第2部 第2章 第2節 地方公務員の給与に関する一考察
第2節 地方公務員の給与に関する一考察
地方公務員の給与(30)は、前節のアンケート調査でみたとおり、削減のための取組が進められているが、地方の民間企業の給与と比較するとどうなっているのだろうか(31)。本項では、都道府県における官と民の給与の比較を試みる。
内閣府のアンケート調査(以下、「内閣府アンケート」)では、給与削減の取組状況の評価とともに残業代等諸手当込みの平均給与も合わせて尋ねているため、これを活用する(32)。回答のなかった自治体や無効回答を除くと、サンプル数は31である。
他には、総務省取りまとめの「ラスパイレス指数」、民間給与は賃金構造基本統計調査(33)(以下、賃金センサス)の都道府県別サービス業の従業員数1,000人以上(34)のデータを取る(35)(36)。何人以上の規模の民間企業と比較するかは意見の分かれるところであるが、本レポートでは、自治体と同規模とは言えないものではあるが、同規模の企業の統計が存在しないため、1,000人以上の企業と比較する。また、公務員は「公務サービス」というサービスを提供していると考えられ、公務と同業種とは言えないまでも、サービス業と比較する。
まず、直近の2003年度を比較する。団体数を5万円単位で並べた度数分布表をみると、公務員給与は全団体が月額35~40万円以上になっているのに対して、民間給与は25~30万円が5団体、30~35万円が5団体あり、低い方の金額にも分布していることが分かる。また、民間給与で45~50万円の団体数はゼロであった(第2-2-9図)。
実額をみると、公務員給与は最高額が47.2万円、最小額が35.6万円(最大-最小11.6万円)であるのに対して、民間給与は最高額が42.9万円、最小額が25.8万円(最大-最小17.1万円)となっている。最高額同士を比較すると、最高額は4.3万円、最低額は9.8万円の差があり、いずれも公務員給与の方が高くなっている。
では、民間給与の高いところで公務員給与も高くなるという傾向はみられるのだろうか。両者の相関をみたのが第2-2-10図である。これによると、両者の相関関係はあまりみられず、民間給与が公務員給与を説明する力は高くないということが言える。公務員給与の決定には他の要因も作用している可能性がある。
次に公務員給与の都道府県間のばらつきと民間給与のそれはどうなっているのだろうか。比較を簡単にするために、内閣府アンケート及び賃金構造基本統計調査の平均を100として指数化したデータを用いる。
3つの指標で最大値と最小値の比率(最大値/最小値)を取ると、ラスパイレス指数は1.08であるのに対し、内閣府アンケートは1.33、賃金センサスは1.66となっている。ラスパイレス指数では都道府県間の格差が最小になっており、賃金センサス、つまり民間給与の格差は最大となっている。また、諸手当込みでみると、民間給与ほどではないが、公務員給与の都道府県間の格差は拡大する(第2-2-11表)。
標準偏差をみると、ラスパイレス指数は1.82であるのに対し、内閣府アンケートは8.19、賃金センサスは12.78と、やはり毎勤で見た場合のばらつきが最大となっている。つまり、地方公務員の給与は地方の民間企業の給与に比較して、都道府県間のばらつきが小さいと言える。
次に、2000年度のデータを同様に作成し、2時点間の比較を行う。
2000年度と2003年度のデータをみると、公務員給与の都道府県間のばらつきは、ラスパイレス指数で見ても内閣府アンケートでみても、最大値/最小値と標準偏差は共に上昇している。一方で、民間給与をみると、最大値/最小値はやや低下しているものの、標準偏差は上昇している(第2-2-12図)。これは、民間給与が総じて抑制される中で、公務員給与も抑制の取組が行われているものの、給与抑制の度合いが都道府県によって異なるため、公務員給与の都道府県間のばらつきが拡大したためと言える。