第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 3. [事例3-2]
[事例3-2] P株式会社(広島県福山市)
各種工作機械の製造
[企業概要]
資本金85百万円、売上高13,252→16,200百万円(2001.9→2002.9)
[グローバル化への対応]
- 国内自動車メーカーの海外進出の動きに合わせて、海外で事業を展開
- 海外から低コストで高品質の部材を積極的に調達
- 環境負荷の少ない工法の特許を取得し、海外自動車メーカーとの取引を拡大
工作機械、工作ユニット及びそれらの周辺機器の製造・販売、特に自動車部品を量産製造する工作機械の製造を行っている。
国内自動車メーカーは、近年、大規模な海外進出を行っており、海外における生産方法は、ノックダウン方式と呼ばれる部品を輸出し組立だけを現地で行う方式から、エンジンやトランスミッションなどの主要部品も現地で生産する方式に移行している。
P社では、大手自動車メーカーが積極的に海外で工場を建設するに伴い、工作機械に対する需要が拡大したことから、1997年にタイに現地駐在員事務所を開設(2002年現地法人化)、2001年にはアメリカに事務所を開設(2003年現地法人化)している。
海外企業との取引も拡大
海外自動車メーカーは基本的には自国の工作機械メーカーとの取引を優先するため、海外自動車メーカーに対する営業は容易ではなかった。
P社では、切削油剤(部品を切削する際に多量に使用され、人体や環境への悪影響が指摘されていた)に替えて、生分解性が高く環境への負荷が小さい植物系油を刃先から極めて少量だけピンポイントに噴射して切削加工を行う「MQL工法(24)」を開発し、日本を始めアメリカ・ドイツ・韓国・台湾で特許を取得した。同社の製品は、高効率・高精度であり、かつ省エネで環境への負荷が少ない点が全米製造科学センター(NCMS)でも評価され、海外大手自動車メーカーとの取引が拡大している。
海外からの資材調達
海外事業を展開する以前は、納品後のアフターサービスを考慮し、納入先に近い地域の企業の部材を輸入することはあった。海外事業を展開する中で、様々な高品質な部材が国内より低コストで入手できることが判明した。現在では、ホームページで資材調達のためのページを開設するなど、低コストで高品質な部材の調達を積極的に行っている。
今後の展望
今後はさらにEU各国などで特許を取得するとともに、新技術の開発に努め、高い技術力とこれまでの大手自動車メーカーとの取引実績を背景にEU諸国や南米・インドを中心に多くの国へ営業を展開する予定である。