃業率はともに、人口が多く、また増加している地域で高いという傾向がみられる(第1-2-2(1)図)。一方、製造業では開業率と人口規模の関係はみられない。開廃業率は人口増加率とは緩やかな関係がみられるが、サービス業と比較するとその関係は緩やかである(第1-2-2(2)図)。

サービス業では、人口が増加するほど人口当たりのサービス業の従業者数が多くなるという傾向がみられる(第1-2-2(3)図)。人口規模の大きい都市ほど多彩なサービスを受けやすくなると言える。

第1-2-2(1)図 各都道府県の開廃業率と人口(サービス業)
1.人口増減率:開業率(2004年) 人口増減率:開業率   2.人口増減率:廃業率(2004年) 人口増減率:廃業率
3.人口:開業率(2004年) 人口:開業率   4.人口:廃業率(2004年) 人口:廃業率
(備考) 1. 総務省「事業所・企業統計調査」「人口推計」により作成。
  2. 04年開業率(廃業率)は2001~04年の平均開業率(廃業率)を指す。民営。
第1-2-2(2)図 各都道府県の開廃業率と人口(製造業)
1.人口増減率:開業率(2004年) 人口増減率:開業率   2.人口増減率:廃業率(2004年) 人口増減率:廃業率
3.人口:開業率(2004年) 人口:開業率   4.人口:廃業率(2004年) 人口:廃業率
(備考) 1. 総務省「事業所・企業統計調査」「人口推計」により作成。
  2. 04年開業率(廃業率)は2001~04年の平均開業率(廃業率)を指す。民営。
第1-2-2(3)図 人口と人口当たりのサービス業の従業者数
第1-2-2(3)図 人口と人口当たりのサービス業の従業者数
(備考) 1. 総務省「平成16年10月1日現在推計人口」「事業所・企業統計調査」により作成。
  2. サービス業は、総務省「サービス基本調査」対象産業。
  3. 地域区分はA。ただし、九州に沖縄を含む。

2) サービス業における成長企業

サービス業を大くくりではなくて細かくみると、どのような業種が成長しているのだろう。

ここで、売上を順調に伸ばしている企業を「成長企業」と呼ぶ。いくつかの条件に該当する企業を抽出し、その動向を検証することとする11(第1-2-2(4)表)。

01年と04年を比較すると、全産業の成長企業数は3.5%減となっているのに対し、サービス業では8.7%増となっている。うち、娯楽業、他の事業サービス業(人材派遣業など)、社会保険・福祉業は企業数自体も多く、増加率も高い。この3業種は1社当たりの従業員数も大幅に増加しており、企業の規模自体も大きくなっていることが分かる。企業数はこれらよりも少ないが、他の個人サービス業は1社当たりの従業員数が約2倍になっている。また、1人当たりの税引き後利益をみると、映画・ビデオ製作業、物品賃貸業、娯楽業、保健衛生廃棄物処理業、広告・情報サービス業では100万円を超えているが、社会保険・福祉業、他の事業サービス業の利益は増加しているものの、前者と比較すると低い。

第1-2-2(4)表 サービス成長企業
(2001年→2004年)

  成長企業数 従業員数の合計 1社あたりの
従業員数
1人あたり
税引き後利益(千円)
業種 2001 2004 増加率 2001 2004 2001 2004 増加率 2001 2004
物品賃貸業 161 151 △ 6.2 9,388 8,632 58 57 △ 2.0 1,320 1,353 33
旅館・ホテル 50 51 2.0 5,458 5,840 109 115 4.9 △ 3,725 △ 59 3,666
洗濯・理容・浴場 63 86 36.5 8,984 12,346 143 144 0.7 294 437 143
他の個人サービス 44 57 29.5 3,236 9,308 74 163 122.0 712 642 △ 70
映画・ビデオ制作 52 51 △ 1.9 2,362 2,084 45 41 △ 10.0 740 2,512 1,772
娯楽 235 337 43.4 22,183 37,022 94 110 16.4 1,509 1,187 △ 323
放送 78 76 △ 2.6 4,060 4,338 52 57 9.7 △ 2,216 447 2,663
その他の修理 66 58 △ 12.1 9,127 12,941 138 223 61.3 801 343 △ 458
広告、情報サービス 740 650 △ 12.2 122,626 70,500 166 108 △ 34.5 1,096 1,052 △ 45
他の事業サービス 668 831 24.4 95,975 139,136 144 167 16.5 163 572 409
専門サービス 290 314 8.3 36,803 46,520 127 148 16.7 944 850 △ 94
医療 150 125 △ 16.7 31,804 27,928 212 223 5.4 347 422 75
保健衛生廃棄物処理 136 135 △ 0.7 5,652 6,110 42 45 8.9 1,551 1,146 △ 405
社会保険・福祉 51 100 96.1 8,789 21,324 172 213 23.7 274 645 371
サービス業全体 2,938 3,194 8.7 377,681 415,702 129 130 1.2 511 803 292
全産業 16,817 16,234 △ 3.5 1,503,564 1,513,887 89 93 4.3 1,694 337 △ 1,357
(備考) 1. (株)帝国データバンクの企業概要ファイルを用いて内閣府にて作成。
  2. 最新年の売上高が5億円以上、最新期と前期の2期(2年)連続して売上高が10%以上伸びている、従業員1名以上、法人、の条件を満たす企業を成長企業として抽出。
  3. なお、2004年の成長企業が50未満の家事サービス、自動車整備駐車場、協同組合、宗教、教育、学術研究機関、政・経・文化団体、その他のサービスは除く。

3) 都市部へ集積するサービス成長企業

サービス成長企業の所在地はどこなのだろうか。都市部と郡町村部に分けると、全産業よりも都市部へ所在している割合が高くなっている(第1-2-2(5)図)。

第1-2-2(5)図 成長企業所在地の市部の割合
第1-2-2(5)図 成長企業所在地の市部の割合
(備考) 1. (株)帝国データバンクの企業概要ファイルを用いて、内閣府にて作成。
  2. 所在地は各企業本社所在地。

さらに、政令指定都市とそれ以外の都市、郡町村部に分けるとどうなるのか。政令指定都市のシェアが高いのは映画・ビデオ製作業、広告・情報サービス業、他の事業サービス業、専門サービス業である。一方、洗濯・理容・浴場業、他の個人サービス業、娯楽業、社会保険・福祉業は、都市部へ集積しているものの、政令指定都市以外の都市にも万遍なく存在している。これらの業種は成長はしているものの、政令指定都市ほどの人口が必要なわけではなく、むしろ生活に密着したサービスであると言える(第1-2-2(6)図)。

第1-2-2(6)図 サービス業分野別 成長企業所在地の政令指定都市の割合
第1-2-2(6)図 サービス業分野別成長企業所在地の政令指定都市の割合
(備考) 1. (株)帝国データバンクの企業概要ファイルを用いて、内閣府にて作成。
  2. 所在地は各企業本社所在地。
  3. なお、2004年の成長企業数が50未満の家事サービス、自動車整備駐車場、協同組合、宗教、教育、学術研究機関、政・経・文化団体、その他のサービスは除く。

これまで見てきたように、サービス業と人口は関係が深いことが分かった。しかし、人口減少が進む中で、人口増加によってサービス業を活性化させるという手法は考えにくい。また、人口をひとところに集めるような手法も取りづらい。住み慣れた土地を離れて、人口の集積する都市部へ移住することが人間の幸せにつながるとは必ずしも言えないからである。

これらをかんがみると、一人が生み出す価値の高い産業、つまり高付加価値・知識集約型産業への移行という方向性が見えてくる。以下では、商品に地域名という付加価値を付けた「地域ブランド」の可能性と、成長が期待されながら現状では東京に一極集中しているコンテンツ産業が地方で展開するための条件を検討する。


11.
05年2月現在、帝国データバンクの「企業概要ファイル」に収録された企業の中から、次の条件に該当する企業を抽出した。[1]各企業の決算において、最新期と前期の2期(2年)連続して売上高が10%以上伸びていること、[2]法人であること、[3]最新決算期において、売上高が5億円以上であること、[4]従業員が1名以上であること。

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