第1章 第2節 1.産業基盤投資・工場誘致による地域経済の活性化
1.産業基盤投資・工場誘致による地域経済の活性化
産業基盤投資や工場の地方への誘致は、地域活性化のための伝統的手段として用いられてきた。
産業基盤投資は、国県道、港湾、空港、工業用水というような、製造業の活動に直接関係する投資から構成されるものである。それらを建設する際の直接的な効果に加え、交通基盤・物流基盤が整備されれば、工場や商業施設が進出したり、観光客を呼び込んだり、という二次的な効果も期待できるからである。
また、工場誘致も、社会資本整備と並んで伝統的な地域活性化策として挙げられる。
工場を自地域内に建設することで、直接的な雇用を発生させることができるほか、税収が増加するという効果も期待できる。また、自地域内への人口流入が進めば、消費が活性化し、ひいては、サービス業が成長する効果を発生する可能性もある。政府も、4次にわたる全国総合開発計画の中で、新産業都市建設促進法・工業整備特別地域促進法や高度技術工業集積地域開発促進法などを制定し、地方における工業の発展を後押しする政策をとってきた。
しかし、経済のサービス化が進展する中で、これらの政策は未だに有効な手法と言えるのだろうか。以下で検証することとする。
(1) 産業基盤投資と地域経済
1) 減少傾向にある産業基盤投資
産業基盤投資の推移をみると、80年代半ばから90年代後半にかけてほぼ一貫して増加していたものの、98年度をピークとして近年減少傾向にある(第1-2-1(1)図)。経費負担率の構成からみると、国・地方公共団体ともにマイナスに寄与している(第1-2-1(2)図)。
第1-2-1(1)図近年減少する産業基盤投資 |
(備考)総務省「平成14年度行政投資実績」により作成。 |
第1-2-1(2)図 国、地方ともに減少に寄与 -経費負担からみた寄与- |
(備考)総務省「平成14年度行政投資実績」により作成。 |
2) 産業基盤投資の効果
産業基盤投資の効果をみるために、90年代以降に全線開通した高速道路について、事例を挙げながら検証する。
開通年の工場立地件数を100として、その前後3年の推移をみると、傾向は定かではない。
個別にみると、関越自動車道上越線では開通年の翌年に工場立地件数が増加した一方、東北縦貫自動車道弘前線は、特段の変化がみられない。中央自動車道長野線や近畿自動車道伊勢線、東北横断自動車道いわき新潟線に至っては、開通年以降も件数の減少が続いている(第1-2-1(3)図)。
第1-2-1(3)図 90年代以降全線開通した高速道路通行県の工場立地(開通年=100) | ||||
○中国横断自動車道 広島浜田線(91年) | ○中央自動車道 長野線(92年) | ○近畿自動車道 伊勢線(92年) | ||
○東北縦貫自動車道 弘前線(93年) | ○九州縦貫自動車道 鹿児島線(95年) | ○東北横断自動車道 いわき新潟線(97年) | ||
○北陸自動車道(97年) | ○関越自動車道 上越線(99年) | |||
(備考)経済産業省「工場立地動向調査」および日本道路公団へのヒアリングにより作成。( )内は開通した年。 |
ただし、工場立地はその当時の景気要因も大きいと考えられるため、工場立地件数の全国におけるシェアの推移も見ることにしよう。
開通年以降に全国シェアの上昇が明確なのは、中国横断自動車道広島浜田線における広島県、東北縦貫自動車道弘前線における福島県、九州縦貫自動車道鹿児島線における福岡県と熊本県の4県であるが、その他の県では全国シェアに際立った変化はみられない(第1-2-1(4)図)。
高速道路についてみると、その効果が出るかどうかは、地域の中においても様々と言える。つまり、道路の開通に伴って全地域に均等に効果が現れるわけではないということである。
第1-2-1(4)図 工場立地件数の全国に対するシェア | ||||
○中国横断自動車道 広島浜田線(91年) | ○中央自動車道 長野線(92年) | ○近畿自動車道 伊勢線(92年) | ||
○東北縦貫自動車道 弘前線(93年) | ○九州縦貫自動車道 鹿児島線(95年) | ○東北横断自動車道 いわき新潟線(97年) | ||
○北陸自動車道(97年) | ○関越自動車道 上越線(99年) | |||
(備考)経済産業省「工場立地動向調査」および日本道路公団へのヒアリングにより作成。( )内は開通した年。 |
道路に限定することなく、産業基盤投資全体に注目した場合、何らかの傾向はみえるのだろうか。都道府県別の一人当たり産業基盤投資と一人当たり工場立地件数の相関を取ってみると、80年代には緩やかながら相関関係がみられたが、2000年代に入ってほとんど相関がみられなくなってきている(第1-2-1(5)図)。
第1-2-1(5)図 産業基盤投資と工場立地件数 |
(1)80年代 |
(2)90年代 |
(3)2000年代 |
(備考)総務省「行政投資実績」「人口統計」、経済産業省「工場立地動向調査」により作成。 |
詳細は01年の内閣府「地域経済レポート」に詳しいが、産業基盤投資の効果は、近年になるにつれて、低下してきていると言える。一方で、工場立地のためには、より直接的な手法も取られるようになってきており、次項では設備投資補助金の設置・増額の効果を取り上げる。
3) 90年代以降に開港・開通した空港・鉄道の利用実績
90年代以降、現在までに開港した空港の利用実績を見てみよう7。
空港の乗降客数は、90年代以前に開港した空港が前年を上回るかほぼ横ばいで推移する一方で、90年代以降に開港した空港は、当初に比べ、近年、利用実績が前年を下回るケースが増加している(第1-2-1(6)図)。例えば、佐賀空港では年間の需要予測を東京便・大阪便を合わせて65.4万人と見積もっていたが、実際には予測を上回った年は、開港以来1度もないというような状態である。
こうした状況下で、県が空港の利用促進に向けて、助成金の交付や利用促進のためのキャンペーンを自前で行っているケースも少なくない。例えば、17年度当初予算ベースでみると、石川県では、能登空港の利用促進のために、各種キャンペーンを展開予算として、1.2億円を計上している(17年度当初予算)。福島県でも、福島空港の利用拡大のために、同空港を利用する修学旅行に対しバス代の一部を助成するために、3,500万円強の予算が計上されている。佐賀県も航空会社のマイレージ制度に対して、ボーナスマイルを付与するといった誘客キャンペーンを行うこととしており、3,000万円強の予算が計上されている。
第1-2-1(6)図 90年代以降に開港した空港の乗降客数 | |||||||||||||
○第一種空港 | ○第三種空港 | ||||||||||||
関西空港(94年) | 大館能代空港(98年) | 庄内空港(91年) | |||||||||||
福島空港(93年) | 石見空港(93年) | 佐賀空港(98年) | |||||||||||
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また、04年2月に開業したみなとみらい線(横浜駅と元町・中華街駅を結ぶ路線、東京から私鉄が乗り入れして直通運転となっている)をみると、需要予測は1日当たり13.7万人の利用者を見込んだところ、12.1万人となり(04年度実績)、予測をやや下回っている。ただし、横浜市の04年度の入込観光客数をみると、前年度比12.2%増となっており(神奈川県全体では同4.5%増)、市では、みなとみらい線の開業効果と指摘している。路線周辺の商業施設等の開業も相次いでいる。神奈川県の小売の新規求人数は、04年度は前年度比で8.5%増となっており、雇用面でもその効果が現れていると言える。
4) 今後も計画されている社会資本整備
以上見てきたように、産業基盤投資の効果は以前よりも薄くなってきているが、今後も計画されているものがある8。社会資本整備は計画から着工、完成に至るまで何十年も要するケースが少なくない。よって、その間に経済・社会状況が変化しても、それを修正するのが難しいという問題点がある。
こうした中で、費用対比で最大限の効果を上げるためには、事前の需要予測を慎重に行うとともに、建設に当たってはそのコストを削減することが必要でる。実際、05年2月に開港した中部国際空港は、徹底したコスト見直しを行い、当初計画(97年)から費用を約16%節約したという実績がある9。安全性を担保しつつ、可能な限りコスト削減を進めていくことも重要であろう。
(2) 工場誘致と補助金の設立
1) 誘致による地域経済の活性化
地域活性化策として、社会資本整備と並んで伝統的な政策として挙げられるのが工場誘致である。
しかし、80年代中ごろから地域経済の空洞化が問題となり、誘致した工場は次々にアジアなどに移転していった。これは貿易摩擦の問題もあるが、円高の進行する中で、人件費の安いアジアのほうが、利点があったともみられる。
一方で、ここ1、2年、工場の国内回帰も目立つようになっている。技術やノウハウ、ひいては暗黙知などを、外国にいたずらに流出させるよりも、付加価値の高い製品は国内で生産するという姿勢が見られるためである。汎用品はコストの安い国でという傾向には変わりがなく、地方経済を取り巻く厳しい状況に変化はないが、やり方次第では、付加価値の高い製品の生産を担えるという好機でもある。
2) 積み増しの続く設備投資補助金
05年夏現在、43の道府県が工場立地や設備投資に係る費用の一部を補助する制度を設けている。
補助割合や限度額は各道府県ともに様々であり、金額では最低2億円から最高90億円まで開きがある。その中身をみると、例えば、神奈川県では、新製造業技術・バイオテクノジー・情報通信などの高度先端産業や県の産業政策・ビジョンに合致するものを対象に、最大80億円の補助金を設けている。三重県では、産業集積促進補助金として、情報通信関連の業種に属する工場、事業所の新設にかかる土地、建物、機械設備、福利厚生施設の取得費に限って最大90億円の補助金を設けている。兵庫県では設備投資額に係る費用の3%を補助する制度を設けている(支給最高額の上限はなし)。
設備投資補助金の創設・改正年度とその額をプロットしてみると、最近になるほど創設が進み、金額も大きくなっていることが分かる(第1-2-1(7)図)。
第1-2-1(7)図 補助金額と補助金創設・改正年度の相関 | ||||||||||||
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一方で、補助金額の多寡は道府県の財政の余裕度と関係しているのだろうか。つまり、財政に余裕のあるところは補助金額が多くなるというような関係はみられるのだろうか。
財政の余裕度をあらわす経常収支比率と補助金額をプロットしてみると、明確な相関関係はみられない(第1-2-1(8)図)。財政の余裕度とは関係なく、必要なところにはメリハリをつけて使うという道府県の政策に対する柔軟な考え方が見て取れる。
第1-2-1(8)図 補助金額と経常収支比率の相関 | ||||||
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3) 地域間・地域内の競争
一方、地域別にみると何らかの傾向があるのだろうか。
地域別にみても、最近補助金が創設されたところほど、金額が大きいという傾向は見て取れる。しかし、地域内で補助金額が収れんするというところまでは至っていない。その中で、近畿では05年に4県で創設ないし改正が行われており、20億円から30億円と補助金額も似た傾向となっている(第1-2-1(9)表)。
企業側から見れば、補助金額の多寡は、工場立地を決定するための条件の一つであると言える。それ以外にも、地域の産業構成や物流、雇用人員の確保など、考慮すべき条件は様々であろう。全国津々浦々をくまなく鳥瞰し、自企業にとって最適立地を選択するのである。よって、隣県が補助金額の積み増し、または補助金制度を設置したから、自県も同レベルのものにするという行動は必ずしも最適とは言えないだろう。工場立地を勝ち取るのは地域内というよりも、自県対日本全国の競争なのである。
第1-2-1(9)表 各道府県の企業誘致に関する補助金制度 | |||||||||||||||
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4) 制度の効果:a 工場立地件数
補助金の設置によって、実際に工場の立地は進んでいるのだろうか。
04年度現在で、補助金額30億円以上の県と5億円未満の県の工場立地件数の推移をみてみよう(第1-2-1(10)表)。
第1-2-1(10)表 補助金額30億円以上および5億円未満の県の工場立地件数
○ 30億円以上の県 | ○ 5億円未満の県 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(単位:件) | (単位:件) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(備考) | 1. | 各県ホームページ、各県へのヒアリング、経済産業省「工場立地動向調査」により作成。 |
2. | 創設年度が2004年度以前の補助金のうち最大補助金額(工場等の新設に際し一制度につき交付される最大額)が30億円以上若しくは5億円未満の県を対象とした。 | |
3. | 網掛けは制度創設年度。 |
三重、神奈川、兵庫では補助金制度の設立された年に大幅に増加している一方で、富山はほぼ横ばいとなっている。
三重では薄型テレビ用の液晶パネル工場が稼動し始めた。これに伴って、その部品メーカーの立地も進んでおり、液晶関連の一大集積産地となっている。兵庫でも世界最大級のプラズマディスプレイパネルの製造拠点となる工場が建設された。誘致が成功するかは、核となる企業を中心に、いかに裾野を広げられるかにかかっていると言えるだろう。
一方、下位5県をみると、栃木県は02年度の創設以降、年々増加しているが、山形県ではほぼ横ばいとなっている。04年度に制度の創設された埼玉は増加、岩手はほぼ横ばいとなっている。
ただし、補助金額が大きいからと言って、工場立地件数が多くなるという明確な関係は確認できない。補助金90億円の三重県と2億円の栃木県を比べると、04年の工場立地件数はほぼ同数となっている。
また、工場立地件数の全国におけるシェアをみても同様の傾向がみえる(第1-2-1(11)図)。中でも三重県は04年にシェアを大きく拡大させている。
第1-2-1(11)図 補助金額30億以上及び5億未満の県の工場立地件数の全国シェア | ||||||||
○30億円以上の県 | ○5億円未満の県 | |||||||
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5) 制度の効果:b 雇用への波及
雇用への波及効果をみてみよう。例えば、製造業の新規求人が増加するというような傾向はみられるのだろうか。
新規求人数を産業別にみると、補助金額30億円以上の県では、製造業は、おおむね02年度以降にプラスに寄与している(第1-2-1(12)図)。しかし、補助金設立年以降をみると、むしろ寄与度は小さくなる傾向がみられる。期間中を通して、大きく寄与しているのは非製造業である。補助金額5億円未満の県をみても、補助金設立年度とはあまり関係がなく、製造業はわずかながらプラスに寄与している程度である(第1-2-1(13)図)。ここでもやはり非製造業の寄与度が圧倒的に大きくなっている。このように、雇用面をみると、補助金の効果が明確に現れているとは言い切れない。
第1-2-1(12)図 補助金額30億以上の県の新規求人数 | ||||||||||||||
三重県 | 神奈川県 | |||||||||||||
兵庫県 | 富山県 | |||||||||||||
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第1-2-1(13)図 補助金額5億未満の県の新規求人数 | ||||||||||||||
栃木県 | 山形県 | |||||||||||||
埼玉県 | 岩手県 | |||||||||||||
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6) 誘致には撤退リスクがつきまとう
誘致制度の問題点として考えられるのは、工場は撤退もしくは閉鎖するリスクがあることである。設備投資補助金を設置している道府県43県のうち、25道府県では工場が撤退した場合の補助金の返還制度を設けている。その多くは、期間を区切って、その期間内に撤退や財産を売却した場合には返還を求めることができる旨の規定である。しかし、18県では制度を設けていない(詳細は付表1-1を参照)。
付表1-1 工場撤退時等の企業誘致に関する補助金の取扱い(上限額最大の補助金の場合)1 制度等があるもの(1道2府22県) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2 制度がないもの(18県) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
秋田県、栃木県、埼玉県、福井県、長野県、滋賀県、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、香川県、福岡県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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実際、ある市では市の生産出荷額の15%弱を占めた自動車関連企業が撤退し、移転したことによって、地元の経済や雇用に大きな影響を与えたことがあった。
倒産リスクも否定できない。例えば、ある県では情報サービス関連の企業に5,000万円余の補助金を支給したが、当該企業が事実上倒産したため、効果は一時的なもので終わってしまった。
補助金の交付に当たっては、その企業が少なくとも補助金支給額を超えるだけの経済効果をもたらすかどうかをしっかりと審査する仕組みが必要と言えよう。
補助金の最大交付額が30億円以上の府県について、交付に当たっての審査の状況を調査すると、約4分の1の府県が外部有識者による審査制度を設けている(詳細は付表1-2を参照)。その中身をみると、立地計画の認定をする際に、外部有識者からなる審査会を設けているというケースが目立つ。最終的に責任を取るのは県、県知事であっても、少なくない額の財政負担になることから、交付に当たっては様々な角度からその有用性を審査することが必要であろう。
付表1-2 企業誘致等に関する補助金交付等の審査状況(補助金額30億円以上の府県)
府県名 | 外部有識者等の審査の有無 | 審査状況等 |
千葉県 | 無 |
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神奈川県 | 有 |
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新潟県 | 無 |
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富山県 | 無 |
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岐阜県 | 無 |
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三重県 | 無 |
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滋賀県 | 有 |
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大阪府 | 有 |
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兵庫県 | 無 |
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岡山県 | 無 |
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佐賀県 | 無 |
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(備考) | 1. | 最大補助金額(工場等の新設に際し一制度につき交付される最大の金額)が30億円以上の府県へのヒアリングにより作成。 |
2. | 当該最大金額の補助金の審査を対象とした。 |
(3) 地方に立地の進むコールセンター
今までは主に製造業、特に工場立地とそれに関する補助金などの関係を見てきた。もう1つ新しい動きとして注目されるのは、地方公共団体が地元雇用を促進するために、コールセンターの立地に対して、補助金を交付する事例がみられることである。
コールセンターを含んだ概念である「テレマーティング業10」をみると、03年度には事業所数の約5割は東京と大阪で占められていた。ここ1、2年は地方において立地が進んでいる。今年度に入ってからは、保険や旅行代理店が北海道に、外資系コンピューターメーカーの日本法人が宮崎県に、通信会社が島根県に進出、ないし進出を表明した事例などがみられる(第1-2-1(14)表)。
第1-2-1(14)表 今年度に入ってから進出ないし進出が表明されたコールセンター
場所 | 業種 | 内容 |
北海道 | 情報通信 | 9月までの100人。 |
旅行代理店 | 105人(開業に当たり、75人新規採用)。 | |
保険 | 250人新規採用。 | |
コールセンター業 | 300人、秋に向けて600人に増員予定。 | |
保険 | 9月に業務開始、20人。 | |
物流 | 繁忙期に400人雇用 | |
青森県 | 人材派遣 | 6月に業務開始。1、2年後には約100人に増員予定。 |
神奈川県 | 住宅販売 | 06年1月から業務開始予定、30名弱。 |
富山県 | 保険 | 7月業務開始、30人。05年3月末までに150人に増員予定。 |
通信販売 | 10月下旬業務開始。15人(半年後には150人に増員)。 | |
石川県 | 4月業務開始。450人。 | |
福井県 | 保険流通 | 7月業務開始。60人、9月に100人体制、2年後に200人体制。 |
岐阜県 | 保険 | 5月業務開始、50人。5年後に300人まで増員計画。 |
保険 | 10月業務開始。450人の新規採用を予定。 | |
電力 | 8月業務開始。100人の新規採用を予定。 | |
兵庫県 | 保険 | 11月業務開始、40人~。06年末には300人に増員予定。 |
島根県 | 情報通信 | 10月業務開始、開始から3年間に170人を地元で採用。 |
愛媛県 | 保険 | 6月業務開始、50人。 |
高知県 | 保険 | 6月から30人、06年末には100人に増員予定。 |
福岡県 | 情報通信 | 9月業務開始、100人。 |
佐賀県 | 保険 | 06年上半期開設予定、300人。07年度中に約700人まで増員予定。 |
宮崎県 | 外資系企業日本法人 | 11月業務開始。100人、2010年に正社員で1000人規模に増員。 |
沖縄県 | アウトソーシング | 06年8月業務開始、3000人。 |
(備考)新聞情報、各社公表資料、ヒアリング資料などにより内閣府作成。 |
これは、地方のほうがオフィス賃料や人件費が安いこともあるが、コールセンターに対する誘致制度が誘因になっているとも考えられる。例えば、北海道では、道と札幌市がともに助成制度を設けている。道では投資額の10%(限度額1億円)を補助した上に、常用雇用1人当たり50万円の雇用補助を設けている(限度額2億円)。札幌市では新設常用雇用者1人当たり30万円の雇用補助を設けているほか、賃貸料補助(月・坪1万円を上限)、通信費補助(月額100万円を上限)等の支援制度を設けている。
コールセンターの立地は雇用者数を増加させ、地方の雇用情勢を改善させる一助となることは確かである。ただし、雇用形態別にみると、パート・アルバイトが約8割を占めており(前出の経済産業省「平成15年度特定サービス実態調査」)、求職者が正社員を希望している場合、ミスマッチが生じることに注意する必要がある。
(4) 従来型手法-社会資本整備と工場誘致-は、なおも有効か
社会資本整備や工場誘致の手法は、都道府県によってはある程度の効果はみられるが、それに伴うコストもかなりの額にのぼる。少子高齢化が進行するなかで、地方公共団体の財政制約が厳しくなるのは前章で見たとおりである。
工場誘致は、野球で言えば、外国人選手を4番に据えるようなものである。上手く地域に根付けば、またとない力になるが、撤退してしまえば元も子もない。自地域に根ざした産業がリーディング産業になることが重要である。
新幹線や航空路線を整備しても、実際に乗る人がいなければ意味がない。交流人口が増えることは自地域の活性化につながるが、交流人口を増やすためには自地域に魅力がなくてはならない。この場合の魅力とは、他地域と比較して、差別的な「何か」、一言で言うと「地域力」があるかということである。交通路線などの整備は「地域力」が付け加わったときに、はじめて効果を発揮すると言えるかもしれない。「地域力」の底上げを図る必要がある。
次節以降は製造業以外の活性化策について、特にサービス業の活性化策や具体的な地域の力について取り上げることとする。
7. | 大館能代空港(98年)、庄内空港(91年)、福島空港(93年)、石見空港(93年)、佐賀空港(98年)、神津島空港(92年)、能登空港(03年)。第1種空港は関西国際空港が94年に、中部国際空港が05年に、第2種空港では広島空港が94年に現在の場所に移転して開港している。能登空港と中部国際空港は開港後間もないためデータが十分でないため、取り上げない。神津島空港は規模が非常に小さいため取り上げない。 |
8. | 例えば、06年開港予定の静岡空港や神戸空港、2015年度末完成予定の北海道新幹線(新青森-新函館間)、2010年度末完成予定の東北新幹線(八戸-新青森間)や九州新幹線(博多-新八代間)など。 |
9. | 中部国際空港会社へのヒアリングによると、当初の費用見込みは7,680億円、開港までにかかった事業費+開港後の事業費=6,450億円で、差し引き1,230億円と約16%の節約。 |
10. | 経済産業省「平成15年度特定サービス実態調査」のテレマーケティング業によると、全国の事業者数が402に対し、東京は137、大阪は49。 |