第4章 識者の意見
石黒 彩
日本マザーズ協会オフィシャルサポーター
「働きながら子育てをする女性にやさしい社会を」
東京で暮らしていると、正直なところ、少子化ということをあまり肌で感じない。若い世代が都心部に集中しているせいもあってか、保育園や幼稚園は非常に多く、小学校もマンモス校。身近にたくさん子どもがいて、少子化と聞いてもあまり実感が湧かないというのが私たち世代の感覚ではないでしょうか。
また一方で、周囲には40代になっても結婚していない女性は多く、いわゆるバリバリ働く女性が結婚していないという現実も目の当たりにしています。
私は若いうちに子どもを出産して、仕事に復帰したけれど、そうしたライフスタイルを取り戻すことは可能だと感じます。若い世代の人たちには、そういう選択肢もあるということを伝えていけたらと思っています。
子育てと仕事を両立させていく上で、ハードルになるのが職場の理解だと思う。子どもが大きくなるたびに、親がやらなければいけないことは増えていく。しかし、私たちはその都度職場に謝って休みをとり、どちらにもなんだか気まずい感じでこなしていくしかない状態。子どもの行事に参加することは素晴らしいことだと評価してもらえるような職場であればもっと働きやすくなりますよね。子どもの遠足に参加しないと、自分のキャリアに傷がつく、そんな社会になればいいですね。
いま、私の子どもが通う小学校では、母親たちが仕事をしながらどうやってうまくPTAに参加できるか改革をしています。女性が働くことが重要なことだと教育現場も感じているんですね。
子育てをする環境ということに関しては、東京が本当に一番いいのだろうかと考えることは多々あります。もちろん、東京は情報量が多く、習い事や学校など子どもに選択肢を多く与えられるという面があり、その点では大きな差がありますが、問題がいろいろと起きるたびに、北海道だったらもっとのんびりと子育てできるんじゃないかと感じることはあり、食べ物、自然、治安の良さなど、魅力的な部分は多いですよね。若い世代に、この地域で子どもを産んで子育てしていくとこんなにすばらしいことがあるのだということをもっと広めていくことも必要ですよね。一方、不安なところといえば、子どもが急病になったときの病院や移動手段などで、もし自分が地方で子育てをするときに、何が場所を選ぶポイントになるか考えてみると、そういう点が非常に重要になってきます。
都会と地方、どちらにもいい面はあって、それぞれの土地の持っている特色はすごくたくさんあります。それをどう生かせるのかは、若い力が、今まである素敵なものを、新しい発信方法で広げていくというのがいいだろうと思うし、その力になるのがきっと子どもたちですよね。