第2部 第1章 第6節 <コラム> 足利銀行破たんと栃木県の経済情勢

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<コラム> 足利銀行破たんと栃木県の経済情勢

2003年11月の足利銀行破たんは、栃木県経済にどのような影響を与えたのか。

鉱工業生産をみると、2003年11月以降も一貫して関東を上回っており(図1)、2004年4-6月期には1.7%の増加となった。

設備投資は、製造業、非製造業ともに2003年度から2年連続で増加している。2004年度計画では輸送用機械を中心に製造業で前年比22.5%、非製造業で同4.9%となっている。

有効求人倍率をみると、2003年11月以降、一貫して1倍を上回っており、北関東や全国を大きく上回って推移している(図2)。 破たんにともない、企業倒産の多発が懸念された。負債総額は、2004年1-3月期以降大きく増加したが、2、4、9月の大型倒産(ゴルフ場2件、自動車販売1件)があったためと考えられる。一方で倒産件数は、2003年10-12月期以降、前年を下回って推移しており、これまでのところ倒産が相次ぐという状況にはないとみられる(表3)。

一方、観光をみると、2003年の県内への観光客入込数は調査開始の89年以降で過去最高となったものの、宿泊数は、前年比約17万人減(同2.2%減)となり、減少傾向にある。主要宿泊地をみると、いずれも苦戦している(図4)。

総じてみると、当初、破たんのショックは特に心理面に大きく影響したと考えられるが、現時点で必ずしも県内経済への大きな影響はみられないと言える。これは、自治体や金融機関等が破たんに即応して特別相談窓口や緊急の融資枠を創設し、それが有効に機能したためと考えられる。また、産業再生機構が鬼怒川、日光などの宿泊施設を支援するため、ファンドを設立することを発表するなど、温泉地の再生への取組もみられる。今後は不良債権処理が一層進むと考えられるため、県内の経済動向をますます注視する必要がある。

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