第2章 円高下の国内産業調整とサプライサイド

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我が国経済はこれまで高い生産性の上昇等を背景に石油危機や円高などのショックを乗り切ってきた。しかしながら最近の急激な円高,さらにはアジア新興国・地域の急成長を背景に,日本経済を取り巻く競争条件はますます厳しくなっている。本章では1ドル=80円台を経験した日本の産業が直面する諸問題を構造面から分析するとともに,日本経済の中期的成長持続性を規定すると考えられるサプライサイド面を分析する。本章の基本的テーマは,果して我が国産業は最近の急速な円高を再び克服することができるのだろうか,そのための条件は何か,である。

まず第1節では我が国産業の価格競争力はどの程度低下しているのか,その主たる要因は何か,円高の影響はどの程度かという点を概観した後,第2節ではそのような価格競争力の低下は産業別にどうなっているのか,特に現実の為替レートと産業別の均衡為替レートのかい離はどの程度産業別の価格競争力と関係しているのか,またその背景にある賃金と生産性の産業別特色は何かといった点を分析する。以上の点を踏まえ,第3節では,内外価格差問題をマクロ面からどうみるかという点を分析する。さらに,第4節ではいわゆる「産業空洞化」問題を貿易,直接投資,雇用からどうみるか,また,貿易と賃金調整の現状も分析する。また,第5節ではいわゆる「金融空洞化」問題を取り扱う。以上の点を踏まえ,第6節ではこれまでの度重なる円高を乗り切ってきた我が国産業の比較優位構造のこれまでの変遷とそれを規定する生産要素は何であったのかを分析した後,今後の日本の産業のダイナミズムの復活を考える上で重要な要素であるマクロのサプライサイドの現状を資本,労働,貯蓄の面から分析する。そして最後の第7節では日本経済のサプライサイドを技術面から分析するが,特に日本の技術水準の現状を先進国とアジアNIEsとの対比で概観し,またいわゆる「技術空洞化」問題を取り上げる。

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