昭和35年
年次経済報告
日本経済の成長力と競争力
経済企画庁
昭和34年度の日本経済
建設
地域計画の現況
経済発展が各地域の間に適当なバランスを保って行われることは、長期的に安定した成長をもたらす重要な条件の一つとして、近年次第に大きく取上げられるようになった。
我が国の地域開発は、昭和25年制定の国土総合開発法に基づく21地域の特定地域開発計画の外、北海道総合開発計画等があったが、昭和33年に東北地方、34年度に九州地方の開発促進計画が策定され、本年度に入ってさらに四国地方において開発促進法が制定されたほか、中国、北陸等他の地域においても同様の動きがみられる。このような地域開発計画は、主として後進地域開発の観点から公共部門の先行的な投資によって産業の基盤を整備し、これらの特に第二次産業の誘致育生を中心とする産業振興政策を講ずることによって地域の所得上昇を意図するものである。
このような動きと平行して臨海地域の埋立により、工場用地を造成する傾向も旺盛であって、関係各都道府県において意欲的に進められ年間400万~500万㎡の埋立が実施されており、地域開発公社の設立によりその促進を図っている府県も多い。国においても、これらの諸計画を総合的に調整し有効な利用を図る態勢について検討が進められている。
我が国の第二次第三次産業は、現在いわゆる四大工業地帯に集積しており、これらの地域は工業生産額の56%(31~33年平均値)また第三次産業所得の約40%(昭和30年)を占めている。こうした高い生産力に支えられて、四大地域は全国の32%にも及ぶ人口集中の下においても、なお所得水準は全国平均値を100として150を越え、その他地域の平均値86(昭和32年)をはるかに上回っている。他方それらの集積は、交通の著しい混雑や都市環境の悪化をもたらしており、また用地取得の困難、工業用水の不足、輸送施設の不十分等、種々の隘路が発生しており、工業用水過度汲上げによって著しい地盤沈下を惹起している地域もあり、これらの制約から中京地帯以外では、新たな工業は次第に既成地帯の外延部への拡大を指向するようになっている。
公共投資の分野においてもこれらの既成地帯の当面する隘路の打開に大きな努力が払われており、 第6-3表 にみるごとく道路、都市計画等の事業費は4大地帯における比重が漸次高まり、また人口の激しい流入に対応して公営住宅投資も同様の傾向がみられる。昭和33年度に作定された首都圏整備計画は過大都市的な様相の濃い首都を関東一円に及ぶ広地域の中で合理的に再編成し、既成市街地の拡大抑制と利用の高度化並びに衛星都市の分散配置を計画するもので、既に一部の衛星都市部において工業用地の造成と分譲が極めて成功裡に行われた事例にもみられるように、その成果には大きな期待が寄せられるのである。
しかしながら、これらの既成地帯における過度の集積と、その弊害に対処するためには、その地帯の隘路打開の外、全国的観点において適切な産業配置をもたらし、工業の地方分散を促進するような計画が要求されるのであり、前述の著しい所得の地域格差についてもその是正の方途はこの方向に見出されるであろう。従って従来の様々な地域開発計画は、このような全国的視野からのマスタープランによって統合調整されてその実をあげることが望まれる。