昭和33年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
経済企画庁
第四章 転機に立つ西独経済
設備投資および個人消費と並んで現在の西独景気を支えているいま一つの支柱は連邦支出の膨脹である。本年三月末におわる一九五七~五八年度の現金支出は三二六億DMで,前会計年度より三八億DM(一三%)の増加であつた。一方現金収入は約九億DM(約三%)しか増加しなかったから,現金赤字は五六~五七年度の○・九億DMから二七〇億DMへと大幅な増加を示した(一九五五~五六年度の予算尻は二八六億DMの黒字であつた)。もつとも以上の数字は政府の対外支払いをふくめた数字であるから,国内景気に直接関係する国内収支だけについてみると,支出は前年度の二六四億DMから五七~五八年度の二九五億DMへと約一一%の増加であり,収支尻は約四億DMの黒字であつた。しかし黒字額は五五~五六年度の三五二億DM,五六~五七年度の二一三億DMにくらべて大幅に縮少した。
一九五六年度までは大幅な出超によるインフレ効果を財政の吸上げによるデフレ効果によって相殺してきたわけだが,五七年度以降はこの財政による相殺作用が著しく弱まってことになる。
以上のように連邦財政の総合現金収支が五六~五七年度以降赤字に転じたため,ブンデス・バンク預託の政府剰余金(いわゆるユリウスの塔)も本年三月末現在で約二八億DMに減少した。一九五六年九月のピーク約七〇億DMにくらべればその四割にすぎない。
本年四月からはじまつた五八~五九会計年度の連邦政府支出見積額は三六九・七億DMで前年度の支出実績より五二億DM(一六%)多い。支出増加の内訳は,国防費三〇億DM民事費二二億DMとなつている。政府は目下減税案を議会を提出しているが,その中心は法人所得税の改正であつて,配当課税を三〇%から一一%へ大幅に引下げる反面,社内留保利潤に対する税率を四五%から四七%へ引上げる予定である。英国の税制改正と同じく資本市場の育成が狙いである。このほか夫婦者の所得税の引下げや貯蓄奨励のための長期貯蓄に対するプレミアム供与等が実施される。