第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題
第2節 経済をめぐる現状と課題
Q15 世界の中の日本経済の位置づけはどのようになっていますか。
A15
●世界でのプレゼンス
世界経済における日本のプレゼンスは弱まりつつある。世界のGDPに占める日本の割合の推移をみると、1980年に9.8%だったものが、1995年には17.6%まで高まった後、2010年には8.5%になり、ほぼ30年前の位置付けに戻っている。現在のまま推移した場合には、国際機関の予測によれば、2020年には5.3%、2040年には3.8%、2060年には3.2%まで低下する。こうした「現状のまま推移した場合」の予測を変えていく努力が求められる。
なお、約10年前の経済財政諮問会議の専門調査会報告によれば、やはり長期的に世界のGDPに占める日本の割合は低下していくと予測していたが、当時の報告よりも現時点での見通しはさらに厳しくなっているといえる。報告は、1995年から2004年の実質GDP成長率等のトレンドが今後も継続するという仮定を置き計算した場合、世界経済に占める日本のシェアは、2030年には2004年の4分の1程度に大幅に低下すると試算した。経済規模では、2014年頃に中国に追い抜かれ、2030年頃にインドにほぼ肩を並べられ、2030年には、米国、中国、ユーロ圏に次いで、世界で4番目となっていると見込まれていた。構造改革が進まない場合、2030年には、一人当たりGDPでみても、米国やユーロ圏を大きく下回り、韓国が日本を上回っていると見込んでいた。実際には、中国に名目GDPでは2010年に抜かれており、当時の予測よりも早いペースで日本経済の立ち位置が弱くなってきているといえる。
●日本のブランド力
グローバル化が進み、ヒト、モノ、カネ、ジョウホウの往来が自由になってくると、単に価格が安いことだけでは競争力を持たなくなってくる。品質や特徴的な価値が改めて見直されるようになると、日本の良さが再認識される可能性がある。日本独自の自然や歴史・文化を背景とした個性、日本発のビジネスの仕組みを発展させた新たなビジネスモデル、ロボットなどの先進的な技術などの組み合わせによって、改めて競争力を強めていく余地は十分にあろう。
●世界への貢献
少子化、高齢化、低成長はいずれの先進諸国でも直面している課題である。日本の少子化や高齢化は特に深刻であるが、これらに起因する諸課題への解決の処方箋が得られれば、それは他の先進諸国に先駆けたモデルを提示するものとなる。
世界でのプレゼンスを維持し、政治、経済、金融などの領域でしっかりと地位を占めて積極的な役割を果たすとともに、新たなフロンティアにおいて独自の貢献をしていくことが期待される。