昭和38年

年次経済報告

先進国への道

経済企画庁


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昭和37年度の日本経済

建設

労務・資材と機械化の動向

 前述したように建設投資拡大のテンポは低下したものの、工事量の増加と工事内容の著しい変化は、建設業の業容の拡大をもたらした反面、施工技術や企業経営に多くの問題を投げかけている。

労務費の上昇

 第4-4表 は、建設業での雇用・賃金の伸び率を全産業の伸び率と比較したものである。37年度の雇用者数の伸びは25%、賃金上昇率は13%で、いずれも全産業のそれを上回る大幅なものであった。

第4-4表 雇用・賃金の伸び率

 36年度下期から37年度にかけては、金融引き締めによる景気後退の時期であるにもかかわらず、建設業での賃金上昇は特に著しい。これは、35年以降労働需給がひっ迫していたが、37年にもあまり緩和されなかったことと他産業の賃金水準へ追いつくための賃金引き上げ圧力が大きかったためである。建設業の賃金水準は、1人当たりの平均月間現金給与額でみれば、36年を境として、ほぼ全産業平均に近づき、37年には製造業の水準を超えている。しかしこれを持って建設業における賃金上昇のテンポが今後緩和されると楽観することばできない。名目的な賃金水準でみれば既に他産業との格差は解消しているものの、作業の内容がほとんど男子による重労働であることや、最近にみられるような深夜就労の増加等労働の質的な面を考慮すれば、現在の賃金水準ではまだ工事量の消化に必要な労働力を確保することにはなお困難が残っている。

 また労務者の不足は、労務管理及び労働環境の不備に起因することも多いので、労働関係法令の厳守と福利厚生施設の整備社会保険の加入等建設労務者に安定感を与えうる職場環境を作ることが必要である。更に技能労務者不足の対策としては職業訓練の拡充、広域職業紹介の強化、あるいは産業開発青年隊(28年度発足)の活用等による技能者の養成が期待されよう。

資材の値上がりと資源の枯渇

 工事量の増加に伴い、建設業での鋼材、セメント、木材等の資材使用量は年々増大しており、その安定した供給が望まれている。主要資材のうち、鋼材などの工業製品は、供給力の増加も著しいので、卸売価格も37年には低下したものが多く、木材もかなり安定した需給がみられた。

 しかしこれに反して、砂利、砂、砕石等骨材の需給は極めてひっ迫した状態を続け、価格の上昇と大都市周辺での資源枯渇が将来の大きな問題となる懸念を生じている。

 通産省の推計による37年度の砂利使用量は、1億6,000万トンと見込まれ、30年度の約2.7倍にも達している。従来から砂、砂利等の生産量の大半は河川に依存しているが、河川の改修、ダムの築造などによって資源は急激に減少し、需給関係はますます悪化している。

 このため最近では採取地の遠隔化による輸送費の上昇と、交通問題などの悪影響も目立っており、河川砂利に代わる砕石、あるいは高炉かすによる人工骨材等の開発が急務となっている。

機械化の進展

 建設業の機械設備投資は依然大幅に増加している。建設工事施工統計によれば、 第4-5表 にみるように、37年の機械取得額は前年より31%増加し、実質価格でみても34年以降年々30%以上の増加を示している。またその増加は機械装備の遅れていた中小企業において著しい。なお建設省が37年に行った「建設業者の機械化への意向調査報告」によると、現在以上に機械化を必要とする業者数は調査の対象となった5,513業者の約80%に達しており、建設業での設備投資意欲は極めて根強いことがうかがわれる。

第4-5表 建設機械取得額の推移

 第4-6表 は、工事規模の拡大によって、単位工事量の消化に要する労働量の節減を示すものである。例えば、35年度の建設工事のうち、規模が5億円以上の工事の消化に要する労働量は、規模100万円以下の工事に要する労働量の37%となっていたが37年10~12月期にはこの比率が32%に低下しており、この数年間に一層労働量の節約が進んでいることが看取される。

第4-6表 単位工事額の施工に要する労働量の変化

 これは、大型工事の増加を契機とする機械の導入が建設業の生産性向上に貢献していることを示すものといえよう。

技術の導入と開発

 新しい技術開発の中心が、外国技術の導入にあったことは建設業も他の産業と同様である。

 技術導入の効果を量的に把握することは困難であるが、例えば、施工実績の多いプレパクトコンクリート(米国)、P.S.コンクリート工法(仏・独)などは、昭和27年~28年に導入され既に相当量の施工実績がみられる。また最近では、鉄道橋や都市の中心部の道路に採用されているデイビイダーク工法(独)等注目すべき技術が導入されている。

 更に、ダム建設、トンネル工法の技術導入に開通する建設機械やガラス、合成木材などの建築資材部門でも、新製品の開発が進んでおり、これらが総合された建設工事の合理化効果は最近特に著しいものがある。なお、国産技術あるいは個々の建設業にとって自社技術とみられるものは、35年以降についてみても、特許、実用新案を合わせ毎年8千件以上に達する出願状況からその意欲がうかがわれる。

 今後の研究、開発のテーマとしては、建造物の工費や安全性と関連の深い基礎工法研究と新しい資材の開発にウェイトが置かれており、他の産業部門との共同開発方式を採用するケースが多い。


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