第2部 第1章 第2節 企業部門の回復が進む 1.
1.地域によってばらつきの大きい生産の回復
地域別の鉱工業生産をみると、2003年の後半に入って、多くの地域でそれまでのおおむね横ばいの状態から緩やかな増加に転じた。
地域ごとにみると(第2-1-2(1)図)、2003年は全地域(6)で前年比増加となった。全国(前年比3.3%増)を上回って増加したのは、東海(同6.0%増)、北陸(同3.6%増)、九州(同5.2%増)の3地域であった。一方、北海道は、2002年は前年比0.1%増、2003年は同0.2%増と年を通してみるとほぼ横ばいであった。
四半期別にみると、九州は2003年1-3月期以降、東海は2003年4-6月期以降、関東、北陸、中国は2003年7-9月期以降、前期比で増加し続けている。一方、北海道や四国は一進一退の状況にあり、2004年晩夏現在ではおおむね横ばいとなっている。
業種ごとにみると、輸送用機械は、東海や中国、九州で、自動車の生産が国内販売・輸出向けともに堅調であり、完成車や部品産業の生産が底固く推移している。また、電子部品・デバイス工業は、北陸や中国でデジタル家電や携帯電話向けの半導体や集積回路の生産も増加している。これに関連して、業種としては一般機械に分類されるが、関東や近畿ではデジタル家電向けの半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置などが増加に寄与している。
今回の回復局面をバブル崩壊後の過去2回の景気回復局面と比較すると何が言えるのだろうか(第2-1-2(2)図)。
前々回の景気回復局面は93年10月から97年5月までであったが、現在の回復局面と同期間(2年8か月)で比較する。景気の谷を100として、各地域の生産の推移を並べてみると、東北の110.4から近畿の102.5まで、その差は10ポイント程度であった。
前回の景気回復局面は99年1月から2000年10月までであった。同様の図を描いてみると、中部の111.4から近畿の102.4まで、その差はやはり10ポイント程度であった。
今回の景気回復局面は2002年1月から始まっているが、2004年8月時点では、最高値は九州の122.8、最低値が北海道の103.6となっており、その差は20ポイント程度になっている。グラフを見ても、過去2回の回復局面ではあまり地域差はみられないが、今回の回復局面では大きくばらつきのあるところが見てとれる。
この回復における差異は地域の産業構成・産業立地に依存していると言える。生産動向をみると(第2-1-2(3)図)、今回の回復局面で大きく増加しているのは、電子部品・デバイスと輸送用機械である。これら2つの産業の占める割合の多い地域は、より生産の伸びが高くなっている。