昭和33年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
経済企画庁
第十章 インド経済の実態分析
別項でのべたように東南アジア諸国のうちで一九五七年中に外貨が若干でも増加した国はタイ一国で,その他のほとんどの国はかなり大幅な減少を示した。そのうちでもインドの減少が最もはげしく,一九五五年末の中央銀行の外貨保有量は一七億九,一〇〇万ドルであったが,一九五六年末には一五億三,九〇〇万ドルに減り,一九五七年末には八億七,二〇〇万ドルという異常な激減ぶりを示した。
この減少状況はその後においても停止せず,本年三月末は八億三,五〇〇万ドルと,昨年三月以降この一年間に五億一,九〇〇万ドルも減少している。しかも現在ライセンス未済分残高は外貨保有量を上回る六億三,〇〇〇万ドルにも達していると見られている。
かかる外貨の減少はいうまでもなくさきにのべたような貿易収支の著しい悪化によるものであるが,この外貨準備の減少は,第二次五カ年計画立案当時から予想されたものであつた。その危機が予想された以上に早くきたものである。インドはこの危機の対策として,一方では輸出の振興をはかるとともに,輸入抑制によつて貿易収支を均衡化する努力,がなされ,他方外資導入について,あらゆる方策が講じられている。すなわち昨年はIMFから二億ドルの借入れを行つたが五六年一一月一五日,ソヴエトの申出以来両国聞で交渉が重ねられていた五億ルーブルの借款協定も五七年一一月九日調印のはこびとなった。この借款条件は期間一二年,一二回年賦,年利二・五%支払開始は一切の設備,機械の引渡しが完了してから一年後ということになつており,借款はソヴエトからの買付けだけに使用されることになつている。借款の使途は第10~8表の通りである。
このほかに八,六五〇万ルピーが引渡し完了時までのプラント,機械の値上り分に当てられることになっており,総額六億ルピーにのぼるとみられている。
さらに本年三月四日,アメリ力政府との間に,輸出入銀行から一億五,〇〇〇万ドル,ICA資金のなかから二億二,五〇〇万ドルにのぼる長期の借款協定が成立した。
また日本との間にも一八〇億円にのぼる円借款の協定が成立した。また昨年一月末,フランス政府との間に交渉されていた経済・技術協定も本年一月二三日に正式に調印をみ,二億八,〇〇〇万ルピーのクレジットがインド政府に供与されることになつた。
本年二月二八日,下院に提出された一九五八~五九年度予算案では,資本予算は,収入面においては,国内市場からの資金調達が一四億五,〇〇〇万ルピーであるのに対し,外国借款(国際機関をふくむ)は二四億四,八〇〇万ルピーで,前年度修正予算の七億八,一〇〇万ルピーに比べて大幅に増加している。予算に計上されている主要な外国借款は第10-9表のごとくである。
以上のほかに,さきにのべたように新会計年度中に受入れが予想されている援助は日の借款,ソ連の重工業建設に対する長期借款およびカナダの援助追加などがあるわけである。