第1章 第1節 1.人口減少と少子高齢化の現状

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1.人口減少と少子高齢化の現状

05年は日本で戦後初めて、人口が減少した年として記憶されそうである。このレポートでは地域の実情をよりきめ細やかに分析するために、従来からの大くくりの地域単位の分析をさらに掘り下げて、都道府県、あるいは「都市」にも焦点を当てて分析を進める。

(1) 都道府県別ではすでに人口減少

直近までの国勢調査で都道府県における人口動向をみると(第1-1-1(1)図)、80年から90年にかけて、全国では5.6%増加しているものの、8県(青森県、岩手県、秋田県、和歌山県、島根県、山口県、高知県、長崎県)ではすでに減少している。

90年から2000年では全国では2.7%増加しているものの、16県が減少している。このうち、山形県、鳥取県、徳島県、香川県、愛媛県、佐賀県、大分県、鹿児島県が減少に転じている。

第1-1-1(1)図 都道府県別人口増加率

第1-1-1(1)図 都道府県別人口増加率

(備考)総務省「国勢調査」により作成。

(2) 都市部でもみられる人口減少

さらに細かく、都市における人口動向をみよう。例えば、三大都市圏の都市のほうが地方圏のそれよりも増加しているといった傾向はみられるのだろうか。

都市部において、同様の2期間における人口増減をみる。

当該都道府県における市の数の全数を100として、うち人口が増加した市の割合を取ると、この2期間で、29都府県では人口が増加した市の割合が小さくなっている(第1-1-1(2)図)。

なお、滋賀では一貫して全市で人口増加が続いており、北海道、青森、三重、大分は90年代のほうが人口増加都市の数が多くなっている。

第1-1-1(2)図 人口が増加した都市の割合

第1-1-1(2)図 人口が増加した都市の割合

(備考) 1. 総務省「国勢調査」により作成。
2. 2000年時点で市になっている地域について作成。なお、80年及び90年の人口は、2000年時点で市となっている町村の人口を含む。

(3) 人口増加都市の特徴

次に90年から2000年の10年間における、特徴的な人口増加都市をみよう。増加幅の大きいものから順に10位まで並べてみると(同一県は除く)、南関東2市、近畿2市、その他北陸、四国、沖縄を除く各地域1市ずつとなっている(第1-1-1(3)図)。これらの都市は、巨大都市(メトロポリタン)の周辺に位置しているという地理的要因に特徴がある。すなわち、巨大都市の周辺都市、いわゆるベッドタウンとしての開発が進んだことにより、大都市からの人口流入が進んだ、あるいは大都市を目指して町村部からの人口流入が進んだ結果と言える。八街市、日新市、京田辺市では、90年代に市政が施行されたことからも、いかに人口増加が進んだかが分かるだろう。

第1-1-1(3)図 人口増加の目立った都市とその要因(90年→2000年)
第1-1-1(3)図 人口増加の目立った都市とその要因(90年→ 2000年)
(備考)総務省「国勢調査」により作成。人口増加率上位10市(ただし、同一都道府県の市については上位のみ)を記載。

(4) 人口減少都市の特徴

一方で、人口減少都市の特徴をみよう。同様に、減少幅の大きいものから順に並べてみると、四国と九州が2市ずつ入っているのに対して、東北、南関東、沖縄はゼロである(第1-1-1(4)図)。

第1-1-1(4)図 人口減少の目立った都市とその要因 (90年→ 2000年)
第1-1-1(4)図 人口減少の目立った都市とその要因(90年→ 2000年)
(備考)総務省「国勢調査」により作成。人口減少率上位10市(ただし、同一都道府県の市については上位のみ)を記載。

減少した要因を調べてみると、おおむね基幹産業の不振が響いている。内訳をみると、農業、漁業、林業、鉱業が不振というところが多い。第1次産業の衰退が反映された結果と言える。

(5) 産業別の就業者数:人口増加都市と人口減少都市

産業別の就業者数の増減をみると(第1-1-1(5)図)、人口増加都市ではおおむね全産業で増加している。とりわけ、サービス業と卸・小売業、飲食店の寄与が大きく、これら2業種が人口に比例して伸びることが示唆されている。

第1-1-1(5)図 都市別・産業別の就業者数 (90年→ 2000年)
人口増加市の就業構造 第1-1-1(5)図 都市別・産業別の就業者数(90年→ 2000年)~人口増加
  人口減少市の就業構造 第1-1-1(5)図 都市別・産業別の就業者数(90年→ 2000年)~人口減少
(備考) 1. 総務省「国勢調査」により作成。
2. 人口増減率上位10市(ただし同一都道府県の市については上位のみ)について作成。

人口減少都市では、多くの都市で農業がマイナスに寄与している。製造業も大きく減少しているほか、卸・小売業、飲食店も減少している。なお、これらの都市においても、サービス業はおおむね増加に寄与している。

(6) 地域別にみた将来推計

将来の人口はどのように変化していくのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によると、北関東、東海、近畿、九州では05年をピークに減少局面に入る。北海道、東北、北陸、中国、四国ではすでに減少局面に入っている。南関東ですら、2015年をピークに減少局面入りする(第1-1-1(6)図)。

第1-1-1(6)図 地域別の人口
第1-1-1(6)図 地域別の人口
(備考) 1. 2000年までは総務省「人口推計」、2005年以降は国立社会保障・人口問題研究所「都道府県の将来推計人口」により作成。
2. 将来推計人口は中位推計。
3. 地域区分はA。ただし、九州に沖縄を含む。

一方で人口構造はどうなるのだろうか。2000年と2010年を比較すると、若年人口比率は全地域で低下、高齢化率は全地域で上昇する(第1-1-1(7)図)。とりわけ、高齢化率が2000年まで全国平均を下回っていた三大都市圏(南関東、東海、近畿)では、この10年にかけて高齢化率が全国平均を上回って上昇することになる。また、若年人口比率、高齢化率ともに、地域間のばらつきが小さくなり、収れんしていく方向が見える。

第1-1-1(7)図 年齢別将来人口推計
第1-1-1(7)図 年齢別将来人口推計
(備考) 1. 2000年までは総務省「人口推計」、2005年以降は国立社会保障・人口問題研究所「都道府県の将来推計人口」により作成。
2. 将来推計人口は中位推計。
3. 地域区分はA。ただし、九州に沖縄を含む。

1. 本来、全国の市町村全てについても分析すべきであるが、データの入手が比較的容易な「都市」に限る。
2. 市政の施行は人口が原則として「5万人以上」が要件。

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