はじめに
本経済白書は,まず景気の現状が,政策に支えられた回復から民間需要中心の自律的回復過程への移行をほぼ終了しつつあることを示した後,なお残る日本経済の直面する主要な不確実性について検討し,早急な「バブルの清算」と,構造改革による「発展基盤の再構築」の必要性を説く。
まず,景気の自律的回復過程が動きはじめていることを述べるとともに,なお当面留意すべき点として,消費税率引上げ等財政面からの措置の影響,金融関連指標の弱さの実物経済への影響,等を分析する。
また,景気回復に力強さが乏しい原因として,第一に,各経済主体がバブル期の過剰投資の後遺症として悪化したバランスシートの改善への取組みを迫られていることを挙げ,「バブル崩壊の清算」が現段階でどの程度進展しているのかを検証する。
第二に,問題は現下の景気循環の上昇局面を中長期的な安定成長軌道につなげていくことができるかどうかである。この面から,日本経済の中長期的発展の方向に企業や家計が不確実性を感じ,多くの経済主体が長期的観点からの投資に慎重になっていることを取り上げ,産業調整の課題,規制改革や金融・資本市場の改革等の在り方を論じ,リスクを積極的にとることによって将来の日本経済の「発展基盤の再構築」を行うべきときであることを示す。