第1章 日本経済の現状(第4節)

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第4節 まとめ

本章では、最近の景気動向を概観するとともに、外需の弱さが長期化する中で内需が持ち直しを続ける背景、消費税率引上げの影響を含めた家計部門の雇用や支出の状況、外需の弱さが企業部門の生産、収益、投資に与える影響について確認した。

外需の弱さが長期化する中で内需が持ち直しを続ける背景としては、①外需の減少ペースが景気を一気に冷え込ませるような急激なものではないこと、②外需の影響を受けにくい非製造業の堅調さが企業収益や雇用・所得環境といった我が国のファンダメンタルズを支えていること、が指摘できる。生産増が雇用・所得増を、雇用・所得増が消費増を、消費増がまた生産増をもたらすという自律性の高い経済の好循環が機能している可能性がある。また、我が国の賃金は、労働需給が引き締まる中で、パートタイム労働者や元々賃金水準の低い人手不足業種を中心に緩やかに増加しているが、今後の更なる賃金上昇のためには、一般労働者やより幅広い業種で賃上げの動きが広がっていくことが必要である。

家計部門の動向についてみると、雇用・所得環境の改善が続く中で、個人消費は、振れを伴いながらも緩やかな持ち直しを続けている。2019年10月に実施された消費税率引上げの影響について全体的な評価を下すには時期尚早であるものの、2019年12月半ばまでの小売販売の動向を商品別に確認する限りにおいて、総じてみれば、消費税率引上げに伴う駆け込み需要とその反動減は前回ほどではないとみられる。より長い目で家計消費全体の推移をみると、所得の増加に対する増勢が緩やかになっているとの指摘があるが、その要因としては、高齢世帯割合の増加による平均的な世帯当たり消費額の押下げが寄与していると考えられる。

企業部門の動向については、外需が弱い中で、製造業の生産・収益・投資の下振れが確認されるが、その一方で、非製造業の活動は底堅く推移しており、経済全体の成長を支えている。設備投資については、生産能力増強や維持・補修を目的とする生産設備の設置や工場施設の建設といった従来型の投資には弱さがあるものの、研究開発やソフトウェア投資が伸長しており、我が国企業は、AIやロボット等の新技術実装を始めとする「Society 5.0」の実現に向けた取組を着実に進めているものと考えられる。

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