海外経済報告(平成11年4月四半期報)
概 観
1.主要国の経済動向をみると((図1、図2))、アメリカの景気は、先行きにやや不透明感がみられるものの拡大を続けている。ヨーロッパの景気拡大テンポは鈍化している。アジアの景気は、多くの国で後退しており、総じて厳しい状況にある。
アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は、98年7~9月期3.7%増の後、10~12月期は6.0%増となり、個人消費や民間住宅投資などを中心に景気は拡大を続けている。中南米の景気は、メキシコでは景気拡大テンポが鈍化し、ブラジルでは後退している。
ヨーロッパでは、ドイツの景気拡大テンポは鈍化している(10~12月期実質GDP成長率前期比年率1.5%減)。フランスでは景気拡大のテンポは緩やかになっており(同2.9%増)、イギリスでは景気は減速している(同0.3%増)。イタリアでは成長率がマイナスとなった(同1.1%減)。中・東ヨーロッパでは、ポーランドでは景気の拡大テンポは鈍化している。ハンガリーでは景気は拡大している。チェッコでは景気は後退している。ロシアでは景気は後退している。
アジアでは、中国の景気拡大のテンポはやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。アジアNIEsでは、台湾の景気拡大テンポは鈍化している。韓国の景気は底入れしたとみられる。香港、シンガポールの景気は後退している。アセアンをみると、インドネシア、タイ、マレイシア、フィリピンともに景気は後退している。
2.国際金融・商品の動向をみると、99年1~3月期の米ドルは、1月から2月にかけて総じて増価基調で推移し、3月に入り減価基調となったが、月末には増価する場面もあった (図3)。アジア通貨は総じて安定した動きとなっている。国際商品市況は、1月以降2月下旬までは下落基調で推移したが、その後上昇に転じた。原油価格(北海ブレント・スポット価格)は、1月から2月中旬まで総じて弱含みに推移した。3月に入り、23日のOPEC(石油輸出国機構)総会における追加減産合意の観測が高まると上昇に転じ、3月末には14ドル/バレル台まで回復した。
図3
(備考)
本報告では、北米、西ヨーロッパ諸国、オーストラリアの指標の変化率は、特に断りのない限り四半期データは季節調整値前期比年率、月次データは同前月比である。また、中南米、中・東ヨーロッパ、ロシア、アジア諸国の指標は、前年同期(月)比である。
1 南北アメリカ アメリカ、ダウ最高値更新
アメリカ:先行きにやや不透明感がみられるものの、個人消費や民間住宅投資などを中 心に景気は拡大を続けている。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸 出減の影響もあり減少している。物価は安定した動きとなっている。 |
アメリカでは、実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増(前年同期比3.5%増)の後、10~12月期は同6.0%増(同4.3%増)となった。引続き内需が堅調に推移した(10~12月期増加率寄与度5.5%)。外需は96年10~12月期以来のプラス寄与となった(同0.5%)。個人消費は、耐久財消費を中心に10~12月期前期比年率5.0%増となった後、1月は前月比年率2.5%増、2月は同8.8%増となった。小売売上は、自動車販売などが好調だったため、2月前月比0.9%増となった。消費者信頼感指数は、3月133.9と5か月連続で上昇している。設備投資は、10~12月期前期比年率14.6%増と、GMストの終結に伴う反動もあり、大幅に増加している。設備投資の先行的な指標である非軍需資本財受注(航空機・同部品を除く)は、2月前月比0.7%減となった。住宅投資は、低金利や高水準の消費者信頼感、堅調な所得の伸びなどを背景に10~12月期前期比年率10.0%増となった。住宅着工件数は1月前月比3.4%増の後、2月は同0.6%減となった。在庫投資は、10~12月期増加率寄与度0.5%減とマイナスとなっている。
鉱工業生産は、12月前月比0.2%増、1月同横ばいの後、2月は同0.2%増と伸びが鈍化している。また、設備稼働率は12月80.7、1月80.4の後、2月は80.3と低下傾向にある。雇用は、非農業事業所雇用者数が1月前月差21.7万人増、2月同29.7万人増の後、3月は同4.6万人増と拡大しているものの、製造業で3月同3.5万人減となるなど、輸出減の影響もあり減少している産業もみられる。他方、サービス部門は3月同13.5万人増と、引続き増加している。失業率は2月4.4%の後、3月は4.2%に低下した。民間非農業事業所の時間当たり賃金は、3月前年同月比3.4%増となった。物価は、消費者物価上昇率が2月前年同月比1.6%の上昇(消費者物価コアは同2.1%の上昇)、生産者物価(完成財総合)上昇率が2月同0.5%の上昇(生産者物価コアは同2.2%の上昇)と、安定した動きとなっている。
経常収支赤字は、10~12月期638億ドル(GDP比▲2.9%)と前期から縮小した。この背景としては、財の貿易収支赤字が輸出増により縮小したことが挙げられる。1月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は前月から29億ドル拡大し234億ドルとなり、依然として高水準にある。
金融面の動向をみると、3月の短期金利(TB3か月物)は、総じて低下している。長期金利(30年物国債)は、月半ばに低下する場面があったが、月を通じては横ばいで推移している(TB3か月物利回り3月平均4.57%(2月平均4.55%)、30年物国債利回り3月平均5.58%(2月平均5.38%))。3月の株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬に一時下落したもののその後再び上昇し、月末には1万ドルを突破した(NYダウ工業株30種平均の3月平均9,753.63ドル(2月平均比4.65%上昇))。マネーサプライ増加率(98年10~12月期対比年率)をみると、M2は2月7.7%増となっている。
カナダ:景気は拡大を続けている。 |
カナダでは、実質GDP(前期比年率)は、98年7~9月期1.7%増の後、10~12月期は在庫増もあって4.6%増となり、景気は拡大を続けている。個人消費は、10~12月期0.8%増と前期に引き続き伸びは鈍化している。民間投資では、設備投資は、10~12月期4.6%増、住宅投資は、前期のストライキの反動増もあり、同2.4%増とプラスになった。在庫投資は、自動車を中心に流通段階で、前期の取崩しを埋める在庫増から、GDP成長率への寄与度はプラス3.3%となった。なお、98暦年の実質GDP成長率は3.0%となり、97年(同3.8%)より鈍化したものの好調を維持した。生産は12月前月比0.8%増の後、1月同0.3%増となった。失業率はこのところ低下しており、10~12月期8.0%の後、1月、2月とも7.8%となった。物価は安定しており、消費者物価上昇率は、1月前年同月比0.6%、2月同0.7%にとどまっている。経常収支赤字は、10~12月期52.2億加ドル(GDP比2.3%)と、やや拡大した。財の貿易収支黒字(国際収支ベース)は、1月27.3億加ドル(12月15.5億加ドル)と大幅に拡大した。これは、輸出が米国景気の好調を映じて2.1%増加した一方で、輸入が2.2%減少したことによる。金融面の動向をみると、カナダ銀行は3月31日、公定歩合を0.25%引き下げ、5.00%とした。98年11月以来4か月ぶりの利下げとなった。
なお、カナダ大蔵省は2月16日、99年度(99年4月~2000年3月)予算案を発表した。97年度の財政黒字達成に続き、98年度以降も3年度連続で財政収支均衡を見込んでいる。
中南米:メキシコの景気は拡大テンポが鈍化している。失業率は低水準で推移している。 ブラジルの景気は後退している。失業率は高水準で推移している。 |
メキシコでは、実質GDP(前年同期比)は、98年7~9月期5.0%増、10~12月期2.6%増となり、景気の拡大テンポは鈍化している。需要項目別にみると、個人消費、総固定資本形成の伸び率低下が続いている。鉱工業生産は10~12月期前年同期比3.6%増の後、1月前年同月比1.4%増となった。
失業率は低水準で推移しており、2月3.2%となった。物価上昇率は高水準で推移しており、消費者物価上昇率は、2月前年同月比18.5%となった。経常収支赤字は、7~9月期に続き、10~12月期も46.4億ドルとなった。貿易収支赤字は、工業製品を中心に、輸出が輸入を上回る伸びを示したため、2月3.6億ドルと縮小した。
金融面の動向をみると、対ドルレートは、変動相場制への移行などブラジル情勢の不透明感を反映して、1月中旬には一時10.6ペソ/ドル程度まで減価したが、その後は増価傾向を示しており、99年3月31日現在、98年12月末比で3.4%の増価となった。一方、株価(IPC指数)は、ブラジル情勢の影響を受け1月中旬に下落したが、その後は上昇しており、99年3月31日現在、98年12月末比で24.5%の上昇となった。
ブラジルでは、景気は後退している。実質GDP(前年同期比)は、98年7~9月期0.1%減の後、製造部門(公益事業を含む)の減少幅が拡大したこと、サービス部門のうち商業が不振だったことなどから、10~12月期1.9%減となった。鉱工業生産は10~12月期前年同期比5.1%減と減少幅が拡大している。
失業率は高水準で推移しており、2月7.5%となった。消費者物価上昇率は、2月前年同月比3.0%と落ち着いている。経常収支赤字は10~12月期114.7億ドルの後、1月25.3億ドルとなった。貿易収支は、2月2.2億ドルの黒字となった。
金融面の動向をみると、1月13日、ブラジル中央銀行は通貨レアルの変動幅を拡大し、事実上の通貨切下げを行った。しかし、レアルの売り圧力は止まらず、1月15日には市場介入を停止し、1月18日には変動相場制への移行を発表した。その後もレアルの減価傾向は続いていたが、IMFとの新たな合意の成立等により、3月中旬以降増価に転じた。99年3月31日現在、98年12月末比で31.0%の減価となった。株価(BOVESPA指数)は、為替レートの減価によりドルベースで割安となったことや、IMFと政府との交渉や財政改革審議の進行を反映し、1月中旬以降上昇傾向が続いている。99年3月31日現在、98年12月末比で57.7%の上昇となった。
変動相場制への移行を踏まえ、ブラジル政府とIMFは新たな経済安定化策を協議していたが、99年3月8日に合意に達した。この合意によれば、99年の実質GDP成長率は▲3.5~▲4.0%、物価上昇率は16.8%、プライマリー財政収支のGDP比は3.1%に改訂された。なお、3月30日、IMFはブラジル向けの追加融資を承認し、その結果、約49億ドルが引出し可能となった。また、3月18日にはブラジル下院において、財政改革の一環である小切手税引上げに関する憲法改正案が可決成立した。
2 ヨーロッパ 拡大テンポ鈍化
ヨーロッパの景気の現状をみると、ユーロ圏(EMU第3段階移行11か国)では、景気拡大のテンポは鈍化している。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率2.8%増、10~12月期同0.8%増となった。個人消費は増加しているが、固定投資の伸びが鈍化し、また輸出が減少している。また、域外経済の成長率低下に対する懸念などから、製造業におけるコンフィデンスが低下し、鉱工業生産が10~12月期には、96年1~3月期以来の前期比マイナスとなった。失業率は、景気の好調さや雇用機会創出政策もあり、低下している。物価は安定している。イギリスでは、景気は減速している。なお、欧州委員会は3月30日に春の経済見通しを発表し、99年経済成長率見通しを、EU全体では2.1%、ユーロ圏では2.2%とした(98年秋の成長率見通しは、EU2.4%、ユーロ圏2.6%)。
金融面の動向をみると、ユーロ圏では、99年1月1日に、1ユーロ=1.16675ドル(参照レート)の為替レートでユーロが誕生し、当初は強含みで推移したものの、その後は期を通じて弱含んだ。レポ(公開市場操作)金利は年初来3.00%で据え置かれている。広義のマネーサプライ(M3)は、2月前年同月比5.2%増となった(3か月移動平均では前年同月比5.1%増となり、ECBの参照値である同4.5%増をやや上回っている)。イギリスでは、国内経済の鈍化傾向から、98年10月から99年2月まで5か月連続で政策金利(レポ金利)を合計1.75%引き下げた。3月には政策金利を据え置いた。
中・東ヨーロッパでは、ポーランドでは景気の拡大テンポは鈍化しており、ハンガリーでは景気は拡大している。チェッコでは景気は後退している。ロシアでは、景気は後退している。
ドイツ:輸出の大幅な減少などから、景気拡大のテンポは鈍化している。ただし、失業率の低下等を受け、消費は増加している。 |
ドイツでは、実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.6%増の後、10~12月期同1.5%減となった。これまで内需を牽引してきた機械設備投資の増加基調に陰りが見え始めるとともに、輸出が国際経済情勢の悪化やマルク高等を受け同8.6%減となるなど、外需の大幅なマイナス寄与(寄与度は前期比年率△2.1%)により、成長率がマイナスとなった(ただし前年同期比では2.5%増)。景気拡大のテンポは鈍化している。消費については、政府消費は同6.6%減となったが、個人消費は、雇用情勢の改善が続いていることもあり、7~9月期同4.9%増、10~12月期同3.8%増と増加している。小売売上数量は10~12月期前期比0.5%増の後、1月前月比0.6%減となったが、消費者コンフィデンス(欧州委員会発表)は改善している。建設投資は10~12月期前期比年率7.2%減、新規建設受注数量は12月前月比4.7%減、1月前月比7.2%増となった。
鉱工業生産は、11月前月比1.9%減、12月同0.6%増と、拡大テンポが緩やかになっている。製造業新規受注は、10~12月前期比3.6%減、1月前月比2.1%増となった。ifo製造業景況感は、悪化を続けている。
失業率は、高水準ながらもやや低下している(2月10.5%)。物価は、消費者物価上昇率が2月前年同月比0.2%(3月速報値では0.5%)、工業品生産者価格上昇率が2月▲2.4%と安定している。
経常収支は10~12月期115億マルクの赤字となった。輸出は1月前月比3.6%増、輸入は同5.1%減(伸び率はともに経済企画庁算出)となり、貿易収支黒字は10~12月期299億マルクから、1月62億ユーロ(約121億マルク)となった。
フランス:景気拡大のテンポは緩やかになってきている。個人消費、設備投資の増加傾向が続いており内需は拡大しているが、外需が減少している。 |
フランスでは、実質GDPは、98年10~12月期前期比年率2.9%増(速報値)となった。7~9月期の実質GDPは、前回公表時の前期比年率2.1%増から1.5%増に下方修正された。個人消費、設備投資を中心とした内需主導の景気拡大が続いているが、輸出の減少により外需がマイナスに寄与するなど、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。個人消費は、雇用情勢の改善が消費者信頼感の向上につながっていることから、増加(実質個人消費は10~12月期前期比年率2.7%増)している。設備投資は、増加しているものの外需の低迷などから経営者の景況感が悪化しているため、そのテンポは緩やかになってきている(実質法人固定投資は4~6月期前期比年率8.0%増から7~9月期は同3.2%増、10~12月期は同5.0%増)。外需は、輸出減少を受け、10~12月期には純輸出の寄与度が年率マイナス0.9%となった。
鉱工業生産は、11月前年同月比4.4%増、12月同1.3%、1月同2.3%増と、拡大テンポは緩やかになっている。INSEE(国立統計経済研究所)が3月に行った経営者アンケート調査によると、今後生産は減速すると見ている経営者が増加している。
失業率は、高水準ながらもやや低下しており、2月11.5%となった。物価は、消費者物価上昇率が、2月前年同月比0.2%、工業品生産者価格上昇率が、同▲3.0%と安定している。
経常収支は10~12月期657億5500万フランの黒字、貿易収支は1月94億7700万フランの黒字と、高水準の黒字が続いている。輸出は1月前月比4.3%減、輸入は同0.7%減と、このところ輸出の減少が目立っている。
なお、フランス政府は3月30日、99年の成長率見通しを98年9月公表の2.7%から2.2~2.5%へ下方修正した。
イギリス:輸出や住宅投資の減少などにより景気は減速している。 |
イギリスでは、実質GDPは、98年7~9月期前期比年率1.1%(市場価格)となった後、10~12月期同0.3%(下方改定)となった。98年の実質GDPは2.3%から2.1%への下方改定となった。住宅投資を除いた固定投資が堅調であることなどから内需の寄与がプラスとなった反面、輸出減少などから外需の寄与はマイナスとなった。消費は、個人消費が7~9月期前期比年率0.3%増、10~12月期同2.2%増となり、小売売上数量が1月前月比1.2%増となった。設備投資は、7~9月期前期比年率15.1%増の後、10~12月期同23.7%増となったが、CBI(英国産業連盟)サーベイの設備投資に関する見通しは最悪傾向を脱しておらず、依然低水準である。また住宅投資は7~9月期前期比年率13.7%減の後、10~12月期同21.1%減となり、大幅に減少している。
鉱工業生産は、製造業を中心に減少しており、総合指数は99年1月前年同月比0.4%減、2月同0.1%減となった。製造業生産は、1月前年同月比0.9%減、2月同1.4%減となり5ヶ月連続でマイナスとなった。3月のCBIサーベイ製造業生産見通しは改善しているが、依然低調である。
失業率は、横ばいで推移しており、2月4.6%となった。物価は、消費者物価上昇率が、1月前年同月比2.4%、2月同2.1%(住宅金利を除く上昇率2.4%)と安定しているものの、ターゲットを下回ったことから、イングランド中銀は物価上昇率の下振れを懸念している。
経常収支は貿易赤字の大幅な拡大にもかかわらず、所得収支の黒字により10~12月期9.5億ポンドの黒字となった。輸出は1月前月比5.4%減、輸入は同0.8%減となり、貿易収支赤字は28.3億ポンドと記録的な赤字となった。
金融面の動向をみると、3月には、短期、長期金利ともに低下した。マネーサプライ(M4)は、2月7.5%増となった。イングランド銀行は国内経済の減速傾向や物価の下振懸念などから、2月4日に5ヶ月連続の政策金利(レポ金利)引き下げを行い、政策金利は、0.5%引き下げられ5.5%となった。3月は政策金利を据え置いた。
イタリア:実質GDP成長率は輸出の大幅な減少を主因としてマイナスとなった。 |
イタリアでは、実質GDPは、98年7~9月期前期比年率2.2%増の後、10~12月期は同1.1%減となった。
個人消費は、実質個人消費が7~9月期前期比年率3.4%増となった後、10~12月期同0.0%増と伸びが鈍化している。固定投資は、実質固定投資が7~9月期前期比年率4.5%増、10~12月期同1.0%増と増加のテンポが緩やかになっている。輸出は前期比年率▲24.2%と大幅に減少し、輸入が同▲20.8%となったことから、10~12月期には純輸出の寄与度は▲1.5%となった。
鉱工業生産は、12月前月比6.1%減、前年同月比6.3%減と減少している。ISCO(国立経済研究所)のアンケート調査によると、生産見通しはこのところ改善している。
失業率は、高水準で推移しており、1月12.4%となった。物価は、生計費上昇率が2月前年同月比1.2%、工業品生産者価格上昇率が1月同▲1.7%と安定している。
経常収支は12月3兆1410億リラの黒字、貿易収支は1月4910億リラの黒字となった。
中・東ヨーロッパ:ポーランドでは景気の拡大テンポは鈍化している。ハンガリーでは景気は拡大している。チェッコでは景気は後退している。 |
ポーランドでは、実質GDPが98年7~9月期前年同期比 4.9%増、10~12月期同2.9 %増(速報値)となり、景気の拡大テンポは鈍化している。98年の実質GDPは4.8%となった。鉱工業生産は、99年1月前年同月比5.0 %減、2月同5.6 %減となった。失業率は、1月11.4%、2月11.9%とこのところ上昇している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で1月前年同月比6.9%、2月同5.6%と低下してきている。経常収支赤字は、7~9月期11.9 億ドル、10~12月期28.9億ドルと大幅に拡大した。
ハンガリーでは、実質GDPが、98年7~9月期同5.6 %増、10~12月期前年同期比 5.2%増となり、景気は拡大している。98年の実質GDPは5.1%となった。鉱工業生産は、12月前年同月比10.6%増、99年1月前年同月比7.2%増となった。失業率は、1月10.3%、2月10.5 %とこのところやや上昇している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で1月前年同月比9.8%、2月同9.4%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、7~9期0.8 億ドル、10~12月期9.6億ドルの赤字となり、赤字幅は拡大している。
チェッコでは、実質GDPが、98年7~9月期前年同期比2.9%減、10~12月期同4.1%減となった。98年の実質GDPは2.7%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、12月前年同月比9.4%減、1月同 11.3%減となった。失業率は、1月8.1%、2月8.3%と上昇している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で1月前年同月比3.5%、2月同2.8%となり、98年央から大幅に低下している。経常収支は、7~9月期0.3億ドル、10~12月期0.8億ドルの赤字となり、赤字幅はやや拡大した。
ロシア:景気は後退している。物価は高騰を続けている。 |
ロシアでは、実質GDPは、98年7~9月期前年同期比7.6%減、10~12月期同9.0%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、98年10~12月期前年同期比8.2%減の後、99年1月前年同月比4.9%減、2月同3.7%減と減少幅は縮小している。98年9月以降は全部門において生産の低下がみられ、99年に入ってからも軽工業等では著しく生産が落ち込んでいるが、バイオテクノロジーや窯業等生産が増加している部門も見られるようになっている。個人消費は、98年10~12月期前年同期比20.5%減、99年1月前年同月比24.3%減と大幅に減少している。固定投資は、実質総固定投資(政府・民間)で98年10~12月期前年同期比8.6%減、99年1月前年同月比10.7%減となった。
失業率(ILO基準)は、99年2月12.4%と高水準で推移している。物価は、ルーブル安や紙幣増刷の影響から食料品を中心に高騰しており、消費者物価上昇率で99年1月前年同月比97.2%(前月比8.5%)、3月同107.8%(同2.8%)となっている。
貿易収支(個人業者による「シャトル貿易」を含まない)は、7~9月期73.1億ドル、10~12月期120.8億ドルとなっている。輸出は、主要品目であるエネルギー価格が引き続き低迷していることから、7~9月期前年同期比18.3%減の後、10~12月期同20.8%減となった。輸入は、7~9月期同26.3%減、10~12月期同57.4%減と大幅に減少している。
金融面の動向を見ると、マネーサプライ(M2)はルーブル増刷等から11月前年同月比11.1%増、12月同21.0%増と増加している。また、ルーブルは98年3月31日現在、対ドルで12月末比14.7%減価となった。
なお、3月30日にエリツィン大統領は年次教書演説を行い、一部修正は加えながらも経済改革路線を維持する方針を表明した。
3 アジア等 韓国、景気底入れ
アジアでは、多くの東アジア諸国で景気が後退し、総じて厳しい状況にある。実質GDP成長率は、98年1~3月期以降前年同期比でマイナスとなる国・地域が多く、98年の経済成長率は、インドネシア、タイ、マレイシア、韓国、香港で大幅なマイナスとなった。一方、中国では7.8%、台湾では4.8%と比較的高い成長となったが、成長率は前年に比べ鈍化している。
鉱工業生産は、多くの国で前年同月比で減少が続いていたが、韓国などで回復の兆しがみられる。雇用情勢は、悪化している国が多い。物価上昇率は、このところ総じて低下している。
輸出は、ドルベースでは総じて減少が続いているが、韓国、マレイシアでは増加に転じている。一方、輸入も総じて減少が続いているが、減少幅は縮小している。貿易収支は大幅な黒字を維持し、経常収支も改善している。
各国の通貨は、経常収支の改善や外貨準備高の増加等を背景に、総じて落ち着きをみせている。また、通貨の安定がみられることから、短期金利は低下傾向にある。
インドでは、景気の鈍化が続いている。一方、オーストラリアでは景気は拡大しており、物価も安定している。
中国:景気の拡大テンポは、固定資産投資の増勢等によりやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。 香港:景気は後退している。物価は下落している。失業率は上昇している。 |
中国では、実質GDPは、98年1~9月期前年同期比7.2%増の後、98年全体では固定資産投資の増勢等から前年比7.8%増となった。鉱工業生産(実質)は、98年9月以降回復しており、99年1月前年同月比8.0%増の後、1~2月前年同期比10.6%増となっている。消費は、社会商品小売総額(消費財、実質)をみると、1月前年同月比9.0%増の後、1~2月前年同期比11.2%増と堅調に推移している。固定資産投資(国有部門、名目)は、98年後半以降増勢を強めているが、98年前年比19.6%増の後、インフラ投資を中心に1~2月は前年同期比28.3%増となっている。特に農業、水利などが高い伸びとなった。物価は下落している。消費者物価上昇率をみると、1月前年同月比▲1.2%の後、2月同▲1.3%となっている。ただし、98年後半以降のインフラ投資の拡大により建築材料、エネルギー価格等の値下がりにこのところ歯止めがかかり、前月比でみると12月以降上昇している。特に2月は旧正月もあって野菜、水産品などの価格が上昇したことから前月比1.3%の上昇となっている。
貿易収支は、8月以降輸出が減少傾向にあることから黒字幅は縮小傾向にあり、1月14.9億ドルの後、2月は22.7億ドルとなった。輸出は、98年8月頃より減少傾向にあり、香港向け輸出の減少などから1月前年同月比10.8%減の後、2月同10.2%減と大幅に減少している。一方輸入は、1月前年同月比13.9%増の後、2月は同4.2%減となった。
金融面の動向をみると、マネーサプライ増加率(M2、期末残)は1月前年同月比14.4%の後、2月は同18.0%と伸びが高まった(99年目標圏:14~15%)。なお中国政府は全人代(99年3月)において、99年の実質GDP成長率見通しを7%前後、消費者物価上昇率を4%以内とすることを発表した。
香港では、実質GDPは7~9月期前年同期比6.9%減の後、個人消費の一層の冷え込み、固定資本形成の減少等から10~12月期は同5.7%減となった。98年全体では前年比5.1%減と、1961年の統計開始以来初めてのマイナス成長となった。個人消費は、7~9月期前年同期比10.0%減の後、10~12月期同9.3%減と悪化が続いている。小売売上高は、10~12月期前年同期比18.5%減の後、自動車、宝石・時計等の減少から1月前年同月比21%減と大幅な減少が続いている。固定資本形成は、7~9月期前年同期比9.2%減の後、10~12月期は機械設備投資の不振などから同18.7%減と大幅なマイナスとなった。物価は下落している。消費者物価上昇率は、98年10月以降前年同月比マイナスが続いており、10~12月期前年同期比▲0.8%の後、99年に入ってからも食料、住宅、衣料・靴などの下落から1月前年同月比▲0.9%、2月同▲1.4%となった。失業率は上昇しており、98年11月~99年1月5.8%の後、98年12月~99年2月6.0%となっている。貿易動向をみると、輸出、輸入ともに減少しているが貿易収支赤字は10~12月期10.6億ドルの後、1月0.9億ドル、2月1.4億ドルとやや縮小している。98年全体では輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ったことから、貿易収支赤字は106億ドルと前年比半減している。輸出は10~12月期前年同期比13.8%減の後、1月前年同月比6.7%減、2月同10.1%減となった。一方輸入は、再輸出の減少による原材料等の輸入の減少などから、10~12月期前年同期比18.3%減の後、1月前年同月比5.1%、2月同24.9%減と大幅な減少が続いている。なお99年の実質GDP成長率政府見通しは0.5%となっている(99年3月公表)。
韓国:景気は底入れしたとみられるものの、失業率は高水準で推移している。貿易収支黒字はここ数か月減少している。 |
韓国では、実質GDPは、98年7~9月期前年同期比7.1%減の後、10~12月期同5.3%減となり、マイナス幅は縮小している。なお、10~12月期の成長率を内外需別にみると、内需寄与度の11.6%減に対して外需寄与度は6.0%増となった。民間最終消費は、7~9月期前年同期比10.4%減、10~12月期同6.9%減と減少している。投資は、建設投資が10~12月期前年同期比13.7%減、設備投資が10~12月期同27.4%減、在庫投資が10~12月期同2.2%減と、いずれもマイナスを記録している。
鉱工業生産(原数値)は、10~12月期前年同期比1.6%減の後、99年2月は前年同月比4.0%増となり、4か月連続で前年同月比プラスを記録した。鉱工業生産指数(季節調整値)の水準をみると、98年11月115.7の後、12月119.0と、通貨危機前の水準を取り戻しつつある。製造業稼働率は、10~12月69.9%の後、99年2月は69.9%となった。失業率(季調値)は、99年1月は7.7%、2月は7.1%とやや低下したが、高水準で推移している。失業者数は、99年1月に176.2万人で前月比9.7万人増と、過去最大となった。物価をみると、消費者物価は落ち着きを取り戻しており、生産者物価は下落に転じている。消費者物価上昇率が99年1月前年同月比1.5%、2月同0.2%となった。生産者物価上昇率は99年1月前年同月比1.8%減、2月同4.3%減となった。
国際収支をみると、輸出は、99年1月前年同月比3.7%増の後、2月は98年2月を中心に行われた金拠出運動の影響により同16.0%減と、4か月ぶりに減少した。輸入は、1月前年同月比15.4%増の後、2月同3.0%減となった。結果として、貿易収支は、98年12月30.9億ドルの後、99年1月7.0億ドル、2月17.8億ドルと、ここ数か月黒字は減少している。経常収支は98年12月30.9億ドルの黒字の後、99年1月19.1億ドルの黒字となった。
金融面の動向をみると、会社債収益率(期中平均)は、景気回復に重点を置いた政策が反映され、98年12月前年同月比8.3%と、通貨危機以前より低水準となっている。通貨供給量(M2)の期中平均残高は、98年12月前年同月比22.0%となっている。為替レートは、1ドル=1,200ウオン台で安定的に推移している。外貨準備高は、99年2月に555億ドルと過去最高を記録した。
台湾:景気の拡大テンポは鈍化している。 シンガポール:景気は後退している。 |
台湾では、実質GDPは、98年7~9月期前年同期比4.7%増の後、10~12月期同3.7%増となった。個人消費は引き続き堅調だったものの、輸出が低迷を続けたことに加え、投資の伸びが鈍化した。個人消費は、7~9月期前年同期比6.2%増、10~12月期同7.1%増となった。一方、固定資本形成は、民間投資が10~12月期同3.8%減(7~9月期同11.7%増)と減少に転じたため、7~9月期同7.8%増から10~12月期同0.1%増となった。また、98年全体では、実質GDPは97年の前年比6.8%増から同4.8%増と伸びが鈍化した。
鉱工業生産は、伸びが鈍化しており、7~9月期前年同期比4.9%増、10~12月期同1.5%増となった。しかし、99年1~2月には同4.4%増と回復がみられている。失業率は、10~12月2.9%、99年1月2.8%、2月2.7%とやや低下している。物価をみると、消費者物価上昇率は、台風の影響による食料品価格の上昇から10~12月には前年同期比2.9%とやや上昇したが、99年1~3月には同0.7%となった。卸売物価上昇率は、10~12月期前年同期比▲6.2%の後、99年1~3月同▲7.9%と下落幅が拡大した。
経常収支は、黒字幅が縮小し、10~12月期5.3億ドルの黒字となった。輸出は98年中、アジア向けを中心に低迷が続き、10~12月期前年同期比12.8%減となったが、99年1~2月には同6.8%増と増加している。一方、輸入は、10~12月同10.7%減、99年1~2月同5.8%減と減少が続いている。貿易収支は10~12月12.6億ドル、99年1~2月15.9億ドルの黒字となった。
金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)は、10~12月期前年同期比9.5%増、99年1月前年同月比7.4%増、2月同7.9%増となり、目標圏内で推移している(99年目標圏:6~11%)。なお、中央銀行は、99年2月に公定歩合を4.75%から4.5%へと引き下げた。
シンガポールでは、実質GDPは、98年7~9月期前年同期比0.6%減の後、10~12月期に製造業はプラスの伸びとなったものの、商業、建設などの不振から同0.8%減と2期続けて減少した。98年全体では前年比1.5%増となり前年(8.0%)に比べて大幅に減速したが、政府見通し(0.5~1%)を上回った。製造業生産は、10~12月期前年同期比2.5%減の後、エレクトロニクスや化学の増加により1月前年同月比9.4%増、2月同2.8%増となった。98年5月より7か月連続して前年割れした製造業生産は、12月よりプラスに転じている。個人消費は、7~9月期前年同期比2.5%減の後、10~12月期同2.2%減となった。小売販売額(名目)をみると、10~12月期前年同期比5.4%減の後、1月は旧正月の影響で前年同期比13.4%減となったが、98年末頃より減少幅は縮小傾向にある。固定資本形成は、7~9月期前年同期比10.6%減の後、10~12月期同18%減と減少幅が拡大している。
物価は下落している。消費者物価上昇率は、10~12月期前年同期比▲1.6%の後、食料価格の安定や住宅、輸送・通信関連費等の下落から、1月前年同月比▲0.5%、2月同▲0.6%となっている。失業率(季節調整値)は9月4.5%の後、12月は4.3%と高水準にある。98年の雇用者数はネットで17,300人の減少となり、特に製造業、商業の減少が大きかった。
貿易収支は、輸入の大幅な減少から黒字が続いている。貿易収支黒字は、10~12月期23.7億ドルの後、1月2億ドル、2月2.9億ドルとなった。輸出は、10~12月期前年同期比12.4%減の後、1月前年同月比3.9%減、2月同17.3%減となっている。一方輸入は、10~12月期前年同期比23.3%減の後、消費の低迷、輸出不振に伴う原材料輸入の減少から1月前年同月比1.8%減、2月同20.6%減と減少が続いている。経常収支黒字幅は、7~9月期の50.4億ドルから10~12月期は51.2億ドルへと拡大し、98年全体では175億ドル(GDP比20.7%)と前年に比べ拡大した。
金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、11月以降郵便貯蓄銀行の預金がM2に計上されたことから上昇率が大幅に高まっており、12月末前年同月比30.2%、1月末同29.6%となっている。ただしベースを揃えて試算すると、98年末9.7%、1月9.4%と安定している。
なおシンガポール政府は99年実質GDP成長率見通しを▲1.0~1.0%とみている。
アセアン:景気は後退している。タイでは生産に底入れの兆しがみられる。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、黒字が続いている。 |
アセアン各国の動向をみると、インドネシアでは、景気は後退しており、実質GDPは、98年7~9月期前年同期比18.4%減、10~12月期同19.5%減と大幅なマイナスとなった。製造業生産は、7~9月期前年同期比17.7%減、10~12月期同14.2%減と、大幅に縮小している。物価は、消費者物価上昇率が、10~12月期前年同期比78.4%の後、99年1月前年同月比70.7%、2月同53.5%と、騰勢は鈍化している。貿易収支(通関ベース)は、7~9月期58.2億ドルの黒字の後、10~12月期同44.2億ドルと、大幅な黒字を計上した。輸出は、7~9月期前年同期比9.4%減の後、10~12月期同16.5%減と減少した。輸入は、7~9月期前年同期比34.0%減の後、10~12月期同27.0%減と、大幅なマイナスが続いている。金融面の動向をみると、金利は98年12月頃から低下し始めたが、99年2月にはやや上昇した。
タイでは、景気は後退しているものの、製造業生産には底入れの兆しがみられる。製造業生産は、98年7~9月期前年同期比9.5%減、10~12月期同3.7%減と減少幅が縮小し、99年1月には前年同月比0.2%増とわずかながら増加に転じた。また、98年の実質GDPは、前年比8.0%減となった見込みである。物価は、消費者物価上昇率は98年半ばから低下しており、10~12月前年同期比5.0%、99年1~3月期同2.7%となった。経常収支は大幅な黒字が続いており、98年10~12月期38.6億ドルの黒字となった。輸出は、7~9月期前年同期比8.7%減、10~12月期同9.9%減、99年1月前年同月比5.3%減と減少が続いている。一方、輸入は依然減少が続いているものの、減少幅に縮小がみられ、7~9月期前年同期比34.2%減の後、10~12月期同18.9%減、99年1月前年同月比3.9%減となっている。貿易収支黒字は10~12月期33.6億ドル、99年1月7.8億ドルの黒字となった。金融面の動向をみると、金利は低下している。タイ中央銀行は、99年2月より公定歩合を12.5%から7%へ引き下げた。
マレイシアでは、景気は後退している。実質GDPは、98年7~9月期前年同期比9.0%減の後、10~12月期同8.1%減となった。また、98年全体では、実質GDPは前年比6.7%減となった。鉱工業生産は、大幅な減少が続いており、10~12月前年同期比10.9%減、99年1月前年同月比11.2%減となった。物価をみると、消費者物価上昇率はやや低下しており、10~12月期前年同期比5.4%、99年1月前年同月比5.2%、2月同3.8%となった。貿易収支は黒字幅が拡大しており、7~9月期40.3億ドルの黒字から、10~12月期50.9億ドルの黒字、99年1月11.4億ドルの黒字となった。輸出は7~9月期前月同期比10.9%減の後、10~12月期同4.5%増、99年1月前年同月比12.3%増と増加に転じた。輸入は7~9月期前年同期比29.4%減、10~12月期同20.5%減と減少幅が縮小し、99年1月には前年同月比1.6%増となっている。金融面の動向をみると、金利は低下している。マネーサプライ(M2)の伸びは鈍化傾向にあり、99年2月前年同月比4.0%増となっている。
フィリピンでは、景気は後退している。実質GDPは、98年7~9月期前年同期比0.7%減の後、10~12月期同1.9%減と、マイナス成長が続いている。製造業生産は、7~9月期前年同期比4.8%減、10~12月期同10.3%減と、縮小傾向が一段と顕著になった。物価は、消費者物価上昇率は低下の兆しを見せており、10~12月期前年同期比10.6%の後、99年1~3月期同10.1%となった。貿易収支(通関ベース)は、7~9月期5.2億ドルの後、10~12月期8.0億ドルと、黒字基調が続いている。輸出は、欧米向けなどが依然好調なため、7~9月期前年同月比19.2%増、10~12月期前年同期比11.5%増となった。これに対して輸入は、7~9月期前年同月比21.4%減、10~12月期同25.1%減と、大幅に減少した。金融面の動向をみると、このところ金利は低下を続けている。
インド:鉱工業生産の鈍化や輸出の減少が続いており、景気の鈍化が続いている。物価の騰勢は弱まっている。貿易収支赤字は高水準となっている。 |
インドでは、実質GDPは、97年度(4~3月)前年度比5.0%増の後、98年度は農業生産の回復から5.8%増(速報値)とやや回復する見込みとなった。98年度の農業生産は5.3%増と、天候不順で不振であった前年度の1.0%減から大幅に回復する見込みであるが、製造業生産は5.7%増の見込みで、前年度の6.8%増からさらに鈍化した。
鉱工業生産は、消費財を中心に伸びが鈍化しており、98年4~6月期前年同期比4.5%増、7~9月期同3.6%増の後、10~12月期同2.6%増となった。物価は、食料品価格の高騰を主因に98年後半に大幅に上昇したが、99年に入り騰勢は弱まっている。卸売物価上昇率は7~9月期前年同期比8.3%、10~12月期同7.6%の後、99年1月前年同月比4.6%、2月同5.0%となった。消費者物価上昇率(工業労働者対象)は、7~9月期前年同期比15.6%、10~12月期同17.7%の後、1月前年同月比9.4%となった。
国際収支をみると、輸出(通関、ドルベース)は、アジア向けを中心に減少が続き、4~6月期前年同期比7.9%減、7~9月期同1.6%減の後、10~12月期は同3.9%減となった。輸入は、4~6月期前年同期比6.1%増、7~9月期同10.6%増の後、10~12月期は原油価格の下落による石油及び石油関連製品の減少などから同1.7%減となった。貿易収支赤字は4~6月期28.0億ドル、7~9月期22.3億ドル、10~12月期23.0億ドルと高水準の赤字が続いている。
金融面の動向をみると、インド準備銀行(中央銀行)は3月1日、公定歩合を98年4月以来11か月ぶりに1%引下げ、8%とした。金利(TB91日物、期中平均)は、7~9月期9.26%、10~12月期9.64%の後、1~3月期は9.35%とやや低下した。通貨供給量(M3、期末残高)は、2月前年同月比19.6%増と、このところ20%近い増加が続いており、98年度の目標値15.0~15.5%を大きく上回っている。
オーストラリア:景気は拡大している。失業率は低下傾向にある。経常収支の赤字幅は拡大している。 |
オーストラリアでは、実質GDP成長率は、98年7~9月期前期比年率4.2%増の後、10~12月期同4.3%増となり、景気は拡大している。消費は、実質家計最終消費支出が7~9月期前期比1.3%増のあと1.5%増と堅調に推移している。小売売上高は1月前月比5.2%増の後、2月0.6%減となった。投資は、実質民間機械設備投資が、7~9月期前期比11.6%増の後、10~12月期同15.9%減となった。民間住宅投資は、7~9月期前期比3.9%減の後、10~12月期同1.3%減となった。住宅建設許可件数は、99年1月前月比6.0%減の後、2月同5.1%増となった。非住宅建設投資は7~9月期に4.7%増の後、10~12月期同5.0%減となった。失業率は、98年12月に7.6%の後、99年1月は7.5%、2月には7.4%と低下傾向にある。消費者物価上昇率は、10~12月前年同期比1.6%と安定している。
経常収支は、大幅な赤字が続いている。10~12月期は79.7億豪ドルの赤字となり、前期に比べ赤字幅が拡大した。財の輸出は10~12月前期比2.8%減、財の輸入も同1.6%減と減少したが、財の貿易収支は10~12月期25.3億豪ドルの赤字となった。
金融面の動向をみると、株価はこのところ上昇しており、総合株価指数は4月6日に3032.9と過去最高値を記録した。オーストラリア・ドルは、3月末日現在、対米ドルで12月末比2.6%増価となった。
4 国際金融・商品 原油価格、産油国による追加減産合意により、上昇基調に転換
国際金融:ドルは、ECB(欧州中央銀行)の利下げ観測などにより増価。 国際商品:原油価格は、追加減産合意により、2月後半より上昇基調に転換。 |
【国際金融】
99年1~3月期の米ドル(実効相場)は、1月から2月にかけて総じて増価基調で推移し、3月に入り減価基調となったが、月末には増価する場面もあった (P2、図3)。対円では、1月から2月にかけては日本の長期金利が上昇した際に減価したものの、総じて増価基調で推移した。その後、3月に入るとアメリカの利上げ懸念が後退したことなどから減価基調に転じ、その後も日本株価上昇などから総じて減価したが、月末には増価する場面もあった。一方、対ユーロでは、ECB(欧州中央銀行)の利下げ観測などを背景に増価基調で推移した(モルガン銀行発表の米ドル実効相場指数(1990=100)99年3月31日109.3、98年12月末比3.21%の増価)。内訳でみると、99年3月末現在、対円では98年12月末比4.76%増価、対欧州通貨では対ユーロで同8.84%増価、対ポンドで同2.96%増価した。
なお、アジア通貨は、総じて対ドルでほぼ横ばいで推移した。
【国際商品市況】
国際商品価格全体では、CRB商品先物指数は、99年1月以降も引き続き下落基調で推移し、2月下旬には183ポイントを下回る約23年ぶりの安値を記録したが、3月以降上昇に転じ、下旬には190ポイント台の水準まで持ち直した。
商品別では、穀物は、アジア地域を中心に需給緩和が続いたため、大豆を中心に大幅に下落したが、3月以降は生産調整や食料援助の噂を背景に、軒並み上昇に転じた。貴金属では、金が、米・仏大統領がIMFの保有金売却について言及したことなどから、総じて弱含みで推移した。
【石油情勢】
原油価格(北海ブレント・スポット価格)の1月以降の動きをみると、1月初めは10ドル台半ばから始まり、需給緩和に北米地方を中心とした暖冬傾向があいまって、2月中旬までは9ドル台後半から12ドル台前半のレンジで総じて弱含みに推移した。だが、3月に入り23日のOPEC(石油輸出国機構)総会で追加減産合意の観測が高まると、一転して上昇を続け、3月末には14ドル台まで回復した。