平成3年
年次経済報告
長期拡大の条件と国際社会における役割
平成3年8月9日
経済企画庁
89年度の国内貨物輸送の動向をみると,第6-1表②のとおり総輸送トン数は65億トン(前年度比5.8%増)と87年度以降3年連続して増加し,輸送距離を加味した総輸送トンキロでも5,134億トンキロ(同6.3%増)と86年度以降4年連続の増加となった。
輸送機関別にみると,JRは輸送トン数で前年度比0.2%増,輸送トンキロで7.1%増となっている。
自動車は営業用自動車が輸送トン数で前年度比6.7%増,輸送トンキロで同8.O%増と,前年度より伸び率はやや落ちるものの,堅調に伸びている一方,自家用はそれぞれ4.8%増,4.2%増と前年度の伸び率をかなり下回り,全体でそれぞれ5.6%増,6.8%増と前年度を下回る伸びとなった。
内航海運は,輸送トン数で前年度比9.1%増,輸送トンキロで同5.7%増と,前年度を上回る伸びとなった。このうち,貨物船はそれぞれ10.1%増,4.5%増,油送船はそれぞれ5.0%増,7.5%増となっている。
航空は,輸送トン数で前年度比8.5%増,輸送トンキロで同9.1%増と,トンベースでは前年度の伸びを下回ったものの,トンキロベースでは上回る結果となった。幹線・ローカル線別トンキロをみると,幹線は前年度を少し上回る伸びであったのに対し,ローカル線は前年度比12.O%増と,幹線に比べ大きな伸びを示した。
以上の結果,89年度の輸送機関別国内貨物輸送トンキロ分担率をみると,前年度に比べ鉄道は前年度と同じ4.9%,自動車は0.2ポイント増の51.2%,内航海運は0.2ボイント減の43.8%,航空は0.1%となった。
89年度の国内旅客輸送をみると,総輸送人員は,773億人(前年度比5.6%増),総輸送人キロは1兆2.670億人キロ(同6.4%増)となった(第6-1表)。
これを輸送機関別にみると,JRは輸送人員が前年度比2.7%増,輸送人キロが同2.3%増と,前年度の伸びに比べ鈍化はしたものの,いずれも国鉄時代から引き続き7年連続の増加となり,堅調に推移している。このうち新幹線については,全体では輸送人員が2億3.654万人(前年度比3.9%増),輸送人キロが659億6.453万人キロ(同1.O%増)と,前年度に比べ伸び率は低がったものの(前年度それぞれ9.7%増,12.1%増),定期旅客ではそれぞれ34.1%増,35.4%増と前年度を大きく上回った。他方,民鉄(JRを除く。)は輸送人員が前年度比1.9%増,輸送人キロが同1.3%増となった。これらの結果,JR,民鉄を合わせた鉄道の合計では,輸送人員が前年度比2.2%増,輸送人キロが同1.9%増となった。
自動車は輸送人員が前年度比6.9%増,輸送人キロが同8.1%増となった。このうち,自家用乗用車はそれぞれ10.2%増,11.5%増と堅調な伸びを示したのに対し,バスはそれぞれ0.4%増,1.8%増,営業用乗用車はともに0.8%減となった。
航空は,輸送人員が前年度比13.6%増,輸送人キロが同14.7%増と大幅に増加した。路線別では幹線は輸送人員が前年度比12.5%増,輸送人キロが同13.2%増,ローカル線(4それぞれ14.2%増,16.2%増と,ともに前年度実績を大きく上回った。また,座席利用率をみると全体で前年度に比べ,5.6ポイント増の70.2%となった。
旅客船は89年度,輸送人員が前年度比2.1%増,輸送人キロが同5.0%増と増加に転じた。
以上の結果,89年度の輸送機関別国内旅客輸送人キロ分担率は,前年度に比べ鉄道が1.3ポイント減の29.1%,自動車が1.0ポイント増の66.7%,航空が0.2ポイント・増の3.7%,旅客船は横ばいとなった。
90年の我が国の国際海上貨物の動向は,トンベースで輸出が7,040万トン(前年比0.4%減),輸入が6億9,910万トン(同2.3%増)であった(第6-2表①)。
このうち,我が国商船隊(外国用船を含む。)の輸送量は,輸出では日本船輸送量が大幅に減少したものの,外国用船輸送量が前年度比3.6%増となったため,同0.4%減にとどまった。輸入では日本船輸送量が減少したものの,外国用船輸送量が大幅に増加したため,前年度比2.1%増となった。我が国商船隊の積取比率は輸出では前年と同じ46.8%,輸入では前年度比0.1ポイント減の67.2%となった。
また,日本船のみの輸送量をみると,輸出では前年度比18.6%減となったため積取比率は1,5ポイント減の6.9%,輸入では同10.5%減となったため積取比率は4.1ポイント減の28.6%となった。
89年度の我が国をめぐる国際航空輸送は,輸出入ともに大幅に増加した。89年度の国際航空による我が国の貨物輸送量(継越貨物を除く。)は,輸出はトンベースで47万トン(前年度比10.0%増),ドルベースで423億ドル(同5.5%増)となり,輸入はトンベースで67万トン(同13.5%増),ドルベースで466億ドル(同12.0%増)と大幅な増加となり,トンベース,ドルベースとも輸入が輸出を上回っている。このうち我が国航空企業(4社)の輸送活動をみると,トンベース(継越貨物を含む。)では輸出が25.8万トン(前年度比6.1%増),輸入が33.5万トン(同9.6%増)となり,積取比率は輸出が前年度と同じ39,4%,輸入が前年度比0.1ポイント減の38.8%となった。また,国際航空旅客輸送量を我が国航空企業(4社)についてみると(第6-2表②),輸送人員が1,051万人(前年度比7.6%増),輸送人キロが499億人キロ(同6.6%増)と堅調な伸びとなった。
90年度の総引受郵便物数は,228億1,500万通で前年度比6.1%増となった(第6-3表①)。
また,90年度の小包郵便物数は前年度比18.1%増の3億5,100万個となり,年賀郵便物は前年度比2.4%増の35億1,000万通となった。
郵便事業財政は,各種のサービス改善や積極的な営業活動等により郵便業務,収入の増加を図るなどして健全に推移し,利益を計上した(第6-3表②)。
90年度における国内の電信電話サービスの状況をみると,加入電話等契約数は208万増加し,5,453万加入となった(第6-4表①)。また,公衆電話機数は83万個である。一方,電報通数は112万通増加し,4,450万通となっている。
また,総合ディジタル通信サービス(ISDN)については,90年度末で,基本インターフェースによるサービス(INSネット64)が27,313回線,一次群インターフェースによるサービス(INSネット1500)が560回線という状況である。
さらに,近年めざましい増加を示しているサービスとして,キャプテン・サービスがあり,90年度末の利用契約数は111,292と前年度比8.8%増となっている。
90年度上半期の我が国の国際通信の状況をみると(第6-4表②),国際電話の発着数は,前年度上半期に比べ3,700万回増加し19,146万回となっているが,国際電報,国際テレックスの発着数はそれぞれ5万通,192万回減少し,31万通,874万回となっている。
85年4月1日の電気通信事業法の施行によって,電気通信事業分野への新規参入が可能となり,91年6月1日現在自ら電気通信回線設備を設置して電気通信事業を行う第一種電気通信新事業者として67社(NTT,KDDを除く。)が許可されている。これらの企業はマイクロ無線,鉄道,道路空間を利用した光ファイバー通信や衛星通信等により事業を行うものであり,これにより,国内を対象とする第一種電気通信事業分野は日本電信電話株式会社(NTT)による独占状態から多数の事業者による競争という新しい時代に入り,高度情報社会の実現へ向けて大きな一歩を踏み出すこととなった。
また,第一種電気通信事業者から回線設備を借りてサービスを行う第二種電気通信事業分野についても,91年6月1日現在954社が参入し,放送系ニューメディアの実用化とも相まって,これら多様な情報通信サービスの提供により産業構造の高度化,豊かな国民生活の実現,国土の均衡ある発展に資することが期待される。