第1部 第1章 地域経済の現状 2.

[目次]  [戻る]  [次へ]

2.縮小傾向にある地域間の経済格差

「大都市は豊かで地方は貧しい」、「大都市には仕事があるが、地方にはない」という声もよく聞かれる。そこで、経済的な豊かさを表す代表的な指標である一人当たり県民所得と、雇用の状況をみるために完全失業率を取り上げる。

内閣府「県民経済計算」で、一人当たり県民所得の各年度における高所得10県の平均と低所得10県の平均の差をとると(第1-1-4図)、バブル期にかけて拡大したものの、90年代に入ってからはやや縮小している。これは、以前から存在する格差が縮まったわけではなく、高所得県の所得が景気の低迷等を背景に下がったことが要因となっている。ここ10年間で、一貫して上位10位に入っているのは、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、滋賀、大阪であり、すべて三大都市圏に属している。逆に、一貫して下位10位に入っているのは、青森、秋田、和歌山、高知、長崎、鹿児島、沖縄であり、地方圏の中でも東京や地域の中心都市から時間的距離のある県が多くなっている。

次に総務省「労働力調査」で失業率をみる。同様に、各年における高失業率10県平均と低失業率10県平均の差をとると(第1-1-5図)、ここ5年では2.6~2.8%ポイントの間を推移している。これは、本年度の経済財政白書でも分析しているとおり(1)、地域間の労働移動が縮小し、地域間の失業率格差の調整が行われにくくなってきているためと考えられる。一貫して高失業率県に属するのは、沖縄、大阪、兵庫、福岡、北海道であり、低失業率県に属するのは、長野、静岡、福井、富山である。地域別にみると、北海道と近畿は失業率の高い傾向が続き、北陸と北関東では低い傾向が続いている(第2部1章3節のコラム参照)。 なお、やや懸念されるのは、一人当たり県民所得の低い10県の完全失業率が、最近若干上昇していることである(第1-1-6図)。5年前と比較すると、和歌山県の2.4%ポイント上昇をはじめとして、平均1.4%ポイント上昇している。これに対し、1人当たり県民所得の高い10県の完全失業率の上昇幅は平均0.9%ポイントにとどまっている。

[目次]  [戻る]  [次へ]