第5節 企業システムの変革
戦後日本の産業社会においては,株式持合いやメインバンクに代表される日本的金融システム,長期継続的取引関係に代表される企業間関係,終身雇用・年功序列型賃金・企業別労働組合に代表される雇用慣行,の三つの要素が相互に影響し合う日本的経営システムの存在が指摘されてきた。
90年代の日本経済の不況を企業経営規律メカニズムの不適切さが招来した「ガバナンス不況」であるとする主張がある。その背景には,日本の企業が資金を,とくにバブル期に,結果的にみれば収益率の低い投資案件へ投入してしまったとの認識がある。80年代後半に低コストで調達された巨額の資金がもたらした,このバブル期の負の遺産の後遺症は,長期にわたって日本経済全体の足を引っ張り,現下の経済の停滞にまで及んでいる。(注1)
日本でも,株主重視の経営を行えるようにすることは新たな企業統治にとって不可避である。その際,従来は企業の情報開示に十分でない面があり,経営者と投資家の間に情報の非対称性が存在し,しかも非効率的な経営を行っても投資家がその改善のために十分な影響力を行使することができなかったために,株式投資にはリスクプレミアムが高まり,株価下落,資本コストの上昇を招いた可能性がある。資産の現在価値を考慮した適切な会計基準を中心とする会計制度の充実が不可欠である。
1. メインバンク依存の変質
(制度疲労の可能性)
戦後日本の産業社会を説明するいくつかの特徴として,しばしば,株式持合いやメインバンクに代表される日本的金融システム,長期継続的取引関係に代表される企業間関係,終身雇用・年功序列型賃金・企業別労働組合に代表される雇用慣行,これら3つの要素が相互に影響し合う日本的経営システムの存在が指摘されてきた。特に,80年代のいわゆるバブル期以前までについては,こうした日本的経営システムが有効に機能したとの見方もある。少なくとも支障をきたすことはなかったといえよう。
ところが,90年代以降の日本経済の不況は企業に対するガバナンスのメカニズムの不適切さが招来したガバナンス不況であるとの主張がある。その主張の背景となっているのは,日本の企業が銀行借入への依存から脱却し,使途についてのモニタリングがなされない資金を得るとともに,それを収益率の低い投資対象へ投入した,とする見方である。こうしたことなどから,日本のメインバンクを中心とするコーポレートガバナンス(注2)構造の有効性に疑問が投げかけられ,日本的経営システムにいわゆる制度疲労が起こっているのではないかとの見方が拡がっている。
(企業金融のメインバンク依存体質の変質)
70年代から進んだ金融自由化・国際化は,特に大企業の資金調達手段の多様化を促し,これが資金調達の構造に大きな影響を及ぼした( 第2-5-1表)。大企業の資金調達構造の推移をみると,大企業は借入金による資金調達割合を大幅に減少させてきている一方で,増資や社債の割合が高まっており,間接金融から直接金融へのシフトが見られている。とりわけバブル期には転換社債やワラント債といったエクイティ関連債の発行が積極的に行われてきた。社債へのシフトについては適債基準に関する規制が徐々に緩和されたことによる影響も強いと考えられ,金融の自由化がこれをもたらしたものといえる。
大企業の銀行借入依存の低下は,企業金融の構造を大きく変化させた。銀行の中小企業向け貸出が大きく増加し,特に従来は大企業向け融資に高い比重をおいてきた都市銀行の中小企業向け貸出が83年の43.3%から89年には57.3%と急激に上昇し,金融自由化にともなう貸出金利競争が激化し,銀行の事業機会を狭めるとともに,融資のリスクが高まった。また,80年代後半のバブル期に銀行は多額の資金を不動産関連分野に供給し,さらには不動産関連融資に深くかかわる系列ノンバンクへ多額の融資を行った。銀行の不動産業と系列ノンバンクへの融資の割合をみると,81年の9.2%から91年には20.3%と急激に上昇し,不動産価格変動リスクにさらされる割合が急速に高まった。このように特にバブル期に大企業の借入依存の低下を背景として銀行の融資はリスクの高い貸出先の割合が急激に高まった。
(企業の資金調達構造と経営の効率性)
こうしたバブル期における企業の積極的な資金調達とその調達手段の多様化に伴う変化は,企業の経営効率に対してどのような影響を及ぼしていたのであろうか。企業の金融財務構造,株主構成,メインバンク関係の強弱といった要因の違いが,その後3年間の企業の経営効率(付加価値/総資本比率の翌3年間の平均値)に与える影響について,バブル前の82年度,バブル期の87年度,バブル崩壊前後の90年度,最近の回復局面である93年度の4期にわたってその関係をみた(第2-5-2図)。
この結果によると,特に社債との関係では,バブル期の87年度において社債による調達比率の高い企業ほど翌3年間経営が非効率( 注3)になっている。説明される経営効率の時期がバブル崩壊前の88年度から90年度であることを考慮すると,バブル期において,社債により調達された資金を用いて行った投資は非効率であったことをうかがわせる(注4)。また,メインバンクへの依存度と経営の効率性との関係では,特に87年度についてメインバンク融資比率(メインバンクからの融資残高(長期)/長期借入金残高)の高い企業ほど経営が非効率になったという相関関係がみられる(注5)。
こうしたことから80年代半ば以降の株価上昇の楽観的期待に基づく活発なエクイティ関連社債の発行は,企業に対する銀行のガバナンスを低下させる一方,社債により得た資金の非効率な投資分野への投入という結果もたらし,その結果として発行企業のパフォーマンスが悪化したものとみられる。一方,この時期にメインバンクの存在が経営の効率性にマイナスに働いた点については,多くの企業が銀行借入から社債発行へと資金調達手段をシフトさせると,銀行貸出の市場においては借り手の立場の方が有利となり,企業が銀行に対して強い交渉力を持つようになり,メインバンクに対する十分な情報の提供が行われなかった可能性もあろう。
一方,時期を問わず負債比率の高い企業ほど経営が相対的に非効率的であるとの結果がえられたが,当期の資本の生産性を説明変数に加えてその後の資本の生産性の改善をみると,当期の負債比率の高い企業ほどより効率化しているとの結果となった。企業の経営者にとって多額の負債の存在は倒産のリスクに高い影響を及ぼし,倒産してしまうと経営者がその地位を追われる可能性があること,さらに金融機関からの借入れの場合は金融機関側からのモニタリングがある程度は行われることから,債務を保有することにより経営の規律づけが経営者に強く働いていることを窺わせる。
ただし,バブル期には負債の存在が経営者に対しこうしたプレッシャーをあまり与えなかった。この理由としては,バブル期に積極的に発行された社債が転換社債などのエクイティ関連債であり,企業の経営者は好調な株式市場を背景にこうした社債が順調に株式転換されるとの楽観的な見通しを強く有していたことが挙げられる。つまり,通常の社債による調達であれば企業は負債と考えるため経営の効率化を図ろうとするが,バブル期における転換社債の発行は企業から見れば自己資本の増加とそれほど変わりがなかったと考えられる。しかしながら現実にはバブル崩壊に伴って株式転換が進まず98年度に償還時期を迎えている転換社債の残高(金融機関を含む)が4兆円あるともいわれており,企業のバランスシートを圧迫する一つの要因となっている。
また,バブル期に銀行による不動産融資が中小企業に対しても大規模に行われていたことを踏まえると,大企業の銀行借入依存の低下の結果,銀行の中小企業に対する貸出競争が激化し,銀行の企業に対する交渉力は中小企業に対する交渉力も含めて低下していた可能性があろう。
2. 企業統治構造の空白
(バブル期に空白を迎えたガバナンス構造)
以上見てきたように,バブル期の企業は,おりからの資産価格の急上昇のもとで,金融自由化を背景とした企業の資金調達の間接金融から直接金融へのシフト,金融機関における貸出競争といった特殊な要因が絡み合って,使途について外部からのモニタリングがなされない資金を大量に保有するに至った。この時期は企業経営を外部から規律づけるメカニズムが機能せず,日本のコーポレートガバナンスは空白の時期を迎えていた可能性がある。特に,メインバンクの役割は,この時期少なくとも大企業に対しては効率化を促す方向に作用してはいなかった。こうしたバブル期の負の遺産の後遺症が長期にわたって経済全体の足を引っ張り(注6),現下の経済の停滞にまでその影響が及んでいると考えられる。
(機能していない市場によるガバナンス・メカニズム)
金融自由化を背景として企業の資金調達構造に間接金融から直接金融へのシフトがみられたが,そこで疑問となるのは,企業の資金調達先としてのウエイトが上昇し重要性が高まった株式市場や証券市場において,企業経営に対する規律づけのメカニズムがなぜ十分に働かなかったのかという点である。
日本の株式保有構造の特徴として,事業法人間や事業法人と金融機関の間で安定的な株式持合い構造が形成されている点が指摘される。こうした,株式持合いの形成は短期的に株価が下落したときの企業買収のリスクを低減させ,長期的な視野に立った経営を実現しうるような構造を経営者に担保してきた。その一方で,株主の企業経営に対する規律づけのメカニズムが,株価や配当の変動に対して感応的でない安定的な株主の存在によって弱められ,企業経営の効率性について株主が十分にチェックできないといった問題点が指摘できる。
株式保有構成と企業経営の効率性との関係をみても(前掲第2-5-2図),安定的と考えられる金融機関や事業法人の持株比率だけでなく,相対的に安定的でないと考えられる個人や外国法人の持株比率も経営の効率性に対して有意な結果がえられていない。この結果は安定的な株主が大きなウエイトを占めており,安定的でない株主の経営に対する発言力は強くないため,安定的でない株主の存在が,企業の経営効率の改善に寄与するに至っていないことを示唆している。
株式持ち合いは,企業が長期的な視野に立った経営を行うことを可能とする側面を有する。しかしながら,競争の激化などによって企業の売上げが大きく変動するような場合に,経営者がそれに対するリスク管理を十分に行わず収益率が低下しても,非効率な経営が維持されてしまう可能性がある。これを投資家サイドからみると,非効率な経営が投資家の意に反して行われても,その改善に影響力を行使できない環境にあるため,影響力を行使できる場合に比べて株式保有のリスクを高めることになろう。この結果株価は下落し企業は高い資金調達コストに直面することになる。
(変化の兆しが見られる株式持合い構造)
しかしながら,近年こうした株式持合い構造に変化の兆しが見られている。近年の上場企業の発行株式の所有者分布状況の推移をみたものであるが,これによると①事業法人の発行株式については,銀行による保有比率は特に長銀・都銀・地銀においてやや低下してはいるもののバブル期以前の比率が維持されており,また事業法人による保有比率についても大きな変化は見られない(第2-5-3表)。一方,②金融業の発行株式の保有状況をみると,銀行が特に信託銀行を中心に保有比率をむしろ高めているのに対し,事業法人は明らかに保有比率を落としている。③金融機関のうち銀行の発行株式に限ってみても同様である。これらの数値は2社間で相互に株式を持ち合うという狭い意味での持合いの状態にない株式所有などをも多く含んでいるものの,持合い株式についてもある程度同じことがいえるとみられ,金融機関は金融機関同士の持合いは維持しつつ,バブル時に保有比率を高めた事業法人株式を一部手放している一方,事業会社は事業会社同士の持合いを維持しつつ,金融機関株式を手放している傾向を明確にしていることがわかる(注7)。こうした動きの背景には,第一にバブル崩壊に伴って銀行の株価が大きく下落し株式保有のリスクが大きく高まったこと,第二に大企業の銀行に対する借入依存が低下してきたこと,第三に不良債権問題を抱える銀行のリスクテイク能力が下がっているとみられること,などから企業が銀行の株式を保有し続けるメリットが低下したことがあると思われる。
(漸進的な変化を望む企業の意識)
こうした状況の下で,企業は日本的経営システムについてどのように受け止めているのであろうか。経済企画庁「平成9年度企業行動に関するアンケート調査」によると,コーポレートガバナンスに関与する主体について,これまで日本的経営システムを支えてきた内部昇進による経営陣やメインバンク等の「従来からの主体」が中心となることが望ましいとする企業が全体の80.0%と大半を占めた。また,「従来からの主体」の中でも,メインバンク等については,「現在影響力が強い」とする企業や,「今後影響力が強まる」とする企業が半数以下に止まっているのに対し,内部昇進による経営陣については,「現在影響力が強く,今後影響力が強まる」とみる企業が過半を占めている(第2-5-4図)。
他方,一般株主や機関投資家等,「新たな主体」の影響が強い状況が望ましいとする企業は20.0%と少数に止まっている。企業は「従来からの主体」の関与するコーポレートガバナンスのメリットとして,「長期的な視点からの経営が可能」,「内部昇進者の専門的知識,経験が十分活用できる」,「安定的な取引先(金融機関を含む)の確保が可能」といった点を挙げており,このような理由から内部昇進による経営陣を中心とした「従来からの主体」によるコーポレントガバナンスを望ましいと考えていると思われる。
このように,企業は内部昇進による経営陣が引き続きコーポレートガバナンスの中心になることが望ましいと考えていることから,引き続き安定的な株式保有工作を企業側は試みるものとみられる。株式持合いに代わる安定的な株式保有のメカニズムとしては,企業による自社株取得等の制度が考えられる。自社株取得は,浮動株主を減少させて安定株主を形成することが可能であるという点が指摘できる。今後,こうした制度を企業が使いやすい環境が整備されれば,収益性の低い株式持合い先の株式の売却により株式持合いの一部は解消の方向に向かう可能性があろう。
一方,5年後に新旧いずれの主体の影響が強くなっているかについて,「新たな主体」を挙げる企業も37.5%となっており(注8),特に一般株主の影響力が今後強まると見ている企業は半数を超えている(第2-5-4図再掲)。そして,新たな主体がコーポレートガバナンスに関与することのメリットとしては,「経営に関する意思決定について外部からの透明性が確保される」,「大胆な事業の再構築を行うのが容易」,「迅速な経営方針の変更が容易」といった点があげられている。
近年みられるようになった株主代表訴訟の動向をみても,株主の企業経営への影響力は今後一層強まるものとみられ,企業の意識は従来と比較してより株主重視の方向にシフトするものと考えられる(注9)。
企業をより株主重視の経営に向かわせる要因としては,これに加えて長期にわたって株価が低迷を続け,企業の資金調達コストが上昇したことが挙げられよう。期待成長率が鈍化し限られたマーケットを巡る競争が激化するとともに,製造業のみならず非製造業においても資本の流入を通じて競争が世界大のものとなっていく中で,今後は,財やサービスの供給面のみならず,財務面での効率性,すなわち資金調達コストにおける競争もますます重要性を帯びてこよう。
3. 今後の経営システム
(求められる会計制度の充実)
第1章第4節でみたように,倒産した企業のバランスシートを倒産前と比較すると,バランスシートの毀損が大規模に起こるケースがみられる。これが生ずる要因としては,会計制度上の問題点が指摘できる。第一に,企業の保有する資産のうち特に土地や有価証券については,原価法による評価が原則となっているため(注10),バブル崩壊による地価や株価の下落が企業の公表するバランスシートには必ずしも反映されていないという問題である。もっとも,投機等の目的で購入したものであればともかく,企業が保有する土地の時価をバランスシートそのものに反映させることの妥当性については論議のあるところである。第二に,バブル期に企業は子会社を多数設立して事業の多角化を図ったが,そうした関係会社が連結決算の対象となっていない場合,関係会社に対する貸付金やバランスシートに記載されない保証債務などが,倒産した際に不良資産や債務となっていれば一気に顕在化するといった問題である。こうした問題については,資産の時価を考慮したバランスシートや関係会社を含めた連結決算の実施によって情報の開示が可能となることから,この実施が強く求められよう。
現下の局面はバブル後遺症の清算が依然として続いていることから,企業の健全性を見る上では,フローの収益の大小のみならずに,資産・負債の関係などが注目されているといえる。ところが,現在の企業は十分な情報を市場に開示していない場合も多く,企業経営者と投資家の間の情報の非対称性(注11)は拡大しているものとみられる。この結果,投資家は個別企業に対する評価が困難になり株式保有にかかわるリスクプレミアムを従来以上に高めるため,株価は下落し資金調達コストを引き上げる可能性がある。
バブル崩壊に伴って金融機関の体力が低下し,直接金融市場の重要性が高まっているもとでは,企業が資金を円滑に調達するために市場に対し積極的に情報を開示し,株主の信頼を確保していくことが不可避となっているのである。
(今後の経営システムとは)
以上でみてきたように,80年代後半のバブル期には企業経営に対する外部からの規律づけのメカニズムが機能せず,日本のコーポレートガバナンスは空白を迎えた。その後遺症は現在の景気の停滞にまで及んでいる。バブル崩壊後は株主利益を重視した企業経営を志向する動きが見られる。しかし,企業の意識は,従来と比較すると株主重視の経営に移行する方向性がみられるものの,引き続き内部昇進による経営陣を中心にしたコーポレートガバナンスが主流を占めるというものが多い。
企業の売上げが大きく変動するといった経営環境の変化や,大幅なリストラを迫られるような大規模な構造変化が生ずると,従来以上に迅速で柔軟な企業の意思決定が,利潤を追求する上で求められることになろう。長期にわたって株価が低迷している背景に,過去経験しなかったような経営環境の変化に企業の意思決定が即応しきれなかったことがあるものと考えられる。株式持合いなどの株主安定化工作は容易には崩れないとしても,経営者が株主利益を重視しつつ経済環境の変化に対応した機動的な企業経営を行いうるような環境を整備していくことが最低限求められているといえるであろう。
立ち返って,経済システムは「効率的な資源配分が迅速に達成されること」を目標に構築されるべきものといえる。特に近年経済全体の資本の収益率が低下している局面においては企業が投資家に対し自分の価値を適切に開示することにより,「投資家が投資先のリスクを判断するための情報を的確に得られ,実行した投資に対する責任を適切に予測できる透明性の高い仕組みを構築すること」の重要性が高まる。
投資家は高い配当を得るか,あるいは会社価値が高まり,株価が高まることを期待する。このため,企業は収益性を重視した経営を行うこととなるが,その収益性を高める方策については,近い将来を見据えた経営戦略と,長期的な視点に立った研究開発などをどう組み合わせるのか,規模拡大・シェア拡大を狙うのか,規模縮小・コスト削減を狙うのか,人的リストラクチャリングを行ってより生産性を高める戦略をとるべく労働者と交渉するのか,従業員を解雇しない方がむしろ生産性が向上するとみるのか等に関し,特に重要な問題については,経営者と投資家との間で適切にコンセンサスをとるべきである。
金融の自由化・国際化を背景に,過去においては企業間で資金調達コストの差があまりなかったのが,企業の経営リスクないしは倒産リスクの差や,これに基づく格付けによって格差が拡大しており,企業の競争力を規定する大きな要素となっている。資金調達コストをいかにして下げるかが,企業経営の重大な目標となったということである。そうした状況においては,収益性の重要な尺度としてのROEやROAを高めることは,資金調達コストを引き下げる上でも重要となり,企業が利潤最大化を求める過程でROEやROA重視の経営の重要性が一層増しているといえよう(注12)。