第2章 成長型経済の実現に向けた課題(第3節)

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第3節 企業活動の活性化に向けて

1 企業をとりまく金融環境の構造変化

(力強い成長に不可欠な企業活動の活性化)

物価上昇を上回る持続的な賃上げを実現していくためには、経済の供給力である潜在成長率を向上させ、企業の「稼ぐ力」ともいえる生産性を高めていくことが不可欠である。しかし、これまでの我が国企業を総じてみれば、1990年代初頭のバブル崩壊に伴う金融面での深刻な調整や、その後のデフレを伴う国内需要の趨勢的な停滞によって、成長の源泉である物的及び人的投資の抑制を含め、コストカット型の経営志向を強める傾向にあった。このような動きを背景に、我が国全体の成長力を示す潜在成長率は、第1章第2節でみたように、1990年代以降緩やかに低下し、先進各国と比べて現在もなお低い状況にある。

長引くデフレの中では、個々の企業にとっては、債務をできるだけ圧縮しつつ内部留保を積み上げ、コストカットを重視した戦略を採ることは、合理的な行動であっただろう。しかし、一国全体でみたときには、こうした動きが、設備投資などによる能力の増強や経済全体の総需要の喚起に対して下押しに働き、生産性の向上を抑制してきたと考えられる1。重要なことは、資金フローも含めた経済全体として、需給両面から生産性を持続的に向上させる方向へ向かう、いわば成長志向の前向きな動きを広げていくことである2。さらに言えば、そのような前向きな動きを取りたいというインセンティブを持つ企業を増やしていく必要がある。

こうした問題意識を持ちつつ、本節では、まず前段で我が国全体の資金フロー構造の変遷を概観する。具体的には、我が国の経済主体のバランスシートの動向を、資金循環統計を用いた金融連関分析という手法によって考察する。この20~30年ほどの間、大企業は海外への投資を増やし、中小企業は現預金を積み増してきたとみられるが3、ここでは、こうした考察をバランスシート全体に広げることで、これまでの経済構造の変化をより多角的にみていくこととしたい。後段では、ミクロレベルでの企業活動、特にM&A(合併・買収)の動向に焦点を当て、合併が企業の生産性を向上させる効果について検証する。

(バブル崩壊以降、我が国企業は貯蓄主体に)

詳細な分析に入る前に、我が国企業のこれまでの動きを手短に概観しておこう。

まず、非金融法人企業(以下本項では「企業」という。)をとりまく金融環境をみていく。1990年代初頭のバブル崩壊以降、政策金利が大幅に引き下げられるもとで、2000年代以降、短期金利はゼロ近傍で推移している(第2-3-1図(1)~(3))。とりわけ、2008~2009年の世界的な金融・経済危機の後、世界的なデフレ圧力が強まる中、大規模な非伝統的金融政策(我が国においては、例えば「包括的な金融緩和」(2010年)、「量的・質的金融緩和」(2013年))が導入されてからは、金融機関の貸出態度などをみても、特に緩和的な金融環境が維持されてきた4ことが分かる(第2-3-1図(4)、(5))。

第2-3-1図 金利の推移と金融機関の貸出態度
第2-3-1図 金利の推移と金融機関の貸出態度 のグラフ

こうした点を踏まえつつ、企業の収益などの動向をみると(第2-3-2図(1))、企業の経常利益は、1990年代後半以降、リーマンショックや新型コロナウイルス感染症拡大期などの時期を除いて基本的に増加基調にあり、特に2010年代半ばには円高是正による円換算での輸出企業の収益増もあってその増勢を強め、また、コロナ禍後の2022年頃からは大幅な物価上昇とともに更に加速している。その一方で、人件費や設備投資の伸びは、収益の増加ペースと比べて緩やかなものとなっている。これは、企業の収益が、緩和的な金融環境にあっても国内の設備投資には向かわず、また、賃上げの原資としても十分に活用されてこなかった可能性を示している。その反面、利益剰余金や現預金、対外直接投資の残高は大きく増加しており(第2-3-2図(2))、収益は企業内部に蓄積5されるか、海外企業の買収も含めた海外への進出を中心に用いられてきたことがうかがえる。

第2-3-2図 企業の支出行動と保有資産
第2-3-2図 企業の支出行動と保有資産 のグラフ

こうしたことの背景には、物価も賃金も動かない状態が続く中で、国内経済の成長に対する期待も低下していたことがあると考えられる。すなわち、企業においては、日本経済の期待成長率は実質で年1%を大きく上回らないペースとみる認識が継続し、予想物価上昇率も、金融の不良債権問題とともに国内経済の停滞が深まった1990年代後半頃から、コストプッシュによって実際に物価が上昇した2022年頃までの間は、おおむね1%前後と相対的に低い水準で推移していた(第2-3-3図)。企業にとっては、一般に成長・拡大が十分に期待できない市場に対して投資を行うことはためらわれるであろう。また、物価の伸びが低ければ、内部に預金などを手厚く保持していても、その実質価値はほとんど目減りしない。これも、企業が資金を内部に保有せずに設備投資に回そうとする動機を弱めたと考えられる。くわえて、成長率・物価の伸びが十分に期待されないときには、企業は将来不況に陥った場合に賃下げが難しくなることを恐れて賃上げに慎重になる6可能性がある。このように、国内の経済成長や物価の伸びが十分に期待されない状況が続いたことは、企業の賃上げや設備投資へのスタンスを慎重化させたと考えられる。

第2-3-3図 日本企業の成長期待・予想インフレ率の推移
第2-3-3図 日本企業の成長期待・予想インフレ率の推移 のグラフ

次に、我が国のISバランス(貯蓄・投資バランス)をみると、企業が大幅な貯蓄超過(資金余剰)を続ける姿となっている(第2-3-4図(1)、(2))。通常、企業は借入などによって資金を調達して事業を営むことが想定される。主要国のケースをみても、我が国のように長期にわたって企業が大幅な貯蓄超過を続ける例は見当たらない(第2-3-4図(3))。一方、我が国では一般政府が大幅な投資超過(資金不足)となっており、家計と企業の貯蓄超過が政府の資金不足(財政赤字)をファイナンスしている構図となる。なお、海外のマイナスバランスは我が国の経常収支黒字を意味するため、家計と企業を合わせた貯蓄超過額は財政赤字よりも大きく、国内全体では貯蓄超過(=経常黒字)が維持されていることが分かる。

第2-3-4図 各国の貯蓄・投資バランス
第2-3-4図 各国の貯蓄・投資バランス のグラフ
コラム2-4 企業へのアンケート調査からみた設備投資の手控え要因

本文では、我が国経済の成長に対する期待が低位にとどまる中で、企業が設備投資等に慎重になってきた様子を概観した。このコラムでは、各種の企業に対するアンケート調査のデータを参照しながら、実際に企業がどのように意思決定を行ってきたのかをみてみよう。

まず、企業の経営陣に対して、1990年代半ば以降の自社の活動について尋ねたアンケート(日本銀行(2024))によると、バブル崩壊後の1990年代半ば~2000年代頃にかけて、企業が設備投資を手控えていた理由は、債務圧縮・財務改善への志向や、成長期待の低下であったことが改めて確認できる(コラム2-4-1図(1))。その後、2010年代頃にさしかかると、成長期待の低下がより一層設備投資を下押しするようになったうえ、債務圧縮志向はやや弱まるものの、予備的に現預金を積み上げていく動機が強まった様子がうかがわれる。この頃、リーマンショックや東日本大震災などといった経済ショックが立て続けに起きたこともあり、将来の不確実性への対応や財務改善への厳しいプレッシャーを受けた企業が、自衛策として予備的に現預金を貯蓄する行動様式を持つようになった可能性がある。また、帝国データバンクによる比較的規模の小さい企業へのアンケートによると、設備投資を予定していない理由の筆頭に一貫して挙げられているのは、設備の水準や採算性などよりも、「先行きが見通せない」という不確実性である(コラム2-4-1図(2))。このことからも、我が国企業は、設備投資に当たってリスク回避的な姿勢で臨んでいることが示唆される。

コラム2-4-1図 企業が設備投資を控える理由
コラム2-4-1図 企業が設備投資を控える理由 のグラフ

また、上述の日本銀行(2024)のアンケートによると、企業がベースアップを抑制した理由として、価格転嫁の不調や、そもそも賃上げしなくても労働者を雇うことができたという点に加え、ベースアップが固定費の増加につながる懸念が大きかったことが示されている(コラム2-4-2図(1))。これは、長らく物価上昇率がゼロ近傍で推移する中では、名目賃金をカットしにくいという下方硬直性の影響が賃上げを阻害していたことを裏付けている。もっとも、中小企業を主な対象とした直近のアンケートでは、賃上げできない要因として最も多く挙げられているのは原材料やエネルギーなどのコスト上昇である(コラム2-4-2図(2))。物価が上昇を始めたことによって、賃金の下方硬直性の問題は現在ある程度緩和されていると考えられるが、物価上昇が続く中で賃上げ原資を確保していくことが、企業にとっての重要な課題となっている。

コラム2-4-2図 企業が賃金引き上げを控える理由
コラム2-4-2図 企業が賃金引き上げを控える理由 のグラフ

(金融の構造から我が国企業を観察する)

ここからは、資金循環統計を用いて分析を行う。資金循環統計は、家計・企業・金融機関といった部門(主体)ごとに、その保有する金融資産・負債をまとめたバランスシート形式の統計であり、国内の金融資産・負債がどのように分布しているかを鳥瞰するものとなっている。ここでは、資金循環統計を用いて、各部門間の資産・負債関係がどのようになっているか、すなわち、ある部門から別の部門への資金供給がどれだけあるか(逆からいえば、ある部門は別の部門からどれだけ資金を調達しているか、ということになる。このような相互関係を、From Whom to Whom(以下「FWTW7」)という)を推計し、その構造を分析する、いわゆる金融連関分析を試みる。

なお、資金循環統計では、一部の取引項目(金融資産・負債の種類)を除き、FWTW形式でデータが公表されているわけではないため、資産・負債関係を完全に把握できるわけではない。しかし、多くの取引項目については、負債の発行主体が限られていたり、資産の分布状況が特定の主体に偏っていたりするため、ある程度の精度ではFWTWの関係を推計することが可能だと考えられる8

資金循環統計には全部で50の部門分類、57の取引項目に分解されたデータがあるが、これをそのまま利用すると全体像が掴みにくいため、金融機関(中央銀行を除く)・中央銀行・一般政府・企業・家計・対家計民間非営利団体・海外の7部門に組み換え、統合した形で分析を行う(詳細は付注2-6を参照)。データは、2005年1-3月期9から直近の2025年7-9月期までを用い、四半期ごとにFWTW関係を推計した。以下では、このFWTWの形に整理したデータを用いて分析を行っていく。

(金融機関の資金供給は拡大したが、国内が低成長となる中、資金の一部は海外へ)

まず、作成したFWTWデータを用いて、我が国経済主体のバランスシートの動向を概観していこう(第2-3-5図)。金融機関のバランスシートをみると、この間、緩やかに拡大している。資金は主に家計から調達しているが、これは預金取扱機関が家計から預金を預かっていることによる。資産側をみると、企業への資金供給も緩やかに拡大しているが、それよりも海外や中央銀行への資金供給(多くは日銀当座預金)の伸びが大きい。これは、国内経済の成長期待が高まらない中で、我が国企業の資金需要の伸びも鈍いものにとどまったこと、金融機関からみれば魅力的な資金の供給先が十分に見いだせなかったことに起因すると考えられる。

こうしたことを踏まえつつ、中央銀行(日本銀行)のバランスシートをみると、2013年以降、大規模な金融緩和が講じられるもとで規模が急拡大している。バランスシートの負債側のほとんどは、金融機関からの負債で占められている。一方、資産側をみると、一般政府への資金供給が大幅に拡大しているが、これは金融緩和において市中で大規模に国債を買い入れたことによる。さらに、金融機関への資金供与も拡大しているが、これは、国債買入れと異なり、金融機関への貸出やETF10の買入れなどを通じて、日本銀行が直接的に金融機関のバランスシートを拡大させてきたことを示している。もっとも、先にみたように、金融機関のバランスシート拡大のうち一定の割合は、海外への資金供給の拡大などと見合う格好となっていた点には留意が必要であろう。

企業のバランスシートも拡大しているが、対外直接投資や預金の積み上がりを映じて、海外や金融機関への資金供給が増加している。図中の企業の資産負債差額は、企業が保有する土地や工場などの実物資産の規模とみなすことができるが11、この増加は比較的緩やかなものにとどまっている。企業が設備投資について慎重なスタンスであったことが、金融面でみた統計からも改めて確認されたといえる。

なお、一般政府をみると、調達した資金は、企業、金融機関、海外などの幅広い主体へ供給されている。

これらを踏まえると、2005年以降、金融機関のバランスシートは拡大しているが、それが企業への資金供給を増加させる効果は、バランスシート拡大のペースと比べると緩やかであったと考えらえる。中央銀行の資金供給は、金融機関や、その先の一般政府等を通じて、企業の資金調達にもつながったものとみられるが、金融機関は海外への資金供給も拡大しているなど、資金の行き先には一定の広がりがみられると考えられる。

金融機関が海外への投資を増やした背景が、国内で成長・収益が期待できる資金供給先が十分に見当たらなかったからであるとすると、その認識が国内への資金供給を下押しすることで、国内の設備投資に回る資金が少なくなり、それが低成長の継続につながり、結果として金融機関が国内に投資を行う動機を更に持ちにくくなるという、成長を抑制する悪循環が生じていた可能性が示唆される。

第2-3-5図 各主体のバランスシート
第2-3-5図 各主体のバランスシート のグラフ

(企業の資金調達の波及構造はこの20年で変化)

ここまで、企業や金融機関などのバランスシートの動きを鳥瞰してきた。もっとも、経済主体同士は複雑に関係し合っている。例えば、家計が銀行に預金を預け、銀行がそれを原資に企業へ貸出を行い、企業がそれを対外直接投資に使い、余った一部を銀行預金として保有しておく、というケースを考えてみよう。この場合、家計から出発した資金は、銀行を介して企業へ流れ、更にその先では海外に流れるか、再び銀行に戻ってくることになる。このような、多数の段階を介する経済主体同士の結びつきは、単に個別の主体のバランスシートを眺めているだけでは把握しにくい面がある。ここからは、金融連関分析の手法を用い、こうした重層的な関係性の観察を試みる。

まず、FWTWの関係性について、資金供給を中間財投入、資金需要を中間財需要と見立てて、産業連関表と同様のマトリックスを作成する。これにより、ある主体で資金需要が発生したとき、それがどの主体にどの程度波及していくか、産業連関分析の手法を援用して分析することができる。すなわち、産業連関分析が、観察された中間財の需要・供給の関係をもとに各種の波及効果を計算するものであるのと同じように、金融連関分析は、マトリックスにまとめられた資産・負債の関係をもとに、各主体の資金需要がもたらす影響を推量するものである。

さて、この金融連関分析によって、企業が1単位の資金需要を発生させたとき、それがどのような影響を及ぼすのか、すなわち、企業の資金需要を誰がファイナンスするか(1次効果)、その資金を誰がファイナンスするか(2次効果)、更にその先の3次効果やそれ以降の波及を累計した最終効果をみてみよう。2005年の場合、企業の資金需要の半分弱を直接ファイナンスするのは金融機関であったことが分かる(第2-3-6図)。その影響は、更に別の金融機関や家計に波及し、最終的に資金需要の約45%を金融機関が、約25%を家計がまかなっている。他方、2025年になると、1次効果の段階から海外の資金供給の存在感が増しているほか、2次効果以降については中央銀行の果たす役割が大きくなっている。これは、先に触れたように、中央銀行が、金融機関を介して資金供給を増大させたことが影響していると考えられる。結果として、金融機関、家計が最終的な資金需要をファイナンスする割合はそれぞれおよそ40%、20%に低下している。

第2-3-6図 非金融法人企業が負債を増やした場合の波及効果
第2-3-6図 非金融法人企業が負債を増やした場合の波及効果 のグラフ

(企業は資金調達・設備投資を行う主体としてのプレゼンスを拡大できるかが課題)

各主体の金融面での関係性を更に深く観察するため、各主体の資金需要がもたらす波及効果をみていく12。まず、各主体が1単位の資金を需要したとき、その影響が別の主体のバランスシートをどの程度拡大するかを表形式で確認しよう(第2-3-7図)。たとえば、前掲第2-3-6図でみたように、企業が1単位資金を需要した場合、金融機関のバランスシートは2.31単位拡大する(2025年の場合)。金融機関からの資金供給の数値は概して大きく、企業以外の主体が資金を需要した場合も、金融機関のバランスシート拡大が誘発されやすいといったことも分かる。

第2-3-7表 各主体の資金需要による影響(2025年1-3月期)
第2-3-7表 各主体の資金需要による影響(2025年1-3月期) の表

ここでは、各主体が発行する負債が、金融連関で表されるシステム全体のバランスシートに対してどの程度の波及効果を持つかを相対的に示す指標(影響力係数)を計算した(第2-3-8図(1))。時系列での推移をみると、企業の影響力係数は、リーマンショック前後に一時的に上昇した後、総じて横ばいの動きとなっている。海外の影響力係数も、足もとやや上昇傾向にあるものの、長い目でみれば横ばいの範囲内の動きとなっている。一方、一般政府の影響力係数は、2010年代半ば頃から緩やかに上昇している。中央銀行の影響力係数は、振れはありつつも、2013年頃から上昇している。

さらに、各主体が、システム全体のバランスシートが拡張したときにどの程度資金供与を拡大させるかを相対的に示す指標(感応度係数)もみてみよう(第2-3-8図(2))。企業の感応度係数は、リーマンショックや感染症拡大局面で一時的な低下はみられるものの、2010~18年頃を中心に上昇しており、かつてと比べて切り上がった水準にある。また、海外及び中央銀行の感応度係数は上昇している。一方、一般政府の感応度係数は低下傾向にある。家計や金融機関の感応度係数も、2010年頃をピークにして低下している。

第2-3-8図 負債影響力係数と負債感応度係数
第2-3-8図 負債影響力係数と負債感応度係数 のグラフ

これらの結果の含意は以下のようなものと考えられる。すなわち、影響力係数の推移からは、この間の経済主体のバランスシート拡大は、中央銀行や一般政府の負債発行にけん引されるところが大きかったことがうかがわれる。前掲第2-3-5図でみたように、中央銀行はこの間、大胆な金融緩和を実行するもとでバランスシートを急速に拡大している。また、一般政府も、国債発行が増加していることや、貯蓄・投資バランスが投資超の状態を続けていることを踏まえると、総じて拡張的な行動をとってきたといえる。これらの政策自体が、金融連関の構造を変化させ、中央銀行や一般政府が他主体との金融的な結びつきを強めた可能性がある。特に、感応度係数からみると、中央銀行は資金の供給主体として他主体との結びつきを急速に深めている。こうした中で、企業は、影響力係数でみた資金の借手(調達側)としての立ち位置に大きな変化はないものの、感応度係数でみた資金の貸手(供給側)としてのプレゼンスを増大させている。中央銀行が金融緩和によって供給したマネーや海外からの資金流入が、資金供給源として徐々に存在感を高めている一方で、家計や金融機関の資金供給のプレゼンスは低下している。

総じてみると、我が国企業は、特にリーマンショック以降、金融システムにおいて、資金を運用する主体としての役割を強めるようになってきている。また、家計の資金供給主体としての役割は弱まってきている。もともと、前掲第2-3-4図でみたように、我が国のISバランスは、企業の貯蓄超過が大きく、近年は特に企業の貯蓄超過が家計のそれを上回るという姿となってきたが、金融連関分析の結果からは、その背景に、企業が単に貯蓄を積み上げていくだけでなく、ビジネスモデルにおいても対外直接投資など資金の運用主体という色彩を強めていることがうかがわれる。結果として、我が国経済においては、家計が将来の消費のために貯蓄した資産が、金融機関の仲介をはさみつつ、企業の投資に回っていくという姿とは異なる資金の流れの比重も高まっていったといえよう13

なお、ここで得られた分析結果について、いくつか留意すべき点を付言しておく。産業連関分析が、観察された中間財の需要・供給の関係をもとに各種の波及効果を計算するものであるのと同じように、金融連関分析は、あくまでマトリックスにまとめられた資産・負債の関係をもとに、各主体の資金需要がもたらす影響を推量するものである。したがって、金融連関分析では、新たな資金需要が及ぼす限界的な効果は、そのとき観察される平均的なパターンと同様であるという仮定が内在する点には留意が必要である14。また、この仮定により、金融連関分析によって描写される各主体の行動について、それを駆動するメカニズムから直接説明すること(いわゆるミクロ的基礎付け)は難しい15

しかしながら、経済の構造変化をとらえるという観点からは、各主体の資金需要・供給のやりとりを、包括的かつ俯瞰的に観察していく意義は大きいと思われる。特に、資金を調達し、実物資産に投資することが想定される企業のビジネスモデルが、資金の運用にも広がってきた状況において、国内での実物資産、すなわち生産のための設備のストックの伸びは抑制的になる可能性も考えられる。そのため、今回のような金融面での観察も含め、企業行動を引き続き多角的にモニターしていくことが重要である。

2 合併が企業の生産性を向上させる効果の検証

前項では、金融連関分析によって我が国全体の経済構造の変遷を概観したが、本項では、ミクロレベルでの企業活動、特にM&Aの動向に着目して分析を行う。

日本企業によるM&Aは、2012年以降に大きく増加し、2025年には5,115件に達した(第2-3-9図(1))。大企業へのアンケート調査(第2-3-9図(2))によれば、企業がM&Aを実施する主な目的として、「既存事業の規模やシェア拡大」、「事業分野の拡大」を挙げる企業が多い。これは、合併によって規模の経済や範囲の経済が働き、単位当たりの生産コストが低下することによる費用削減効果や、当該企業の市場支配力が高まり、製品の価格を引き上げることによって生じる増収効果を狙ったものと解釈できる。また、製造業では次いで「相手先技術の取り込み」と回答した企業の割合が高く、合併によって特定の技術や生産設備等を囲い込み、競争力を高めようとする姿勢がうかがわれる。

しかし、組織体制や企業文化、意思決定プロセスの違い等から、合併による経営統合に時間を要することも想定されるため、必ずしもこうした効果が十分に発揮されるとは限らない。実際、合併が企業の生産性に与える効果については、1980年代以降多くの研究で取り上げられてきたものの、定量的な評価は必ずしも定まっていない16。企業の生産性向上を通じた賃金上昇が我が国経済の喫緊の課題となる中で、その効果を検証することは重要な意味を持つ。そこで、ここではM&Aの中でも「合併」に焦点を当て、「経済産業省企業活動基本調査」の調査票情報を用いて、企業の合併前後の生産性指標の変化を分析する。

第2-3-9図 日本企業によるM&Aの動向
第2-3-9図 日本企業によるM&Aの動向 のグラフ

(合併企業数は中小企業を中心に増加傾向)

まず、データの作成方法を説明する。分析に用いたのは「経済産業省企業活動基本調査」の過去15年間(2009年度から2023年度まで)の調査票情報である。同調査では、直近の決算期間に合併等の組織再編行為を行ったか否かを調査しているため、これにより非上場企業を含む我が国全体での企業合併の動向を確認することができる17。ここでは、2010年度から2022年度まで18の間に1回以上合併をしたと回答した企業を「合併企業」、同期間中に合併をしたと一度も回答していない企業を「非合併企業」と定義する。なお、合併後に消滅した企業は特定できないため、ここでは合併後に存続した企業(合併元企業)を対象に分析する。

こうして集計した合併企業数の推移を規模別19にみると、2010年代半ば頃にかけて緩やかに減少したものの、近年は中小企業を中心に増加傾向にある(第2-3-10図(1))。業種別にみると、製造業(2022年度の構成比:34.7%)と卸売業・小売業(同:32.7%)の割合が高く、次いでサービス業(同:11.9%)、情報通信業(同:11.6%)の順となっているが、合併企業の業種構成については過去10年余りにわたって大きな変化はないことが分かる(第2-3-10図(2))。

第2-3-10図 合併企業数の動向
第2-3-10図 合併企業数の動向 のグラフ

(合併は企業の生産性を有意に高める)

次に、合併企業と非合併企業のそれぞれの企業群について、生産性指標の変化を比較する。合併企業は合併1年前から合併5年後までの生産性指標を、非合併企業は2010年度から2022年度の各年度を基準として、その1年前から5年後までの生産性指標をそれぞれ集計する20。ここでは、生産性指標として営業利益率、キャッシュフロー比率、総資産利益率(ROA:総資産に対する税引後当期純利益の比率)21、労働生産性、1人当たり賃金を用いるほか、企業の財務健全性を示す指標である純資産比率の動向も確認する22

はじめに、合併企業と非合併企業で生産性指標の中央値を比較すると、合併企業と非合併企業のいずれにおいても、各指標は時間の経過とともに上昇傾向にあるが、労働生産性と1人当たり賃金については、合併企業の伸びが非合併企業の伸びを上回っており、合併による生産性上昇効果が発現していることがうかがわれる(第2-3-11図)。

第2-3-11図 合併有無別にみた生産性指標(中央値の比較)
第2-3-11図 合併有無別にみた生産性指標(中央値の比較) のグラフ

但し、これは合併企業と非合併企業の生産性指標を単純に比較したものであり、合併による効果であると断定することはできない。なぜなら、合併以外の要因、例えば、合併以前から合併企業の生産性が非合併企業よりも高く、その要因が生産性の変化に影響を与えた可能性を排除できないからである。そこで以下では、合併以外に起因する企業固有の要因を取り除くため、滝澤ほか(2009)を参考に、合併企業といくつかの指標から似た特徴を持つ非合併企業を抽出した上で、両者の生産性指標を比較する。

まず、合併を行う企業はどのような特徴を持っているのかを確認するために、合併企業であれば1、そうでなければ0のダミー変数を被説明変数とし、説明変数として、ROA、営業利益率、キャッシュフロー比率、純資産比率のほか、総資産(対数値)、企業年齢(対数値)、年ダミー、業種ダミーを含め、企業が合併を行う予測確率を推計する23

こうした変数からなるロジット・モデルの推計結果24(第2-3-12図)をみると、第一に、総資産の係数はプラス、企業年齢の係数はマイナスでいずれも統計的に有意となっており、資産規模の大きい企業や相対的に若い企業が合併を行う傾向があることが分かる。第二に、ROAの係数はプラスでかつ有意となっており、経営効率の高い企業ほど合併を行う可能性が高いことを示している。一方で、キャッシュフロー比率と営業利益率の係数はマイナスで、かつ統計的に有意となっている。ROAが資産効率でみた企業の収益力を示すのに対し、キャッシュフローや営業利益は主として各期の利益フローを表していることから、これは、例えば収益力はあるが何らかの要因によって今は減益や赤字となっている企業などが、合併によって新たな成長機会を見出そうとした結果であるとの解釈が可能である。第三に、純資産比率の係数はマイナスで有意となっており、内部留保の蓄積は結果として、少なくとも企業が合併を行う誘因にはなっていないことを示唆している。

第2-3-12図 合併を行う企業の特徴
第2-3-12図 合併を行う企業の特徴 のグラフ

次に、ある合併企業に対して、合併を行う予測確率が最も近い非合併企業を1社抽出する。すべての合併企業についてこの作業を繰り返し、比較対象となる非合併企業群を抽出する。その上で、合併企業群の生産性指標の変化幅から、非合併企業群の生産性指標の変化幅を差し引いたものが、合併による生産性の押し上げ効果ということになる(第2-3-13表)。

第2-3-13表 合併が企業の生産性に与える効果の計測方法
第2-3-13表 合併が企業の生産性に与える効果の計測方法 の表

このようにして推計した合併による生産性上昇効果25(第2-3-14図)をみると、全規模全産業で営業利益率、ROA、労働生産性、1人当たり賃金が有意に押し上げられたことが分かる。全規模で合併元企業の産業別にみると、製造業ではいずれの指標についても有意な変化が確認されなかった一方、非製造業では合併によってROA、労働生産性、1人当たり賃金が有意に押し上げられたとの結果が示された。製造業では、合併に伴う工場の統廃合や買収先の生産技術の取り込みにより多くの時間を要することが想定され、合併による生産性上昇効果が5年程度では発現しにくいのかもしれない26。また、全産業で合併元企業の規模別にみると、合併によって大企業では営業利益率と労働生産性が、中堅企業では営業利益率、ROA、労働生産性がそれぞれ有意に上昇した一方、中小企業ではいずれの指標についても有意な変化は確認されなかった27

第2-3-14図 合併による生産性上昇効果
第2-3-14図 合併による生産性上昇効果 のグラフ

(中小企業では、M&A実施後の統合プロセスに課題)

前掲第2-3-14図(6)の通り、中小企業では合併により生産性が有意に改善するとの結論は得られなかったが、その背景を探るため、以下では、合併以外を含めた中小企業のM&A動向を確認する。昨今は経営者の高齢化等により事業承継のニーズが高まる中で、中小企業でもM&Aが事業承継の一つの手段として浸透してきており、事業承継にかかるM&Aの成約件数は増加が続いている(第2-3-15図(1))。こうしたM&Aが、売上・市場シェアの拡大といった当初の目的を達成したか否かを聞き取ったアンケート調査によれば、「概ね達成した」との回答が過半を占める一方、目的を達成できなかったとする企業も約4割を占めており、その理由として「相手先の経営・組織体制が脆弱だった」との回答が3割超と最も多い(第2-3-15図(2)、(3))。これは、相手先の企業価値や経営体制を十分に見極められないまま買収に踏み切った企業が多いことを示唆しており、当事者間に存在する情報の非対称性が、M&Aによる生産性上昇効果の発現を妨げているものとみられる。

第2-3-15図 中小企業のM&Aの動向
第2-3-15図 中小企業のM&Aの動向 のグラフ

また、中堅・中小企業を対象とした別のアンケート調査によれば、「M&A後の統合作業」を意味するPMI28という言葉を「知らない」と回答した企業は7割超に上ったほか、PMIという言葉を「知っており、実際に取り組んだことがある」と回答した企業は約3%に過ぎず、M&Aを行う際、PMIに「意欲的に取り組みたい」と回答した企業も約25%にとどまっている(第2-3-16図)。中小企業では、M&Aに関するノウハウの蓄積が必ずしも十分ではないと考えられるため、取引金融機関や外部の専門家等とも連携の上、こうしたPMIの取組を着実に実行していくことが求められる。

第2-3-16図 PMI(Post Merger Integration)の認知度と取組状況
第2-3-16図 PMI(Post Merger Integration)の認知度と取組状況 のグラフ

一方で、中小企業の中でも、合併により生産性を高めている企業は存在する。「経済産業省企業活動基本調査」の調査票情報を用いた本項の分析において、合併3年後と合併5年後の生産性上位企業の特徴をみると、全体の平均に比べ親会社を有する企業の割合が高いことが分かる(第2-3-17図)。親会社を有する中小企業では、合併に際して親会社の持つノウハウを有効に活用できていること、経営統合にかかるコストが比較的小さいグループ内の合併も含まれることが要因とみられる。

第2-3-17図 合併をした中小企業のうち親会社を有する企業の割合
第2-3-17図 合併をした中小企業のうち親会社を有する企業の割合 のグラフ

以上、本節後半では、合併が企業の生産性を向上させる効果を検証した。比較対象とする企業をコントロールして分析すると、合併は全体として企業の生産性を有意に高めることを確認した。特に、中小企業では、近年事業承継のニーズが高まる中でM&Aは増加しているが、M&Aには企業の生産性向上や賃金上昇をもたらす効果があることを踏まえると、買収相手の企業価値を適切に評価する基準の普及・確立や、M&A実施後の統合プロセスに関する知見の共有などの取組を官民が一体となって後押ししていくことが重要である。

コラム2-5 金融機関による事業承継・M&A支援と企業の生産性

本論では、近年、事業承継に関連するM&Aが中小企業を中心に増加していることを指摘したが、以下では金融機関の取組に着目して、そうした取組が企業の生産性に与える影響を確認する。

地域金融機関等をメインバンクとする中堅・中小企業を対象に、2025年初に実施されたアンケート調査によれば、取引金融機関に期待するサービスとして、日々の事業運営に直結する「取引先・販売先の紹介」、補助金をはじめとする「各種支援制度の紹介や申請の支援」に次いで「事業承継・M&Aに関するアドバイス・提案」が挙がっており、金融機関に対する事業者側の期待の高さがうかがえる(コラム2-5-1図)。

コラム2-5-1図 取引金融機関の提供サービス
コラム2-5-1図 取引金融機関の提供サービス のグラフ

こうした事業者側のニーズを背景に、地域金融機関は事業承継やM&Aの支援を積極的に行っている。地方銀行による事業承継支援の取組実績は増加傾向にあるほか、信用金庫によるM&Aの支援実績をみると、直近の2023年度はピークを付けた2020年度の件数には及ばないものの、引き続き2018年以前を上回る水準で推移している(コラム2-5-2図)。

コラム2-5-2図 地域金融機関等による事業承継・M&A支援の実績
コラム2-5-2図 地域金融機関等による事業承継・M&A支援の実績 のグラフ

地域金融機関の果たす役割は、M&Aの仲介やアドバイザリー業務にとどまらず、近年は投資専門子会社等への出資を通じて、企業の事業承継や成長支援に関与する事例が増えてきている。事業者側のニーズの高まりに加え、銀行法で定められる事業会社への出資規制等が段階的に緩和されてきた29ことも、金融機関による資金供給を促す要因となっている。地域金融機関にとっても、低金利環境が長く続き、融資以外の事業による収益確保が課題となる中で、こうした取組が新たな事業機会の創出につながっている。

このような事業会社への出資は通常、投資事業有限責任組合等のファンド(以下「投資ファンド」という。)を介して行われる。そこで、「経済産業省企業活動基本調査」の調査票情報を集計すると、親会社に投資ファンド(地域金融機関以外が運営主体となっているものを含む。)を有する企業数は、2017年度以降、増加傾向にある30。このうち、投資ファンドのもとで合併が行われた企業では、サンプル数が少ない点には留意する必要があるものの、合併後に営業利益率とROAが共に高まっていることが分かる(コラム2-5-3図)。

コラム2-5-3図 親会社に投資ファンドを有する企業の動向
コラム2-5-3図 親会社に投資ファンドを有する企業の動向 のグラフ

以上を踏まえると、特に事業承継等のニーズのある企業に対しては、資本性資金の提供とM&Aに関するアドバイザリー支援を一体で行っていくことが、企業の生産性向上を後押しする上で効果的であると考えられる。


1 この間の企業行動と生産性については、新屋ほか(2005)、青木ほか(2024)、福永ほか(2024)を参照。また、具体例を交えた議論としては氷見野(2023)がある。
2 各種の成長促進策の効果については、浦沢ほか(2024)を参照。
3 内閣府(2025)第3章。
4 新型コロナウイルス感染症による影響のあった2020年頃についても、各種の施策のもとで、緩和的な金融環境は維持された(直野(2025)も参照)。
5 企業の現預金保有動機について、マクロ的な指標から概観した分析としては、日本政策投資銀行経済調査室(2024)がある。
6  内閣府(2025)第2章第2節参照。もちろん、成長率や物価はマクロでみた(名目)賃金の主要な決定要素であるから、この間の成長率・物価の伸びが実際に低かったこと自体、ここで述べたような硬直性がなかったとしても、賃金が上がらない要因となる。
7 Who to Whomともいう。
8 例えば、現金は、その定義上すべて中央銀行の負債であり、その多くを家計が保有している(2025年9月末のデータでは、現金121兆円のうち83%(101兆円)を家計が保有している)。したがって、現金が発行されると、かなりの割合で中央銀行と家計との間のFWTW関係が発生することが推測される。
9 現行基準(08SNA)に基づいた統計の始期。
10 ETFは証券投資信託の一種であり、資金循環統計では金融機関と扱われる(ただし、REITは民間非金融法人企業として扱われる)。
11 実物資産も含めたバランスシートは、資産と負債が一致していると考えられることによる。
12 計算過程は付注2-7を参照。
13 このほか、影響力係数や感応度係数でみた海外のプレゼンスの高まりは、国内主体が海外主体との経済的結びつきを強めてきたことの表れと解釈できる。
14 このほか、需要が次々と後続の需要を誘発していくとの想定がおかれていること(「波及の中断」が考慮されない)、需要が波及するのにかかる時間について考察できないといった、産業連関分析と同様の注意点がある。
15 この点で、金融連関分析はルーカス批判(経済主体の行動によって経済構造そのものが変化してしまう場合、観察されたデータの関係から導出したモデルの妥当性は失われてしまう、という主張。詳細は加藤(2006)を参照)を克服しうるものとはなっていない。
16 例えば、非上場企業を含む合併の効果を分析した先行研究としては、滝澤ほか(2009)がある。合併元企業の生産性は合併直後に悪化した後、改善する傾向にあることを示しているが、合併直前との比較で生産性が高まっているとの結論は得られていない。
17 「経済産業省企業活動基本調査」の調査対象は、従業者50人以上かつ資本金又は出資金3,000万円以上の全企業とされており、カバレッジは広いものの、従業者50人未満や資本金又は出資金3,000万円未満の企業が含まれていない点には留意する必要がある。
18 後の分析で少なくとも合併1年前から合併1年後の調査票情報が必要となるため、基準時点は2010年度から2022年度までとしている。
19 ここでは、資本金10億円以上を大企業、資本金1億円以上10億円未満を中堅企業、資本金1億円未満を中小企業と定義する。なお、非合併企業については、付図2-3を参照。
20 以降の分析では、少なくとも合併1年前から合併1年後までの連続した調査票情報が得られる企業を合併企業として集計している。具体的には、合併1年前から合併1年後までのデータがある企業、合併1年前から合併2年後までのデータがある企業、合併1年前から合併3年後までのデータがある企業、合併1年前から合併4年後までのデータがある企業、合併1年前から合併5年後までのデータがある企業が混在している。非合併企業は、2009年度から2023年度までの15年間連続で調査票情報の得られる企業を対象に集計している。対象企業の時系列ウェイト表については、付表2-4を参照。
21 ROAは、総資本回転率(総資産に対する売上高の比率)と当期純利益率(売上高に対する税引後当期純利益の比率)の積であり、貸借対照表の項目(総資産)の影響を受ける点が、キャッシュフロー比率や営業利益率との主な違いである。
22 既存の研究にもみられるように、使用する生産性指標によって推計結果が異なる場合があることも考慮し、本項では複数の財務指標を分析に用いることとする。
23 以降の推計では、いずれかの生産性指標がサンプルの上位・下位それぞれ1%以内に該当する場合は外れ値とみなし、その企業は推計対象には含めていない。例えば、2013年度に合併をしたA社のデータが2012年度(合併1年前)から2018年度(合併5年後)まで存在したが、A社の営業利益率が2014年度のみサンプルの上位1%以内に該当したとする。この場合、A社は2012年度から2018年度の全期間で、推計の対象から外す。
24 ここでは、全規模全産業の推計結果を示している。産業別や規模別の推計を含めた詳細は、付注2-8を参照。
25 合併1年前と合併5年後を比較したもの。詳細は付注2-8を参照。
26 前述の通り、本項では合併元企業(買収側)の業種のみに着目しているため、合併対象企業(被買収側)は製造業とは限らず、非製造業の場合もあると考えられる。ここで詳細には論じないが、滝澤ほか(2009)が指摘するように、生産性上昇効果は同業種間の合併か、異業種間の合併かによって異なることも想定される。
27 このほか、大企業では純資産比率が有意に低下している。大企業では、合併時の所要資金を銀行借入等の有利子負債で賄う場合が比較的多いとみられ、その結果、純資産比率が低下した可能性がある。
28 Post Merger Integrationの略であり、M&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なプロセスのことを指す。
29 銀行が事業会社の株式を5%超保有することは、投資専門子会社を通じた株式取得等の一部例外を除き、原則として禁止されているが(いわゆる「5%ルール」)、例外が認められる範囲は段階的に広げられてきた。例えば、2021年の銀行法改正により、地域活性化に向けた取組を後押しする観点から、①投資専門子会社が行うことのできる業務として、出資先企業に対するコンサルティング業務等が新たに追加されたほか(従前は事業会社への出資とそれに付随する業務に限定)、②地域活性化事業会社(事業の集約や再構築により地域の活性化に取り組む非上場企業)に対し、投資専門子会社を通じて100%まで出資することが可能になった(従前は50%までの出資に制限)(金融庁(2021))。
30 調査票情報からは確認できないものの、投資ファンドが少数株主となっている企業も存在すると考えられることから、株主に投資ファンドを有する企業数は、更に多いものとみられる。
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