平成3年
年次世界経済報告 資料編
経済企画庁
II 1990~91年の主要国の政策動向
第4章 フランス
ロカール首相は,91年4月5日,国有企業の民営化政策に関して,従来の現状凍結方針を転換し,条件付きながら部分的民営化を進めることを発表した。
その条件とは,
① 国有企業の株式を取得した民間企業は,その国有企業の事業内容や,資金調達に協力する。
② 株式の取得は,国有企業の増資時のみとする。
③ 株式の取得方法は,資本金払込みもしくは自社株との交換によるものとする。
④ 国有企業の株式の過半数は,あくまで国が保有する。
というものであった。この方針は,クレッソン内閣にも引き継がれており,91年12月現在,地銀のクレデイ・ローカル・ド・フランスなど2金融機関と,石油業界大手のエルファキテーヌの株式の一部売却が決定されている。
こうした政策転換の背景としては,まず,90年下半期の景気減速にともなう失業者の増加があげられる。91年5月以降,失業者数(求職者数)は,過去最多の水準となっており,パリ近郊では治安の悪化の原因ともなっている。このため政府は,民営化による株式売却収入をその企業の投資に振り向け,雇用を創出することを最大の目的としている。
また,ECの市場統合を93年1月に控え,フランス企業の競争力を高める狙いも込められているとみられる。一方,野党や,国有企業内部からは,ECの経済・通貨統合に向け,財政赤字が厳しく制限されることから,売却収入を財政赤字削減のために使うのではないかとの懸念も聞かれるが,政府は,これを強く否定している。
なお,売却収入額は,92年度予算案には明示されていないが,年間100~150億フラン程度と見込まれている (第4-2表)。