第3章 コロナ禍を経た企業の倒産・起業の動向

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第1章で確認したように、我が国経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかな回復基調にあり、特に、企業部門については、収益・業況・投資計画の各面において堅調な状況が継続している。この中で、企業の倒産件数については、コロナ禍期間において、過去に例を見ない強力な資金繰り支援策により政策的に抑制された後、経済活動の正常化の下で、増加傾向で推移し、2024年春には過去10年程度で最も高い水準まで達した。こうした倒産の増加については、経済の悪化を示す指標として注目されることが多いが、政策的に大幅に抑制された後の増加であり、また、経済がデフレ状況に陥る以前には、現在を大きく上回る倒産件数が生じていたこともある。特に、倒産を含めた企業の退出が、マクロ経済環境の急速な悪化により連鎖的に生じているものではなく、倒産後の事業再構築や起業が同時に生まれているような状況であれば、資本や労働といった資源が、適切な価格シグナルの下で、市場において効率的に配分されているという新陳代謝のダイナミズムを示すものであり、経済全体の生産性向上に資するものと言える。

こうした認識の下、本章においては、企業の倒産や起業に係る近年の動向や特徴についてレビューする。第1節では、コロナ禍後における企業の資金繰りや業績動向のほか、倒産の状況を詳細に確認した上で、企業統計の調査票情報等をもとに、コロナ禍前と比べた最近の倒産企業の特徴や、倒産の蓋然性が相対的に高い企業の状況について分析する。また、倒産後の債務再編等を通じた事業再構築の効果についても確認する。次に第2節においては、企業の新規創出・参入サイドである起業に着目し、主要先進国と比較して、我が国において起業が限定的であった背景等を確認した上で、法人番号という新しいビッグデータに基づく近年の起業件数や起業率の試算等を行う。その上で、パネルデータをもとに、起業後の経営状況の変遷や、経営状況が相対的に良好なスタートアップにおける財務面の特徴等について分析する。

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