第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題
第2節 経済をめぐる現状と課題
Q13 デフレによってどのような問題が生じていますか。
A13
●デフレ脱却の必要性
近年の日本経済は、長きにわたって持続的に物価下落が継続する状態である「デフレ」に悩まされてきた。デフレは単に物価が下落するということにとどまらず、経済全体に様々な影響を与える。
デフレは物価-モノの金銭上の価値-の問題なので、金融政策をはじめとする政策対応が重要となる。特に、デフレ脱却に向けた政策としては、「期待」に働きかけることが重要だということが分かってきた。「期待」に働きかける取組によって、期待インフレ率が上昇し、それにより実際の需要・生産が増大するという経済の好循環が徐々に実現しつつある。
デフレは、モノとカネの相対的な関係で決まる部分が大きいが、人口が急減し、モノに対する需要が急減すれば、やはりデフレになると考えられる。そうした意味でも、早期のデフレ脱却が望まれる。
●デフレが各分野に与える影響
デフレは経済全体に様々な影響を及ぼしていると考えられる。
個人消費に関しては、デフレ下では、家計は継続的な物価下落を織り込み、消費を将来に先送りするため、貯蓄が積み上がり、モノが売れなくなる。消費が停滞すれば、それに伴い、生産も停滞し、企業業績へ影響を与えるほか、新たな設備投資を抑制するなど、経済全体にマイナスの影響を与えることとなる。
企業にとっては、物価の持続的な下落は、実質金利の高止まりを意味する。企業の期待成長率を実質金利が上回り、新たな設備投資を抑制することにつながる。また、新規の設備投資の減少が、個々の企業の生産性の停滞を招き、経済成長にとり、マイナスの影響を与えることとなる。
雇用に関しては、賃金を引き下げることは容易ではないため、企業は正規雇用を抑制し、全体に占める非正規雇用のウェイトを高めることで人件費を抑制しようとする。非正規雇用者の増加は、不安定な立場に置かれる労働者を増やし、またそれに伴い消費が減少する。
政府の財政運営に関しては、経済活動が停滞することによる税収の減少がもたらされる。これにより、財政健全化へ向けた取組が遅れ、政策の機動力が低下し、国民福祉へのマイナスにつながる。
●将来への展望
デフレから脱却した場合には、モノの価値がカネの価値よりも低下する状態から脱することになり、消費するよりも貯蓄する方が得するという状態ではなくなる。このため、消費を無理に先送りするのでなく成長に応じた経済活動が行われ、それと合わせて企業も設備投資を行い、民間部門の活性化によって政府部門も税収によって適切な公共サービスの提供を行うことができることになる。人口急減・超高齢化の流れを断ち切るためには、思い切った改革が必要である。そうした意味でも、経済の循環の早期の正常化が求められている。