昭和46年

年次経済報告

内外均衡達成への道

昭和46年7月30日

経済企画庁


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第2部 経済成長25年の成果と課題

第1章 戦後25年,日本経済の到達点

(3) 国際収支基調の転換

経済成長は,国際競争力の強化によつて,国際収支の赤字を克服させる効果をもつた。

(赤字克服の4段階)

いま,戦後25年の国際収支変遷の過程をふりかえつてみるといくつかの段階にわけることができる( 第74表 )。第1は復興期(終戦から昭和27年ごるまで)である。この時期は貿易収支の大幅赤字が,前半では米国援助(移転収支),後半では朝鮮動乱による特需(貿易外収支)によつてまかなわれた。第2は経済自立達成期(28年ら32年ごろ)で,特需なき均衡を目ざして近代化と技術革新投資が行なわれた時期であつた。しかし,援助や特需が減少するもとで,国際収支はなおかなりの赤字基調であつた。第3は,高度成長と開放体制への移行期(33年から39年ごろ)である。この時期には,貿易収支は黒字に転換したが,貿易外収支や移転収支が赤字になつたため,国際収支の基調はそれほど強まらなかつた。むしろ,高度成長と国際収支はなおトレードオフ(二律背反)の関係にあつた。第4は,昭和40年代にはいつてから最近までの時期である。この時期の特徴は,対外援助増大によつて長期資本収支が急速な赤字を示し,わが国が資本輸出国に転換した一方,基礎的収支はもつぱら貿易収支黒字によつてささえられるようになつたことである。

この時期の国際収支は昭和42年にいつたん赤字となつたが,その後は黒字基調に変わり大幅な黒字がつづいている。

(輸出増大とその意味)

以上のような諸段階をへて,日本経済はようやく国際収支赤字から脱却し,いわゆる「赤字と失業のジレンマ」はすでに過去のものとなつた。国際収支赤字克服には,輸出の増大が大きく影響している。昭和45年度の輸出額(通関)は200億ドルを超えて,アメリカ,西ドイツに次ぐ世界第3位となつた。輸出が100億ドルを超えたのが42年度,50億ドルを超えたのが37年度であるから,このところ3~4年間で輸出規模が倍増してきた勘定になる。

このような著しい輸出増大は,近年の世界的なインフレの進行がとくに海外需要を高め,わが国の競争力を価格面において相対的に強める働きをしたことによる面もあるが,同時にわが国の近代化投資や輸出努力が高度成長過程で大きな効果をあげてきたことによるものである。しかし,いまや国際収支黒字が増大しつつあるわが国は,世界の経済秩序への積極的貢献と内外資源の適切な配分という見地に立つて,国際経済活動の体系を新たなものに転換していく必要に迫られている時期にある。


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