昭和38年

年次経済報告

先進国への道

経済企画庁


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昭和37年度の日本経済

国民生活

消費構造の高度化続く

 消費構造高度化の傾向は37年度にも引き続き進行している。都市世帯における消費支出構成比をみると食料品の値上がりが著しかったにもかかわらず、エンゲル係数は36年度の37.5%から、37年度には36.6%へとこれまでの低下テンポが維持された。また住居費の比重は前年度に引き続いて、雑費は34.1%から34.9%へと比重を高めている。更に都市世帯の食料構成をみると、これまで魚、肉、乳卵等の「動物性食品」の割合が増してきているが、37年度には26%と、「穀類」のそれ(24%)をもしのぐに至り、食生活の改善が進んでいることを物語っている。

 また家具器具の伸びも都市14%増、農村16%増と堅調に推移した。これはいうまでもなく、電気器具を中心とする耐久消費財の伸びが著しかったことに上がるものである。経済企画庁「消費者動向予測調査」(38年2月)によれば、主要耐久消費Mの購入率は都市世帯では石油ストーブが最も高く、次いでテレビ、電気こたつ、扇風機、電気冷蔵庫等の購入も引き続き極めて盛んであった。またテープレコーダー、オルガン、カメラ等の娯楽品の購入も着実に伸びている。一方農家の購入滋ではテレビが最も大きく、次いで自転車、オートパイ、スクーター等が目立っている。

第11-3表 費目別消費の対前年度増加率

 また、所得水準の上昇によって購入層は高所得層ばかりでなく低所得層に至るまで層が厚くなってきている。とりわけ37年度における家計調査5分位階層別の家具器具の伸び率をみると、高所得層では対前年度比約10%前後の増加であるのに対して、低所得層では約50%もの激増ぶりであった。

第11-2図 5分位階層別テレビ購入率

 しかし、これまで耐久消費財の三役であったテレビの購入率は農村や低所得層の分野でもピークに達し、需要は既に一巡した点が注目されよう。

第11-3図 都市、農家別テレビ購入率と普及率

 一方、「教養娯楽費」「交通通信費」等の消費支出の伸びも対前年度比約2割増で、いわゆるレジャー関係の支出が活発であった。上掲の「予測調査」によっても過去1年間に都市、農家とも約6割の世帯が1泊以上の慰安、観光旅行をし、今後1年間の旅行計画をみても旅行回数を増やすというものが相変わらず多いということが示されている。

 以上の種目別消費動向を産業別に組み替えたものでみると、工業消費財、サービス関係産業の伸びが著しく、反面、農林水産物産業の伸びが停滞している。また3部門別実質消費の推移を前2回の調整期と比較してみると、今回は農林水産物が低下しているのに対して、工業消費財、サービス関係の消費の増勢は年度後半になって伸び悩んだものの、前2回のそれよりは強調であったという点が特徴的である。これにはレジャー関係消費が活発にたってきていることや、低所得層を中心に所得が改善されるに伴って家具、器具に対する消費意欲が促進されたことを反映したものといえよう。このように第2次産業部門生産物の消費が堅調であったことが、とりもなおさず今回の調整期における鉱工業生産の下降を支える1つの要因になったといえよう。

第11-4図 産業部門別実質消費の推移


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