昭和38年
年次経済報告
先進国への道
経済企画庁
昭和37年度の日本経済
建設
37年度の建設活動
37年度の建設活動を、建設省調べの「建設工事費の推計」( 第4-1表 )によって概観すると、総額約3兆5,000億円、対前年度比9%の増加で、34年度以降平均30%をこえる飛躍的な増加を続けていたのに比べるとその拡大テンポは著しく低下している。
このような37年度の建設工事費の伸び率低下は、工事費の推計が、主として着工ベースに近い統計に基づいていることにもよるが、その主要因は民間設備投資の停滞を反映した、非住宅建築工事の減少によるものである。
すなわち、建設工事費の内容をみると、土木工事費は1兆5,300億円で、36年度に比べ15%の増加率を維持したが、建築工事費は2兆100億円で4%の増加に過ぎなかった。このため構成比は、土木43%、建築57%となり、建設工事全体に占める建築部門の比重は36年度より2%低下している。しかも建築工事のうちでも住宅建築は、前年度比15%増加しているが、非住宅建築工事は15%の減少を示している。
次に建築工事、土木工事それぞれの内容をみることによって、37年度の建設工事の特徴に触れてみよう。
まず住宅建築についてみると、民間建設分が前年度比15%増、公共建設分は17%増といずれも堅調な伸びを示し、特に公営住宅の伸び率は21%と著しかった。しかし 第4-2表 の建築着工統計による住宅着工床面積の伸び率でみると前年度のわずか6%増に過ぎない。このことは不燃住宅等の質的向上もさることながら、労務費の上昇や資材の値上がりなど建築コスト面から工事費が名目的に増大していることを裏付けている。
土木工事についてみると、公共事業が7,700億円で前年度比29%の大幅な増加を示した他、地方開発の進ちょくを反映した地方自治体による公共土木工事の増大が目立っている。また、鉄道、電信、電話などの公益事業部門や上水道・公共用地造成などの財政支出に依存した部門での伸びが大きい。しかし土木の中でも民間による工業用地造成や埋め立て工事は前年度に比べ9%減少し、民間非住宅建築とほぼ同様な動きを示した。
次に大手建設業46社の工事受注額を発注者別にみると 第4-1図 のようになる。ここでは、民間の大型工事の不振を、財政支出の拡大に依存した公共工事の増加によってカバーし、景気調整の影響を全体として軽微なものとしたことがあきらかである。
公共投資の拡大が、景気調整下の建設活動を高水準に推移させたことは32~33年の場合にもみられた現象である。 第4-3表 によって前回と今回の景気調整期における建設工事着工の動きをみると、民間工事の着工水準はいずれも停滞ないし減少傾向がみられるのに対して、公共工事はほぼ前年同期を上回る水準に推移している。しかし引き締め解除以降の働きをみると、今回は前回よりも民間建築着工水準の回復がやや遅れている。