第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題
第2節 経済をめぐる現状と課題
Q14 日本では格差の問題はどのようになっていますか。
A14
●格差の現状
格差を測る指標の一つに「ジニ係数」がある。これは、所得の分布について、完全に平等に分配されている場合と比べて、どれだけ偏っているかを、0から1までの数値で表したものである。仮に完全に平等な状態であれば、ジニ係数は0となり、1に近くなるほど不平等度が大きくなる。
近年、人口構成の高齢化、単身世帯化が進む中で、ジニ係数で見ると緩やかに格差が拡大してきている。これは、高齢者の所得には人生を通じて働いて積み重ねてきた結果が反映されるため、もともとジニ係数が大きくなるところ、高齢者の比率が高まると全体のジニ係数が高まることになるという理由と、若年層において近年正規・非正規労働の分化などが生じているために格差が広がる傾向にあることが主な理由である。
ただし、社会保障制度などを通じた再分配後のジニ係数はほぼ横ばいとなっており、社会保障制度などが再分配機能を発揮していることがわかる。
高齢化の進展を和らげる人口問題への取組、若年層の貧困問題の適切な対応、社会保障制度の持続可能性の確保など、格差の問題は、重要な経済・社会政策の真価が問われる重要な問題である。
●成長と格差
経済成長と格差の関係については、市場原理の下で経済成長すると、勝者と敗者に分かれるために、格差を拡大させるという面と、一方で、経済成長が停滞すれば再分配に充てられる果実が生まれないため、それに伴い格差が固定化するという面がある。
また、所得格差が拡大すると、経済成長が低下する、という方向性での分析がある。近年、多くの先進諸国では、過去30年で富裕層と貧困層の格差が最大となる一方、中長期的な成長率が低下しているとされる。成長のエンジンは人的資本であり、格差の存在、程度が人的資本の蓄積に悪影響を及ぼさないことが重要である。
また、経済成長の果実の分配は、市場原理に委ねても相応に進むという考え方がある。経済にはそういう面もあると考えられるが、人口急減・超高齢化へ向かっている日本の状況に照らせば、前述のとおり、社会保障制度などによる再分配をきちんと行いながら、人口問題や若者層の貧困問題へ適切に対応していくことが重要である。
●地域の格差
日本では戦後、三大都市圏を中心とした都市圏と、農漁村を含む地方圏との間での所得格差が続いてきた。そして、こういった所得格差と人口移動の間には密接な関係があり、より所得の高い魅力的な地域に、地方から若年層を中心に人口が流出してきたと考えることができる。
一方で、都市圏と地方圏の格差を考える際に、単純に所得格差のみを比較してよいのかという問題もある。地域によって生活に必要な費用は異なり、また物価の違い、住宅環境の違いなどがある。単に所得の金額だけを比較してどちらが豊かかを論じることは必ずしも適切ではないであろう。
なお前述したとおり、近年、経済の水準というよりも経済状況の好不況が、若年層の人口移動や出生率に影響を及ぼす傾向が出てきているとみられる。