第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 3. [事例3-5]
[事例3-5] 株式会社S(東京都西多摩郡瑞穂町)
各種工業用金型の製造・試作
[企業概要]
資本金10百万円、売上高1,005→1,202百万円(2002.3→2003.12)
[グローバル化への対応]
- インターネットによる受発注システムを確立、開発途中でも仕様変更に柔軟に対応
- 海外現地法人の取引を通じて、新たな海外の取引先を開拓
パソコン・携帯電話・デジタルカメラ・液晶カメラなど電化製品等のプラスチック部品を含む工業用金型の製造及びプラスチックモデルの金型試作を行っている。
成長の要因
S社は90年の設立当初からインターネットを利用した受発注システムを構築するとともに、生産工程の分析を行い、金型を従来の半分の納期で納入する生産方法を確立した。また、設計データをCAD/CAM(25)によりインターネットでやりとりするなど、開発途中での仕様変更にも柔軟に対応し、短納期で確実に製品を提供できる体制を整備したことから、大手メーカーなどの信頼を獲得するとともに、携帯電話やデジタル家電の技術革新を背景に売上が増加している。
海外展開の概要
日本で、韓国大手電機メーカーの日本法人と取引を重ねる中で、韓国にはS社レベルの技術を持つ企業がないことを知り、韓国に現地法人を設立すれば、韓国本社との取引が可能と判断した。設立当初から、日本市場だけでは先細りするとの懸念を持っていたこともあって、94年に韓国大手電機メーカー向けに金型試作を行う現地法人を、2000年、2003年にも金型の製造を行う現地法人を設立している。
今後の展望
韓国市場では、開発は日本、量産は韓国という分業体制の確立を目指す。アメリカ市場では、2004年中に大手通信メーカー向けに金型試作を行う現地法人を設立する。アメリカでは携帯電話を含めた移動体情報端末の需要が拡大傾向にあると考えられるため、開発及び試作段階から積極的に参加し、強固な取引関係を構築することを目指している。さらに、ヨーロッパ進出のために市場調査や展示会への出展も積極的に行っている。