第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 2. [事例1-5]

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[事例1-5]E株式会社(広島県府中市)

ラジコン模型の製造販売、樹脂の成形加工

[企業概要]

資本金0.8億円 売上高27.4→29.6→33.4億円(2001→2002→2003年9月)

[グローバル化への対応]

  • 海外での競技選手権主催により、自社ブランドを浸透
  • 市場拡大が見込める中国では、採算よりブランド流布を重視

ラジコン模型

ラジコン模型、特にヘリコプター部門に強く、趣味用から空撮等の産業用まで幅広く開発しており、国内市場シェアは60%程度となっている。

繊維と関わり深い立地から紡績業を営んでいたが、業界の衰退によって事業転換を進めた。68年に樹脂成形加工分野に参入、73年には樹脂成形加工技術と関連会社の電機部門技術を応用し、ニッチ市場の可能性を見出したラジコン模型分野に進出した。

ラジコン模型には模倣品が多く発生し、大量の外国製技術応用商品等が短期間に出回る傾向にある。これらに個々の対応をすることは非常に困難であるものの、保有技術の細かな特許取得を心掛け、自社ブランドのイメージダウンに対処している。産学官連携もしており、特に大学との共同研究により高い技術開発能力を維持し、その研究費の一部は官からの助成金で賄っている。

海外での競技選手権主催により、自社ブランドを浸透

国内市場は小規模で限界感があることから、かねてよりラジコン模型の本場である欧米市場への進出が念頭にあった。確かな性能やラジコン競技選手権主催等により、後発企業ながら本場での地位を獲得した。

飽和状態だった国内市場の打開策としてはもちろんのこと、競技選手権に参加するほどの実力者が使用する機体として知名度が飛躍的に向上した。ブランド戦略を有利に進められた効果は価格維持に寄与し、収益性にも貢献している。

今後の展望

ラジコン模型の販売では、市場拡大が見込める中国への進出を加速する意向であり、2003年から上海周辺で直営小売店を展開している。今後、沿岸部を中心に10店舗の開設を目指しており、将来的には北京への進出も視野に入れている。中国では当面は採算性を重視せず、自社ブランドの流布に注力する。他地域では、ブランド戦略を進め、価格維持とアフターサービス充実によって支持層を拡大していく。ラジコン模型部門は、現在は全売上高の36%だが、いずれは60%程度まで伸び、樹脂成形部門を上回ると見込んでいる。なお、生産面では、外国製の部品の調達は続けるが生産主体は国内工場に据え、現状を超えた生産拠点の移行は進めない方針としている。

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