第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題
第2節 経済をめぐる現状と課題
Q11 人口急減・超高齢化は経済成長にどのように影響しますか。
A11
●経済成長への影響
人口規模、人口の急減及び人口構成が経済成長にどのような影響を与えるかについて、経済成長を考える際に一般的な考え方である成長会計に基づいて考える。成長会計では、経済成長を決める要因は、労働投入、資本投入及び全要素生産性であるとされる。
人口が減少することは、労働投入の減少に直接結びつく。技術進歩などによる生産性上昇に伴って成長率が上昇するのに加えて、人口増によって労働力人口が増加して成長率が高まることを「人口ボーナス」と呼び、この反対の現象を「人口オーナス」と呼ぶ。今後、人口オーナスに直面し、成長率が低減することが懸念される。また、人口減少は資本投入へも影響を及ぼす。例えば、人口が減ることで必要な住宅ストックや企業における従業員1人当たり資本装備は減少することになる。また、高齢化が進むことで、将来に備えて貯蓄を行う若年者が減少し、過去の貯蓄を取り崩して生活する高齢者の割合が増えることで、社会全体で見た貯蓄が減少し、投資の減少にもつながる。
生産性についても、生産年齢人口が増えていく経済と減っていく経済について比較すると、生産年齢人口が減っていく経済では生産性が落ちる可能性が指摘されている。例えば、人口規模が維持されれば、多様性が広がり、多くの知恵が生まれる社会を維持することができる。また、人口構成が若返れば、新しいアイディアを持つ若い世代が増加し、さらに経験豊かな世代との融合によってイノベーションが促進されることが期待できる。逆に言えば、人口が急減し、高齢化が進む社会においては、生産性の向上が停滞する懸念がある。
人口の減少や高齢化の進行は以上のように、経済成長に対して3つの経路を通じて影響を与える可能性がある。
また、人口構成の変化も経済成長に影響を与える。現在の財政や社会保障制度を前提とすれば、人口急減・超高齢化の進展の下では、社会保障負担の増大などを通して現役の働き手の世代の負担増加を続けていく懸念がある。負担と受益の関係が大きく損なわれると、経済へ悪影響が生ずるおそれがある。世の中の仕組み、制度や政策は、その時々の状況にあわせて見なされていくものではあるが、問題は人口の規模や構成といった大きな変数が急激に変化していくその速度である。急激な変化の中で、世の中の仕組みが柔軟に変わっていかない場合には、いろいろな歪みが生ずることになり、また、急速に仕組みが変わっていく場合には、将来の展望を描きにくくなる。いずれの場合であっても、安定して持続的に経済活動を行っていく上ではマイナスになり得る。
以上のように、人口急減や高齢化の進行は、経済へ与える影響が非常に大きいと考えられる。もっとも、日本が直面する状況は、過去に例のない新しい事象である。人口急減・超高齢化の流れを緩和する取組の重要性はもちろんであるが、ある程度の人口減少・超高齢化のなかでも経済発展を持続できるよう、過去のパターンにとらわれず、新しい発想で立ち向かっていく必要があると言えよう。