第1部 第2章 第1節 グローバル化に適応する地域の製造業 2. [事例1-1]
2.グローバル化に対応して活性化を図っている12の事例(8)
[1] 独自の技術を駆使している企業
[事例1-1]A株式会社(宮城県仙台市)
各種工業用機械刃物や産業用機械器具等の製造販売
[企業概要]
資本金5.0億円 売上高64.7→67.3→68.2億円(2001→2002→2003年度)
[グローバル化への対応]
- 技術流出を防ぐため、一貫して国内生産で対応
- 高度な技術力を背景に、安価な海外製品との差別化を図る
工業用機械刃物の専業企業。近年増加している難切削材に対応した刃物(難切削材用高合金強靱鋼製ベニヤ・ロータリーナイフ)では、国内市場シェア第1位となっている。
大学の研究所と提携し、高精度な切断技術、研磨技術、精密加工技術の開発に注力している。また、社内に特許課を設けて申請手続や管理を行い、これまでに特許16件・実用新案24件を取得している。報奨金制度の導入により研究者の開発意欲を向上させ、年5件以上の特許申請を目標としている。
国内生産にこだわる中での海外市場の販路拡大
国内市場の縮小や国内得意先企業の海外進出を背景に、60年代から順次、台湾やフィリピン等の海外に販路を拡大していった。76年に韓国で48%出資の合弁会社を設立し、2004年には上海でも100%出資の現地法人を設立した。中国、韓国、東南アジアを中心とした販売を展開しており、2003年度の輸出売上は全体の20数%となっている。一方で、技術の流出を防ぐために、一貫して国内生産で対応している。
海外市場へ進出したことで、売上増加への寄与がみられる。さらに、生産の増加に伴い生産設備の拡充を図った結果、生産効率が改善してきており、収益面にも寄与している。
今後の展望
海外価格競争激化から、輸出売上は伸び悩んでいる。しかし、日本企業の海外進出は続いており、中国では鉄鋼関係を始めとした刃物需要の増加が期待できることから、中国市場の新規開拓を進める方針である。中国製品との競争は一段と激化することが予想されるが、自社の高精度な技術力を背景に差別化を図る。今後は既存の刃物にとどまらず、その周辺業界へも着目し、自社の技術を活かせる市場を開拓していく。