第1章 マクロ経済の動向
我が国経済は、名目GDPが2024年4-6月期に年率換算で600兆円を初めて超え、設備投資も33年ぶりに過去最高を更新する年率換算106兆円を超えるなど、近年にはない明るい兆しがみられている。特に、物価と賃金が共に動き出した中で、2024年の春季労使交渉においては、33年ぶりとなる高水準の賃上げが実現し、個人消費の下支えに寄与するなど、賃金と物価の好循環が実現しつつある。しかし、企業部門は堅調さを維持しているものの、賃金・所得の伸びが物価上昇を安定的に上回る状況には至っておらず、個人消費は力強さを欠いた状態が続いている。このため、現在我が国経済は、デフレに後戻りしないか、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの分岐点にある。また、2020年5月を谷として始まった今回の景気回復局面は50か月以上に達し1、過去の回復局面の中でも相対的に長期化している中、何らかの負の経済ショックを契機に景気回復の動きが阻害されるという可能性には十分注意が必要な状況となっている。
本章では、まず第1節において、主に2024年中の我が国の実体経済の動向について、家計・企業・対外部門といった様々な角度から詳細に振り返る。その中で、今回の景気回復局面の特徴を、近年の長期回復局面と比較するとともに、景気の先行きを見ていく上での留意点の一つとして、現在の貿易構造等からみた通商政策の影響について検討する。第2節では、2024年末までの物価動向を振り返った上で、賃金上昇、企業の価格転嫁、物価上昇の広がり、予想物価上昇率など、物価の背景を様々な角度から点検し、デフレ脱却に向けた現在の状況と課題を確認する。
1 なお、景気基準日付(景気の山・谷)は、景気動向指数研究会における議論を踏まえて内閣府経済社会総合研究所長が事後的に設定している。