第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 3. [事例3-1]
[事例3-1] 株式会社O(京都府久世郡久御山町)
各種フラットパネルディスプレイ製造用の精密機械の製造 他
[企業概要]
資本金521百万円、売上高4,694→7,455百万円(2001.8→2002.8)
[グローバル化への対応]
- 系列、企業規模にとらわれない海外企業との取引により発展
- 代理店開拓の困難を乗り越え、売上高に占める輸出比率は7割を超える
主に各種フラットパネルディスプレイ製造用の精密機械の製造を行っている。
特に、フラットパネルディスプレイの大型化に伴う、韓国・台湾・中国の積極的な設備投資により売上が増加している。
海外展開の概要
87年の設立当初は、国内のガラス基板メーカー中心の営業が売上増に寄与したが、一方で、一部の大手電機メーカーが積極的な取引に応じたものの、多くの大手電機メーカーでは系列会社との間の取引を中心に行っており、なかなか取引が成立しなかった。そのため、海外にも販路を求めざるを得ず、販売ルートが全くなかった韓国の複数の大手電機メーカーに対し、社長自らが訪問して直接営業を展開し、販売ルートを開拓していった。O社によると、韓国の大手電機メーカーは、当初から前向きの姿勢で対応したとのことである。
一方で、韓国における代理店の開拓は、資金援助した代理店が倒産したり、関係がうまくいかなかったりと、当初は順調に行かず、無駄に資金を流出させることになったが、積極的に代理店の構築と育成を行い、代理店の構築ができた。その後、台湾への営業展開に成功し、さらに中国への営業展開を行っている。2004年には中国の上海と深センに連絡事務所を設立した。現在では売上高に占める輸出比率は7割を超えている。
公的資金を有効に活用
O社では、開発段階では公的研究機関の支援を受けつつ、海外電機メーカーのニーズに応じた製品開発を行っている。自社の競争力強化のため、京都府や経済産業省の助成制度を利用して研究資金を調達するなど、公的資金の有効活用も図っている。
今後の展望
各種フラットパネルディスプレイ製造用の精密機械の積極的な開発と製造は引き続き行い、更なる大型化に対応していく。 また、エンジニアリング事業にも力を入れ、製造ラインの一括受注を目指している。今後の海外展開としては、インドや東欧などを視野に入れている。