第1章 日本経済の動向と課題

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我が国経済は、2025年における米国の関税引上げという逆風に見舞われながらも、内需を中心とした緩やかな回復が続いている。

米国の関税措置については、2025年3月以降、自動車等に品目別関税が課され、同年4月からは相互関税が課された中、これまで自動車産業を中心に、企業収益や米国向け輸出の減少といった形で影響がみられている。同年7月の日米間の関税交渉の合意により、相互関税による追加関税率は25%から15%へ、これに伴って自動車・同部品の関税率は合計27.5%から15%へと引き下げられ1、ひと頃に比べれば米国関税措置による不透明感は緩和してきている。ただし、多くの米国向け輸出製品にこれまでより高い関税率が課される中、各国における米国との関税交渉も中国など複数の国で続いており、こうした影響には引き続き注視が必要である。米国通商政策の動向は、引き続き、我が国の緩やかな回復を下振れさせるリスクの一つと考えられる。

また、食料品など身近な物の価格の上昇が続いていることにも注意が必要である。消費者物価(総合)は、2022年8月以降前年同月比で3%前後の上昇率が続いており、物価高の継続が消費の回復を抑制する要因ともなっている。春季労使交渉における高い賃上げ率や最低賃金の継続的な引上げといった所得環境の改善が我が国景気を下支えしてきた中で、今後も2%の物価安定目標を上回る物価上昇率が継続することになれば、これも我が国の緩やかな景気回復を下振れさせるリスクとなろう。物価上昇を上回る賃金・所得の増加を早期に実現し、長引く物価高を乗り越えていくことが、我が国が民需主導の成長型経済へ移行していくための重要な課題である。

こうした状況を踏まえ、本章では、第1節において、2025年末頃までのマクロ経済の動向について、米国の関税措置による影響の波及経路を念頭に、輸出、生産、企業収益、設備投資、雇用、消費などの動向を確認していく。第2節では、物価と賃金の動向やその背景を振り返った上で、賃金と物価の好循環の実現に向けた課題を整理する。


1 2025年7月23日の日米間での合意により、既存の関税率が15%以上の品目には相互関税は課されず、15%未満の品目については既存の関税率を含め15%が課されている。それまで25%の追加関税が課されていた自動車(4/3~)、同部品(5/3~)についても、既存の税率(2.5%)を含めて、相互関税の税率上限と同様の15%とすることとされた。自動車・同部品以外の製品は8月7日から遡及して適用、自動車・同部品については9月16日より適用となっている(自動車及び同部品は、約5か月間にわたり25%の追加関税が課されていた)。
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