第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 2. [事例1-6]

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[事例1-6]株式会社F(山口県宇部市)

食品加工機械の製造販売

[企業概要]

資本金1.0億円 売上高31.2→32.7→28.3億円(2001→2002→2003年度)

[グローバル化への対応]

  • 顧客要求へのきめ細やかな対応で他社との差別化を図り、技術の向上につなげる
  • 日本で生まれたカニ風味蒲鉾の国際食品化により、製造装置を海外展開

カニ風味蒲鉾製造装置

食品加工機械の設計、製作、販売、保守を一貫して行う専門企業。蒲鉾製造装置では、国内市場シェア40%の日本一企業である。

食品加工分野では、原材料や製造品目、流通経路等の複雑な要素が絡み合い、顧客の要望は多種多様に渡る。顧客利益を最優先して製品開発を推進し、結果として新技術の開発にもつながっている。創業80年近くになるが、ベンチャー企業としての精神を忘れず、これまでにも多数の特許を取得している。

現在、練り製品分野では約90種類の機器を製造しており、豆腐製造機器、海苔加工機器といった伝統食品分野や、ペットフードや化粧品会社にまで取引先が拡大してきている。

日本生まれのカニ風味蒲鉾を世界の食卓へ

練り製品は日本独自の食品であるように思えるが、海外でも消費が拡大している。きっかけとなったのはカニ風味蒲鉾であり、82年に韓国とロシアへ製造装置を輸出したところ、日本食の流行に乗り、サラダの具として売れた。その後、輸出を拡大し、カニ風味蒲鉾製造装置を中心に30数か国、500社を超える企業に販売している。また、魚介類を好むフランスでは、98年にパリ事務所を設立した。練り製品の国内市場は、過去100万トンであったが、現在は60万トンまで縮小している。一方で、世界のカニ風味蒲鉾市場は、当初は皆無だったが、2003年度で約37万トンに拡大、地域によっては年率20%で拡大している。ヨーロッパでのカニ風味蒲鉾の消費量は、国内の約3倍にまで成長した。売上高では、年々縮小する国内市場の影響を、海外市場で補てんしつつある。

海外事業展開に際しては、専門職員の育成問題等があったほか、海外の製造物責任法の厳しさについても国内認識との隔たりが大きく、戸惑うことがあった。これらについては、基本的に個別に対応し、経験を積み重ねて克服した。

今後の展望

今後も世界のカニ風味蒲鉾需要の伸びに応じて、自社製品の需要も伸びると予想される。当社の海外展開も東南アジア、ロシア、EUへ拡大しており、蒲鉾製造装置の中でも海外市場シェア100%の斜断繊維カニ風味蒲鉾製造装置を、積極的に拡販する。将来的には練り製品で培った技術が様々な業種に通用するとの自信から、世界的な商品販売を展開する。

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