平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第4章 フランス
フランス政府は,91年を通じ,引き続き緊縮的な金融政策を維持した。マネーサプライ (M3・注1)の伸びを見ると,低下傾向を示しており,最近では,目標圏(5~7%)の下限に近づいている(第4-1図)。
政策金利の変更については,3月,10月に景気への配盧から引下げが行われたが,11月,12月にはドイツの利上げに起因するフラン安に対処するため,利上げが行われた。以下,やや詳しくみてみよう。
3月18日の利下げ(市場介入金利9.25%→9.00%・注2)は,景気テコ入れのために実施された。しかし,その直後からフランのスペインペセタに対する減価が顕著となり,ERMの下限レートに張りつく緊張状態が夏ごろまで続いた。その後はスペイン経済の減速などもあり,緊張が和らいだことから短期金利は低下し始めたものの,ドイツでインフレ懸念から高金利政策がとられたため,緩やかな低下にとどまった。
10月に入ると,インフレ低下の定着やフランスの景気回復が認識され始め,短期金利は再び低下し,ドイツの短期金利を下回るようになった。こうした情勢を背景に,10月17日,2回目の利下げ(市場介入金利9,00%→8.75%,5~10日物現先オペレート金利10.00%→9.75%)が行われた。
ところが,この利下げ以降,それまで少しずつ進行していた対マルクでのフラン安が加速し,11月にはERMの変動許容幅2.25%のうち2.0%を超える事態となった。このため,11月18日,市場介入金利の引上げ(8.75%→9.25%)および5~10日物現先オペレート金利の引上げ(9.75%→10.00%)が決定された。また同時に景気へのマイナスの影響を避ける目的で,政府およびフランス銀行は,主要銀行に対し,顧客向け貸出金利の引上げを行わないよう求めるとともに,12月1日から預金準備率を引き下げて(注3),流動性資金の確保に努めている。
この措置により,フラン安は一服したものの,対マルクでは依然としてER Mの下限に近い水準で推移していた。このため,マーストリヒト・サミットが終わって1週間後の12月19日にドイツの利上げが発表されると,4日後の23日にはフランス銀行は利上げを決定し,ERMにおけるフランの安定に全力を注ぐ姿勢を一層鮮明にした。これにより,市場介入金利は9.6%,5~10日物現先オペレート金利は10.5%となった。
なお,92年のマネーサプライ目標は,91年第4四半期比伸び率年率4~6%と発表されている 12月5日)。