第1章 世界経済の激変下で弱まる国内景気
アメリカにおけるサブプライム住宅ローン問題の勃発に端を発した金融資本市場の混乱は、その後固有の要因を抱えていた欧州にも飛び火して金融危機の様相を呈し、2008年秋以降は更に深刻化し、欧米以外の新興諸国にも広がりをみせている。金融危機の影響は実体経済面でも顕在化し、アメリカ、欧州は景気後退に陥り、アジア経済にも減速の動きがみられている。
このように世界経済が激変する中、日本経済にも大きな影響が及んでいる。日本経済は、世界経済の減速に伴う輸出の減少、原油・原材料価格の高騰などを主因として既に景気後退に入っているが、当初、その下降テンポは比較的緩慢とみられた。しかし、2008年秋以降は実体面、金融面ともに事態が急速に変化しつつあり、景気の更なる下押し圧力が高まっている。本章では、こうした2008年の日本経済の動きを概観し、過去の後退局面と対比するとともに、海外要因との関係が深い物価、輸出、金融資本市場の状況をやや仔細に検討する。あわせて、主要な政策面の動きについても紹介する。