第3章 成長力拡大に向けた投資の課題 第3節

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第3節 デジタル化を進める上での課題

第1節でみた通り、感染拡大以降、デジタル化の重要度は高まっている。こうした事実を踏まえ、特にデジタル化の実装を担う人的資本の蓄積との関係に注目し、デジタル化を進める上での課題について考察する。さらに、デジタル化の推進が脱炭素化や地方創生といった社会課題に及ぼす効果についても考察を加える。

1 デジタル投資の現状とその背景

我が国のデジタル化が諸外国対比で劣後してきた背景として、人的資本の蓄積不足がIT投資の量と質の両面で下押し要因となってきた可能性を指摘する。次に、我が国のデジタル人材不足の原因について考察する。

我が国のデジタル化の歩みは諸外国に劣後

第1節で確認した通り、感染症による社会の構造変化に対応しつつ、気候変動、少子高齢化等の社会的課題を解決し国民生活の持続的な幸福(Well-being)を実現するとともに、課題解決を通じて新たな市場を創造する手段としてデジタル技術の重要性が高まっている。

もっとも、我が国のデジタル化の歩みは主要先進国に劣後してきたという評価が多い71。OECDのデータを用いて、2000年以降のIT投資額を国際比較すると、主要先進国ではIT投資が増加傾向にあるのに対し、我が国は横ばい圏内の動きとなっている(第3-3-1図(1))。また、IT資本の生産性(=GDP/IT資本ストック)をみると、諸外国対比で低い水準にとどまっており、IT投資を付加価値向上に十分結び付けられていない(第3-3-1図(2))。IT資本の生産性は、分子のGDPが非IT資本や労働投入などの様々な要因により変動するため、これだけをもって我が国のIT資本の付加価値創出効果が低いと判断することはできないが、我が国企業がIT技術を付加価値創出の観点から有効活用できていない可能性を指摘する先行研究は複数存在する72。これらを踏まえると、我が国のIT投資は量と質の両面で課題を抱えてきたと考えられる。

人への投資はソフトウェア投資を量・質の両面で押上げ

我が国のデジタル化の遅れについては、様々な要因が複合的に作用した結果と考えられるが、人的資本の蓄積の不足が原因として指摘されることも多く73、内閣府政策統括官(経済財政分析担当)(2022)で指摘した通り、我が国ではアメリカ企業対比でIT人材不足を感じる企業の割合が高い74

先行研究や企業による指摘を踏まえると、我が国ではIT人材の不足が深刻であり、そのことが原因となり、<1>IT技術の導入が遅れ、ビジネスモデルを革新する新規技術の活用アイデアが生まれない、<2>ITベンダー企業への外注の下で進む業務効率化にデジタル投資が偏重する、<3>システム導入後も従業員が業務に有効活用できない、といった事例が発生している可能性がある。すなわち、IT資本を利用する従業員の質が企業間におけるIT投資の規模や効果の差を生んでいる可能性が懸念される。こうした問題意識から、経済産業省「企業活動基本調査」の調査票情報を活用し、企業の教育訓練投資による人的資本の蓄積(以下「教育訓練ストック」という。)が企業のソフトウェア投資の量やその効果に及ぼす影響を実証分析した75。その結果、第一に、教育訓練ストックの蓄積により、企業のソフトウェア投資が押し上げられる関係が示された(第3-3-2図(1))。このことは、IT投資を実行できる人材の存在がIT投資を促す傾向を示唆している。第二に、教育訓練投資に積極的な企業ほど、ソフトウェア投資による労働生産性の押上げ効果が大きいことが確認された(第3-3-2図(2))。このことは、IT技術を有効活用できる人材の存在が、IT投資の付加価値創出効果を高める可能性を示唆している。

これらの結果を踏まえると、デジタル化と並行して人材教育を進めていくことが企業の成長と雇用者の労働生産性上昇の両面から重要である。

我が国のデジタル人材は量・質の両面で諸外国に見劣り

このように、我が国がデジタル化を進めていく上では、人的資本の蓄積が極めて重要である。もっとも、上述した通り、我が国はIT人材の不足感を訴える企業が多くなっている。そこで、IT人材の量と質についての国際比較を行う。

まず、就業者に占めるIT人材の割合をみると、我が国は欧米諸国対比で低くなっており、IT人材の量自体が不足感の一因になっていると考えられる(第3-3-3図(1))。次に、IT人材のデジタル競争力に関する国際的な調査76をみても、我が国は総合順位で64カ国中47位と低位である(第3-3-3図(2))。内訳項目をみると、「教育評価(PISA-数学)」は5位となっており、基礎的な数学教育の高さが競争力を押し上げているが、「国際経験」や「デジタル/技術スキル」といった実務的な能力に直結する項目は、それぞれ49位、64位と特に低位となっており、我が国の弱みとなっている。

IT専門雇用に対応した賃金・処遇体系が整備されておらずIT人材が偏在

IT人材の不足感に拍車をかける背景として、第一に、IT人材の偏在がある。IT人材が雇用されている業界をみると、我が国では、欧米対比でIT企業への集中度が高く、非IT企業側にIT技術者が少ない(第3-3-4図(1))。IT技術者の偏在が顕著な背景として、ジョブローテーションを前提としたメンバーシップ型雇用77が一般的となっている日本の雇用慣行の影響も指摘できるであろう。海外では、「職務記述書(ジョブディスクリプション)」で定められた職務を行うことを前提に、専門人材の雇用が行われることが一般的である。採用後も、職務記述書で定義された職務範囲の中で人事評価が行われる。実際、諸外国では8割以上の雇用者が、採用に際し職務内容について何らかの説明を受けているが、我が国では4割未満となっている(第3-3-4図(2))。この結果、我が国では、ITスキルを活かしたい就業者が非IT企業のIT専門人材として雇用される余地がそもそも限定的であることに加え、入社後の賃金・処遇体系や研修体系も専門人材の育成に沿わないケースが多い。

企業によるIT技術の学び直しにも量・質の両面で課題

第二に、IT人材の学び直しの環境の観点からも課題が指摘できる。我が国企業は、そもそも教育訓練投資(対付加価値比率)が欧米諸国対比で少なく78、またデジタル化の必要性が高い業種において教育訓練を受けた就業者の割合が低い傾向79が指摘されてきた。こうした事実は、IT人材育成のための教育訓練投資額自体が諸外国対比で少ない可能性を示唆している。

さらに、教育訓練の質についても評価を試みよう。IT人材の学び直しの方法別の実施状況をみると、日本では、「書籍・雑誌による情報収集」や「WEB上での情報集」といった自主的な情報収集による学び直しを行う技術者の割合は高く、学びへの意欲は決して低くないと推察される。一方、「WEB講座による学習」や「社内の研修・勉強会への参加」等の企業側から用意される場合が多い学び直しの機会を利用する割合が低い(第3-3-5図(1))。さらに、国際成人力調査80によれば、企業の研修や通信教育などの再教育制度の効果を実感している者の割合が調査対象国の中で最下位となっている(第3-3-5図(2))。このように、教育訓練の内容が利用者のニーズに合致していないことを背景として、企業が提供する再教育制度を利用する雇用者が少なくなっている可能性が懸念される。この点に関し、日本ではそもそも従業員のITリテラシーレベルを正確に把握できていない企業の割合が高いことも併せて考えると81、教育訓練の量的な充実に加え、従業員が有するスキルと必要なスキルとのギャップの把握を進め、適切な再教育制度の設計を行うことが重要であろう。

IT教育の推進のために外部人材の活用や教員の就労環境の改善が必要

第三に、初等中等教育課程におけるIT導入面からも課題あったことが指摘できる。OECDによる生徒側へのアンケート調査によると82、高校授業におけるデジタル機器の利用時間や、コンピュータを使って学習ソフトや学習サイトを利用する頻度で我が国は諸外国対比で大きく見劣りしていた83

この背景について、教員側に関する統計も活用して考察を深める。まず、教員に対するアンケート調査をみると、IT指導を授業で導入している中学校教員の割合は他のOECD諸国対比で低かった84第3-3-6図(1))。教員の労働時間について国際比較を行うと、我が国の中学校教員の労働時間は、OECD諸国の中で最も長く、その大半が「授業以外の時間」によるものとなっている(第3-3-6図(2))。日本の教員の授業以外の勤務時間が長い背景として、部活動等の課外活動に関わる教員が多いことによると考えられる。現在、児童生徒1人1台端末環境が整備されるとともに、統合型校務支援システムによる事務負担の軽減や、デジタル教科書・教材の導入で印刷等の教材準備に要する負担の軽減が図られる事例がある。こうした取組を着実に進めて教員の就労環境の改善を進めるとともに、外部人材を積極的に活用することも重要である。

以上みてきた通り、企業・教育機関の両面でITを学ぶ環境を改善することを通じて、社会全体のITスキルの底上げを図ることがデジタル化を進める上で重要である。

2 デジタル投資と脱炭素化

デジタル化に伴うデータセンター等の電力消費が増加することを課題とする見方がある一方で、脱炭素化を進める上でデジタル化の推進が必要であるとする見方もある。こうした論点を踏まえて、本項ではデジタル化と脱炭素化の関係性について考察を加える。

デジタル化の進んだ企業ほど脱炭素化方針を策定しやすい傾向

企業や一般家庭での活動に際して、デジタル技術を用いて、エネルギー消費量や温室効果ガスの排出量等の環境情報の計測及び予測を行いつつ、エネルギー利用効率の改善、物の生産・消費の効率化・削減、人・物の移動の削減につなげることで、温室効果ガスの排出量を削減することが可能である。デジタル技術のこうした特性を気候変動対策という社会課題の解決に向けて活用していくことが重要である85(いわゆる「グリーンbyデジタル」)。

例えば、内閣府が実施したアンケート調査と企業の財務情報を利用したロジスティック回帰分析によれば、デジタル化が進んだ企業86ほど、「自社の温室効果ガス排出量を算定している」や「自社の温室効果ガス削減目標を設定している」と回答する確率が統計的に有意に上昇することが確認できる(第3-3-7図)。この結果は、各社が保有する設備の稼働状況や温室効果ガスの排出状況を管理する上で、IT技術の実装が必要であることを踏まえると、デジタル化の進展度合いの差が脱炭素化の取組にも影響を及ぼし得るという可能性を示唆している。

デジタル技術が社会全体のエネルギー消費を抑制する効果

次に、IT資産の蓄積がエネルギー消費に与える影響について考察する。デジタル化が一国のエネルギー消費に影響を及ぼす経路は、IT機器の生産・運用に伴うエネルギー消費を通じた「直接チャネル」と、デジタル化の進展による産業構造やビジネス・プロセスの変化、IT技術の活用によるエネルギー消費の効率化等を通じた「間接チャネル」の2つに大別される87。両者をネットした効果がエネルギー消費に対して上下どちらに作用するかという点については、国や時代によって大きく異なると考えられるが、近年、我が国を対象に実施された先行研究では、IT資産は我が国のエネルギー消費の削減に貢献してきたという結果が多い88

そこで、こうした先行研究を参考に、IT資産を含むエネルギー消費関数を推計し、我が国においてIT資産の蓄積がエネルギー消費に及ぼす影響について確認する。推計結果をみると、一国全体では、IT資産が増加すると、我が国のエネルギー消費量が減少する関係が統計的に有意に確認された(第3-3-8図)。また、産業別89にみると、製造業ではIT資産が増加するとエネルギー消費量が減少する関係が統計的に有意に確認されたが、非製造業ではそうした関係は確認されなかった。ただし、感染拡大以降に進捗したテレワークにより、IT資産が各業種のエネルギー消費に及ぼす効果に変化が生じている可能性には留意が必要である。

この結果は、次の通り解釈できる。まず、第一に、産業別の推計結果では、特に製造業において、IT技術の活用によるエネルギー効率の改善効果が大きい傾向がある。第二に、一国全体でみたときの下押し効果は業種別推計値よりも大きい値となっており、業種別のパネル推計では計測されない産業構造の変化90を通じたエネルギー消費の削減効果も相応に大きい可能性が示唆される。

3 地方部のデジタル化による効果

行政コストの削減やビジネスや生活の地理的な制約の緩和につながるデジタル技術には、人口減少が進む地方部の課題を解決する役割も期待される。こうした問題意識から、ここでは特に、地方部のデジタル化の進展の必要性とその効果について考察する。

我が国では首都圏への人口集中が深刻

2021年の住民基本台帳人口移動報告によると、感染拡大以降の働き方の変化等を背景に、東京都への転入超過数が2年連続で減少するなど、東京一極集中の流れは一時的に後退したものの、やや長い目でみれば、諸外国と比較して我が国の首都圏への人口集中は依然として際立っている(第3-3-9図)。

首都圏への人口集中とそれに伴う地方部の過疎化の進行は、首都圏における住宅不足や大気汚染・水質汚染のほか、地方部における産業の衰退や環境資源の保全に支障をきたす恐れがある。また、自然災害への備えとして、首都圏以外に経済的機能が高い中核都市が育つことが望ましい。こうした課題を解決するとともに、地方の活性化やビジネス環境・生活インフラの利便性を向上する手段として、地方部のデジタル化を進めることが重要である。

人口規模の小さい地域ほど行政コスト負担が重い

地方自治体の人件費を、都道府県人口で除した値を、住民一人当たりの行政コスト91と定義すると、人口規模の小さい都道府県では、住民一人当たりの行政コストが高く、上位5県と下位5県の間には2倍以上の開きがある(第3-3-10図)。また、10年前からの変化をみると、僅かではあるが上位県と下位県の差は拡大傾向にある。政府は、2021年9月に設立されたデジタル庁を中心に、政府全体で「デジタル社会の実現に向けた重点計画92」に基づき、行政のデジタル化を推進することとしている。このうち、地方自治体の基幹業務システムについては、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、ガバメントクラウド上で提供される標準準拠システムへ移行できる環境を整備する、統一・標準化の取組を進めることにより、自治体の住民サービス向上とともに、行政効率化を目指すこととしている。

特に、感染拡大以降は、我が国の教育や行政といった公的部門のIT化の遅れが明るみとなった。実際、OECDによる各国調査では、我が国における行政手続きのオンライン化の進展度は30か国中で最下位となっており93、公的部門のIT化を加速させる必要性が強く認識されている。また、自治体におけるデジタル化の促進に向けて、ノウハウや内部人材の不足が障害となるケースが多いことに加えて、そもそも地域住民のデジタル化に対する期待値が低い自治体ほど進捗が遅い傾向も報告されている94。これらを踏まえれば、インフラ整備と並行して、地方自治体におけるIT人材の育成や地域住民のITリテラシー向上に向けた支援も同時に進めていくことが重要である。

地方部ではEC利用率が低く情報格差が生じている可能性

次に、感染拡大以降に、利用が拡大した電子商取引(Electronic Commerce、以下「EC」という。)95という観点からも、地域間の比較を試みる。まず、地域別のEC利用率をみると、関東では高く、地方部では低い傾向となっている(第3-3-11図(1))。もっとも、EC利用率は、世代や所得収入の違いといった居住者の属性情報によって影響を受ける。そこで、総務省「家計消費状況調査」の調査票情報を用いて、こうした居住者の属性の違いを考慮した上で、居住地域によってEC利用率に差が出るのかを統計的に検証する。これをみると、いずれの地域でも東京対比では、同一属性の居住者のEC利用確率が下がる傾向あり、特に人口が少ない都道府県においてEC利用確率が大きく下がる傾向が確認された(第3-3-11図(2))。

こうした分析結果は、情報通信技術に関するリテラシーや通信インフラの地域間の差──いわゆる情報格差(デジタル・デバイド)──が、経済的・社会的な格差につながっている一側面を表している。また、地方部では、小売店舗密度(エリア面積当たりの小売店舗数)が低く、EC利用によって購買行動の制約が解消される効果も潜在的には大きい可能性が考えられ、個人消費の喚起という観点からも情報格差の縮小は取り組むべき課題の一つと考えられる。


(71)Fukao et al.(2015)、宮川・金(2010)を参照。
(72)経済産業研究所(2007)は、日米韓の企業を対象に実施されたアンケート調査の結果をもとに、日本では「新製品・サービスの開発、新規事業の開拓」「主要事業の競争力強化」などの調査対象となっている経営課題の全てにおいて、IT投資の貢献度が低い傾向にあることを報告している。そのほかにも、元橋(2010)、Atrostic et.al (2008)は、日本企業が米国企業対比でIT技術を有効活用できていない可能性を指摘している。
(73)例えば、金・権(2013)は、ITを十分活用するために組織改編や労働者の訓練のような補完的な投資や資産が必要であることを指摘したBresnahan et al. (2002)を引用しつつ、日本ではIT技術を活用するために必要な組織改編への支出や労働者に対するOFF-JTが格段に少ないことを挙げ、このことが日本におけるIT投資不足の第一の原因であると指摘している。
(74)日米独を比較して同様の傾向を報告しているアンケートとして、情報通信総合研究所(2021)がある。
(75)ここで紹介した結果は、鈴木・久保(2022)で行った分析の一部である。
(76)IMD(International Institute for Management Development,国際経営開発研究所)が世界64か国(2021年時点)を対象にランキングを発表している。
(77)ジェネラリスト型の人材育成を目的に、雇用者が採用後に経験する職種や勤務エリアが流動的であることを前提とした雇用形態。
(78)詳しくは内閣府(2018)の第3章第2節を参照。
(79)詳しくは内閣府政策統括官(経済財政分析担当)(2022)の第2章第2節を参照。
(80)国際成人力調査(PIAAC)は、OECDが中心となって実施する国際調査。参加各国の成人男女を対象として、実社会で生きていく上での総合的な力(成人力)を調査することを目的に2011年から実施されている。
(81)詳しくは内閣府政策統括官(経済財政分析担当)(2022)の第2章第2節を参照。
(82)PISA2018を参照。15歳の生徒(日本では高校1年生相当)を対象とした調査。
(83)詳しくは内閣府(2021)の第3章補論を参照。
(84)OECD「国際教員指導環境調査2018」による。本調査では、小学校の教員にも同様の質問をしているが、同様の傾向が観察される。
(85)一方で、データセンターやネットワークといったデータインフラ向けのエネルギー需要の増加が見込まれることを踏まえると、デジタル機器・産業の省エネ・脱炭素化(いわゆる「グリーンofデジタル」)も同時に進めることが重要である。
(86)ここでは従業員一人あたりのソフトウェア資産額が大きい企業と定義。
(87)OECD(2010)を参照。
(88)Ishida(2015)Takase and Murota(2004)を参照。
(89)固定効果を加味した業種別パネルデータを用いた推計結果。詳細は付注3-5を参照。
(90)業種別推計で計測される効果は、業種内におけるIT資産の蓄積による効果であり、情報通信業などの第三次産業のウエイトの高まりといった産業構造の変化による効果は、一国全体の推計結果にしか現れない。
(91)歳出全体とした場合には、年齢構成の要因が大きい社会保障関連費用や、地理的特性の要因が大きいインフラ維持費用など、行政サービスを効率化することで都道府県間の差が埋まりにくい支出も相応に含まれる。行政サービスは労働集約的であることを踏まえ、ここでは自治体の人件費で比較する。内閣府政策統括官(経済財政分析担当)(2016)と同様、物価水準の地域差に起因する要因を調整するため、一人当たり人件費を各地域の民間平均賃金に対する比率で評価している。
(92)2022年6月7日閣議決定。
(93)内閣府(2020)第4章第2節を参照。
(94)浜口(2022)を参照。
(95)中島他(2022)は、家計簿アプリデータを活用し、感染拡大以降に家計のEC利用が過去のトレンドを上回って拡大したと報告している。
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