第2部 第1章 第1節 <コラム> 北海道の回復はなぜ遅いのか
<コラム> 北海道の回復はなぜ遅いのか
北海道は、他地域に比べて回復が遅れている。これは、第一に、他地域に比べて公共投資依存度が高いこと、第二に、今回の回復の柱となっている製造業のウェイトが小さいこと、第三に、観光も振るわずにいることが挙げられる。
まず、公共投資について見ると、依存度は沖縄に次いで高い(4)。また、過去2度の回復局面では公共投資の景気下支え効果がみられたが、今回は公共投資削減の影響が大きい(5)。
次いで製造業をみると、今回の景気回復は全国的には製造業、中でも電子部品・デバイス工業や輸送機械工業といった好調分野によってけん引されている。しかし、北海道の産業構造をみると、全国よりも農林水産業や建設業のウェイトが高い上に、製造業、中でも、電子部品・デバイス工業や輸送機械工業の割合が低い(図1)。
また、主要産業の一つである観光をみても、2004年3月まで、8か月連続で来道者数が前年を下回ったのち、ゴールデンウィーク期間は2か月連続で前年を越えたが、ハイシーズンの夏場を含め、6月以降、再び前年割れとなっている(図2)。
ただし、第1部第2章第4節でも触れたように、近年、南半球からのスキー客が増えており、本年11月からは、新千歳―ケアンズ線の定期便運航が6年ぶりに再開されることから、その効果が期待される。
以上のように、北海道経済は他地域とは異なる構造的要因を有しており、構造的要因が循環的要因以上に大きく影響しているため、景況感に他地域との差が出ているものと考えられる。構造的な問題ゆえに一朝一夕に急回復することは難しい面も否定し得ないが、サマータイムの社会実験の展開や、道州制などの議論も始まっており、それら北海道での構造改革が実を結ぶことが期待される。