昭和33年
年次世界経済報告
世界経済の現勢
経済企画庁
第四章 転機に立つ西独経済
前述のように固定投資は設備投資,公共建設投資,住宅投資など中心に最近再び増加傾向にあるが,五四~五五年にみられたほどの旺盛な拡大力とはなりえないようだ。
投資ブームの衰退に代わつて五七年春以来有力な経済拡大要因となつた個人消費は,いぜんとして堅調である。昨年の個人消費は七・五%の増加で,五五年の一〇・八%増五六年の一〇・九%増にくらべれば増勢は鈍化しているけれども,これはもつばら貯蓄率の上昇によるもので,可処分所得はいぜんとして高い増加率を示している。すなわち民間家計の可処分所得は,五六年の一,二〇四億DMから五七年の一,三九二億D Mへと一〇・四%増加し,五六年の増加率(一〇・五%)と同じであつた。これに対して,貯蓄率は五六年の五・八%から五七年の八・二%ヘ高まつた。
本年にはいつてからの消費の動向を小売売上高でみると,第一・四半期平均で約九%増で五七年の平均七・五%増を上回っており,いぜんとして消費が高い比率で増加していることを示している。とくに自動車,家庭用電気器具,カメラ等耐久消費財に対する需要とサービス需要が急増しているようだ。
耐久消費財の売行好調とは対照的に衣料の売行は三月末まで冬の気候がつづいた関係もあつて概して不振であったほか,昨年春における業者の仕入れ量が過大であつたため現在業者は在庫減らしにつとめており,その結果本年第一・四半期における繊維生産高は昨年同期を五%方下回った。第一・四半期の消費財生産が昨年同期と変らなかった理由は,この在庫減らしによる繊維生産の不振にあつた。