「日本経済2008」刊行にあたって

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「日本経済2008」刊行にあたって

内閣府経済財政分析担当は、毎年末に「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供していますが、今年の「日本経済2008」では、今、急速に厳しさが増している景気後退の実相について分析をしています。

まず、第1章において、世界の金融資本市場が100年に一度といわれる危機に陥り、金融の激変が世界経済を弱体化させている中で、日本経済がどのように推移したかを分析しています。分析を通じて、[1]日本経済は2007年の年末頃までに景気後退局面に入った可能性が高いこと、[2]2008年秋以降、企業部門は異例の速さで悪化しつつあること、[3]景気後退のテンポが速まり、長期化することにより、デフレに逆戻りする懸念もあること、といった点を指摘しています。

続く第2章では、企業部門について、生産、企業収益、設備投資等の実体面や、企業金融や倒産の状況等の金融面の動向について点検しています。その結果、[1]設備の稼働率の更なる低下が予想される中で、企業の設備投資意欲の一層の弱まりが懸念されること、[2]株価が下落し、不良債権処分損も膨らむ中で、金融機関が「自己資本比率の維持が制約となって貸出を増やせない」といった状況に陥らないようにすることが課題となること、といった点を指摘しています。

第3章では、家計部門について、個人消費の動向や雇用情勢、家計による住宅取得の動向について点検しています。その結果、[1]個人消費も住宅投資もおおむね横ばい圏内でとどまってきたが、雇用情勢が悪化し、大きく落ち込む可能性があること、[2]雇用情勢については、非正規雇用を中心に急速に悪化し、雇用者数が減少に転じることが懸念されること、[3]景気の先行きについては、個人消費や住宅投資の動向が重要なこと、といった点を指摘しています。

景気の後退局面は、深刻化そして長期化するおそれが高まっています。こうした状況から脱するためには、世界的な金融危機が終息へ向かい、世界経済が正常な状態に復していくことが必要ですが、日本経済としても、新たな成長への展望が拓けるよう、体質転換を進めることが重要になっています。

本報告書の分析が、日本経済の現状に関する認識を深め、その先行きを考える上での一助になれば幸いです。

平成20年12月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
齋藤 潤

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