昭和47年

年次世界経済報告

福祉志向強まる世界経済

昭和47年12月5日

経済企画庁


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第1部 通貨調整後の世界経済

第3章 岐路に立つ多国籍企業

2. 先進国における外資規制

投資受入れ国に目を転じよう。EEC成立を機にアメリカ企業がヨーロツパに大量進出した。ヨーロッパ諸国の申には,雇用機会の増大,過疎地域の発展などの見地から外国企業を積極的に誘致する国さえあった。とくに東西冷戦の渦の中にある西ドイツは,アメリカとの関係をさらに緊密にするためと,国内市場をいっそう競争的にするためにアメリカ企業の進出を歓迎した。しかし,投資受入れ国経済における外資企業の比重が高まるにつれて,摩擦が発生した。1960年代なかば,コンピュータ部門支配をめぐってフランス政府とアメリカ企業の間で緊張関係が高まった話は有名である。その後ヨ一ロッパではとくに小国の場合,自分の国が閉めても隣国が開けていれば結果的には同じであるとか,企業に力がついてきてアメリカヘ逆に進出するケースもふえているということもあって,この問題を冷静にみるようになった。

しかし,アメリカ企業の支配力が強いカナダでは,カナダ産業構造特別委員会(委員長ワトキンス)が上院の要請を受けて66年から外資進出について研究を行ない,68年3月報告書を提出した。この段階では,具体的な政策変更をみることはなかった。最近ふたたび外資問題がやかましくなって,銀行,保険,商社,ラジオ,テレビ放送部門ではすでに外資進出が制限されているが,さらに外資全体の審査が必要であるとする,かなり強い調子のグレー・レポートが提出されたが,カナダ政府はこの提案の中から,72年5月,外資による既存のカナダ企業のテーク・オーバーをチェックする法案を作成したものの結局審議末了になった。問題は現在,外国資本に対する依存度が極めて高い(製造業分野で60%)点から,これ以上外資が入ってくることによって政府の経済コントロールが失われるかどうかにあり,一般的にはこのままの姿で放っておけないというふんいきもあるが,後進的な州はやはり企業誘致の立場をとっている。オーストラリアでも同じような問題があるが,72年9月,テーク・オーバーを審査する機関の設立を発表した。

第3-4図 自国資本の割合は65%


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