第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 3. [事例3-6]
[事例3-6] 株式会社T(神奈川県川崎市)
電子部品・デバイスの製造
[企業概要]
資本金305百万円、売上高513→633百万円(2001.9→2002.9)
[グローバル化への対応]
- 液晶事業に積極的な韓国大手メーカーに対応すべく、2003年に韓国に現地法人を設立
- 韓国進出に当たって、韓国政府から「高度技術随伴事業」の認定を取得
液晶のガラス基板や半導体は、層状化された薄膜の集合体であり、その製造工程においてはスパッタリングと呼ばれる薄膜形成加工が必要不可欠である。このスパッタリングの前工程として、ターゲット材と呼ばれるモリブデンやタングステン・クロム・チタンといった金属を治具にはり合わせるボンディング加工と呼ばれる工程がある。
T社は、一括受注によるボンディング加工及びターゲット材の販売を行っている。
成長の要因
以前は、ターゲット材は国内の金属・非鉄金属メーカーやセラミックメーカーなどが開発を行っていたが、ボンディング加工の大半はT社が請け負っていた。その後、自社でボンディング加工まで行う一貫体制を築くメーカーが現れたものの、T社は、顧客ニーズに応じてすべてのメーカーに柔軟に対応しなければならなかったため、ボンディング加工に必要となるハンダ材を、ターゲット材の材質ごとに開発した。このボンディング加工技術の蓄積は競争力の源泉の1つとなっている。
その一方で、現在では、自社ブランドのターゲット材の販売が全体の売上の7割を占めるに至っている。近年の液晶関連企業のおう盛な設備投資に伴い、特に韓国メーカーを中心に、ターゲット材の販売が好調なことが主な成長の要因となっている。
海外展開の概要
液晶事業に積極的な韓国大手メーカーに対応することを目的として、2003年2月に韓国に現地法人を設立した。現地法人の設立に際しては、事前に、韓国政府から「高度技術随伴事業(26)」の認定を取得している。同事業の認定により、法人税・所得税などの国税やその他地方税の減免を始めとする各種支援を受けることができた。同工場は、同年7月に竣工し、2004年に入り稼働している。
今後の展望
韓国工場の稼働に伴い、2004年9月決算期における輸出金額は前期の10倍を超えるとともに、全体の売上高も倍増する見通しとなっている。2004年10月には台湾工場も竣工しており、更なる業容拡大が期待される。
現在の海外事業は、ボンディング加工の受託にとどまっているものの、将来的にはターゲット材の販売まで事業を拡大する意向である。