第2章 企業からみた我が国経済の変化と課題 第2節

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第2節 今後の成長に向けた課題

前節で概観したとおり、我が国の成長を担う企業は、長らく続いたデフレ状況の下で投資を節約しながら債務整理を進めた結果、財務的には健全さを高めたものの、成長資産の伸長程度は主要国に見劣ることになった。いわゆる6重苦にも苛まれ、2013年以降、こうした状況は改善してきたものの、新たな課題も抱える状況にある。本節では、20年程度の先を見込んだ上で、今後の成長に向けて解決すべき課題のうち、企業が活動する上で必要な条件として、<1>デジタル化の加速に向けた課題克服、<2>エネルギーコスト抑制下での温暖化対策への道筋、<3>立地先の人口減少によって高まるインフラコストの制御、三つを取り上げる。

1 企業活動のインフラ:デジタル化の加速に向けた課題

感染症により露呈した我が国のデジタル化の遅れは、重点的に取り組むべき課題の筆頭であろう。本項では、デジタル化の現状を概観したうえで、デジタル化の加速の足かせと成り得る課題として、<1>ソフトウェア開発における契約価格の設定方式、<2>デジタル化を支える人財不足を取り上げる。

現状、業務のDXは進んでおらず、中小企業での取組は1割未満

デジタルトランスフォーメーション(以下、DXという)とは、「デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへ変革すること」を指す。それは、「単なるアナログ情報のデジタル化にとどまらず、プロセス全体もデジタル化することで新たな価値を創造、その結果として社会的な影響・便益をもたらすものである。これを企業に当てはめた場合、デジタル技術を用いて、新たな製品やサービス、新しいビジネスモデルを構築し、ネットとリアルの両面で顧客体験33の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」をいう(第2-2-1図34

我が国企業のDXへの取組状況をみると、従業員規模500人以上の大企業に対して行われた民間のアンケート調査35では、部分的にでも既に取組中である企業割合が、合わせて7割弱にまで達している。一方、中小企業に対して行われた経済産業省の調査36では、DXに取り組んでいる企業割合は1割弱にとどまり、DXの内容をよく知らない、聞いたことがないとする回答が半数を占めている(第2-2-2図(1))。

また、DXに向けて必要なシステムの導入状況について、東証一部上場企業とそれに準じる企業を対象に行われた公益団体によるアンケート調査37で確認すると、VPN(仮想私設網)やパブリック・クラウド(SaaS)といった業務環境に関する整備は、売上高1兆円以上の企業、100億円未満の企業ともにそれなりに進んでいる。一方で、RPA(Robotic Process Automation)、IoT、AIといったより複雑な業務領域のデジタル化については、売上高1兆円以上の企業ではそれなりに導入が進んでいるが、100億円未満の企業ではまだのところが多い(第2-2-2図)。このように、東証一部上場企業とそれに準じる企業においても、業務手順・工程といった本質的に人の業務に関わる部分でのDXはまだ途上である。労働生産性を一段押し上げるためには、業務領域のデジタル化に向けた投資の実現が必要であり、こうした投資を促す観点から<1>価格設定方式の見直し、<2>人財投資、の二つに着目している。

ソフトウェアの価格設定に開発インセンティブを付与する必要

業務のデジタル化にソフトウェア投資は必須である。ソフトウェア投資の内訳をみると、アメリカはパッケージが5割強、受託開発が5割弱であるのに対し、我が国は受託開発が9割弱と大半を占めている38第2-2-3図(1))。一般的には、仕様が標準化・共通化されたパッケージソフトウェアの方が導入コストは廉価と見込まれる。

我が国におけるソフトウェア受託開発の多くは、<1>要件定義(システムの機能や開発に必要となる予算や人員を決める)、<2>外部設計(ユーザーインターフェースの設計)、<3>内部設計(システム内部の動作・機能の設計)、<4>コーティング(設計に基づいたプログラム作成)、<5>単体テスト、<6>結合テスト、<7>運用テスト、<8>リリースといった工程について、後戻りをしないことを前提に、上流工程から順番に行うウォーターフォール方式が採られている。ソフトウェア開発の価格は、<1>の要件定義において、必要な工程数や人員(人月)に基づき、言わば総括原価方式によって決定される。また、ソフトウェア業の経費に占める外注費が3~4割を占めることや、資本金規模が小さくなるほど同業者への売上比率が高くなることからもわかるように(第2-2-3図(2)(3))、各工程が下請けという形で分業化され、システム開発者は各工程に特化した技能を有している。ウォーターフォール方式の問題点として、<1>費用を積み上げる総括原価方式であるため、開発側に生産性を向上させるインセンティブが働かない、<2>各工程を作り込んで次工程に進むため、開発期間が長くなる、<3>上流工程を担う元受けや1次下受けは、プロジェクト管理がメインとなってくるため、優秀なエンジニアが育ちにくい、といった点が指摘されている39。ソフトウェア開発の価格決定には、総括原価方式ではなく、開発者へのインセンティブが与えられるような利用価値に基づく考え方が、生産性向上とイノベーティブなアイデアの発出には必要である。こうした価格形成がなされる当事者間の商慣行の変革が望まれる。

なお、アメリカや中国では、<1>企画(どんなシステムやソフトウェアを作りたいのか)、<2>イタレーション(反復試行過程:計画、設計、実装、テストのサイクルを回す)、<3>リリースという3工程から成り、優先度の高い機能から順に、1~4週間程度の短い周期で<2>~<3>の工程を繰り返しながら開発を行うアジャイル方式40が採られている。ウォーターフォール方式のような業界内の分業体制は採らず、一つのプロジェクトチームで作業が完結するほか、顧客要請に応じて臨機応変に仕様変更や新技術を取り入れることも可能であり、無駄な作業は省くなど、可変的・短期的な開発が可能となっている。また、開発側には、顧客満足度や納期短縮へのインセンティブが働きやすい。もっとも、アジャイル方式では、顧客側にもソフトウェアのノウハウを持った人材が一定程度必要であり、内閣府(2020)で指摘したように、IT人材がIT業に偏在する我が国では難しい側面もある。

技術進歩に整合的な人財育成と投資が必須

デジタル化には、開発側にもユーザー側にも人財が必要だが、現状ではかなり不足している。総務省「令和2年通信利用動向調査」によれば、ICT人材について、全体では5割強の企業が「足りていない」と回答している。また、「社内に必要ない」「分からない・無回答」の割合は合わせて3割程度にも及んでおり、中小企業を中心にデジタル化の必要性に無自覚な企業も少なくない。企業規模別では、海外企業との競争機会が多い大企業ほど「足りていない」との回答割合が高く、8割弱にのぼっているのに対し、直接的な取引関係に占める国内事業者のウェイトが高い中小企業では5割程度にとどまっている。

IT人材の不足分野については、全体的にネットワーク技術者の不足割合が最も高い。また、大企業では、ネットワーク技術者やシステム開発技術者といったデジタル化の基本的な部分もさることながら、セキュリティ人材や需要取り込みのためのマーケット分析等を行うデータサイエンティストが不足しているとの回答割合が、中堅・中小企業と比べて高くなっており、求められるICT人材の分野も広がっている(第2-2-4図(1))。加えて、我が国のICT人材は、総数が不足していることに加え、欧米主要国と比べて情報通信分野に偏在している点も特徴である41

また、科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2020」によると、情報通信分野における「従業員に占める研究者の割合」はアメリカの11.4%に対し、我が国は8.7%にとどまるほか、「研究者に占める博士号取得保持者の割合」もアメリカの8.1%に対し、我が国は僅か2.8%である(第2-2-4図(2))。

また、産業分類別の研究開発費(対名目GDP比)をみると、日米間では産業別ウェイトに大きな違いがある。情報通信業についてみると、アメリカが0.44%であるのに対し、我が国は0.11%とアメリカの3割程度である。当然ながらアメリカGDPの規模は我が国よりも大きく、情報通信業で費やされる研究開発費の実額差はさらに大きい42。もちろん、輸送用機械機器等、我が国が特化している業種が高いウェイトになっており、この一部には、情報通信に関連した研究開発も含まれると考えられる。ただし、デジタル化及びその高度化の動きは急速であり、かつ、広範な業務手順や方法に影響を与えることから、人財と資金の投下を増やすべきである(第2-2-4図(3))。

2 企業活動のインフラ:エネルギーコスト抑制下での温暖化対策

前節の「6重苦」のその後について記した際、現在の我が国においては、「2050年カーボンニュートラル」(以下、カーボンニュートラルという)を掲げ、温暖化対策にコミットしていることを紹介した。このようなグリーン化、CO2排出削減の流れがデファクトで生じている下、企業は国内外の規制・制約に対応することが求められている。

本項では、はじめに企業によるこれまでのエネルギー消費・CO2抑制の取組を評価する。その上で、カーボンニュートラルの目標に向け、発電コスト抑制とエネルギー効率改善に向けたイノベーションに取り組むことで、カーボンニュートラルと経済成長を同時に達成することが求められている点、また、こうしたイノベーションの促進が、我が国企業の競争力向上にもつながる点を指摘する。

企業は経済成長と同時に省エネによるエネルギー消費抑制を実現

はじめに、産業別のエネルギー消費量(2004年度を基準とした累積寄与)をみると、2010年度までは、実質GDP(民需)の動きとおおむね連動していたが、東日本大震災(2011年度)以降は、実質GDPが増加基調に復する下でも、エネルギー消費量は減少傾向を辿ってきた。いずれの部門もエネルギー消費量の減少に寄与しているが、特に「製造業」「運輸」「第三次産業」といった企業部門の寄与が大きい(第2-2-5図(1))。

こうした「製造業」「第三次産業」「運輸」に加えて、「家庭」のエネルギー消費増減について、資源エネルギー庁による要因分解の結果をみると、いずれの部門においてもエネルギーの生産効率を示す「エネルギー原単位」が減少に寄与しており、エネルギー効率向上・省エネへの取組が実を結んでいることが示唆される43。特に、第三次産業部門では延べ床面積が、家庭部門では世帯数が、すう勢的に増加する中にあっても、エネルギー効率向上・省エネによりエネルギー消費量を着実に減少させている(第2-2-5図(2))。

エネルギー効率の向上は進んだが、電力コスト高は解消されていない

このように、企業・家計は自らの努力によりエネルギー消費量を抑制してきたが、エネルギー消費量とCO2排出量をみると、別の姿がみえてくる。先にみたように、東日本大震災以降、実質GDPが増加基調を辿る中でもエネルギー消費量は減少したが、この間のCO2排出量をみると、2013年度頃までは実質GDPの動きと連動するように増加している。また、CO2排出量増減の要因内訳をみると、消費するエネルギーの構成変化により増減する「炭素集約度要因」が増加に寄与していたことが分かる(第2-2-6図(1))。

そこで、エネルギー構成変化の動きについて、エネルギー最終消費の25.8%44(2019年度時点)を占める電力について、発電量の変化を電源別にみると、東日本大震災以降、原子力発電の稼働停止により、2013年度頃まで石炭火力発電やLNG火力発電といったCO2排出量が多い電源の寄与が高まったことが分かる。また、企業はエネルギー効率を高め、消費電力を抑える努力をしていたものの、原子力発電に比べて燃料コストの高い火力発電の割合の高まり等により、電気料金の平均単価が上昇していた時期であり、これらが本章1節2項で振り返った「6重苦」の一つ「<6>電力不足・電力コスト高」の要因である。2014年度以降の発電量の変化には、原子力発電の寄与が上昇、石油火力の寄与が低下、太陽光発電の寄与が上昇している(第2-2-6図(2))。

この結果、電気料金の平均単価は、2014年度以降、2010年度対比で高止まりしている(前掲2-1-13図(3))。また、実際の電気料金は、託送料金なども含まれ、電源の稼働状況、燃料価格、電力需要によって大きく左右されるため正確な予測は困難であるが、「エネルギー基本計画(素案)」で示された2030年度におけるエネルギー需給見通しでは、2030年度における1kWh当たりの電力コストについて、2015年において想定した9.4~9.7円を上回る約9.9~10.2円程度を見込むとされている。

2030年度エネルギー需要見通し達成には、需要抑制か効率化を図ることが必要

次に、「エネルギー基本計画(素案)」で示された2030年度の温室効果ガス削減目標-46%(2013年度比)達成の前提となる電源供給について、発電コストと電源構成を確認しよう。2021年に試算を行った2030年モデルプラント電源別発電コストについて、原子力発電コストは2015年に試算を行った2014年モデルプラント試算結果対比で僅かに増加している。一方、2030年の太陽光(事業用)発電コストは資本費(建設費など)の減少等により、2014年モデルプラント試算結果対比で減少しており、他の電源の電源別発電コストと比較しても低廉になっている。ただし、これら発電コストは、電源別に固有費用を勘案して算出した値であり、現実には太陽光・風力(自然変動電源)の大量導入により、火力の効率低下や揚水の活用による電力ロスなどに伴う費用などの「統合コスト」が発生することを考慮する必要がある。電源別発電コストの試算を行った発電コスト試算ワーキンググループでは、委員有志による「統合コストの一部を考慮した発電コスト(仮称)」も示されている(第2-2-7図(1))。加えて、2030年の電源別発電コストは、典型的な発電設備を「モデルプラント」として仮想し、同年に、新たな発電設備を更地に建設・運転した際のkWh当たりのコストであり、「エネルギー基本計画(素案)」で示された「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」における各電源のコストを示すものではない点に留意が必要である。

その上で、2030年度におけるエネルギー需給の見通しにおける電源構成をみると、再生可能エネルギー36~38%程度、原子力20~22%程度、LNG火力20%程度、石炭火力19%程度、石油火力等2%程度、水素・アンモニア1%程度となっている(非化石電源6割弱、化石電源4割強)。2015年に示された長期エネルギー需給見通しにおける電源構成と比較すると、「LNG火力」、「石炭火力」を中心に化石電源の構成比が縮小する一方、「太陽光」「風力」を中心に再生可能エネルギーの構成比が拡大する見通しとなっている(第2-2-7図(2))。

次に、「エネルギー基本計画(素案)」で示されたエネルギー需要(最終エネルギー消費)を確認すると、同素案では、2013年度以降の平均経済成長率1.4%等を前提とした場合の2030年度の最終エネルギー消費は、「省エネの野心的な深堀り」を伴う省エネ後ケースでは、「約280百万kL程度」、こうした省エネを伴わない省エネ前ケースでは、「約350百万kL程度」と示されている。2019年度の最終エネルギー消費実績が「334百万kL」であったことから、省エネ後ケースのエネルギー需要は、2020年度以降の11年間で、年平均約-1.5%の削減を図る必要がある(第2-2-8図(1))。

通常の経済成長経路を前提に考えると、成長に伴ってエネルギー需要は増加するため、経済成長とエネルギー需要減を同時に実現するためには、エネルギー単位当たりの生産を引き上げる、すなわち、エネルギー効率を高めることが必要となる。実際、我が国では、2030年度のエネルギー需要目標の発射台となる2013年度以降も経済成長と各分野での省エネが同時に実現されてきた。2013年度から2019年度の6年間で実質GDPは3.6%増加(年率約0.6%)したのに対し、最終エネルギー消費は-8.1%減少(年率約-1.4%)した(第2-2-8図(2))。すなわち、エネルギー効率の改善は年率2%を実現したことになる45

こうした過去の改善テンポが続くと仮定し、機械的に2030年度の最終エネルギー消費を試算すると、約314百万kL程度46となる。もっとも、省エネ後のケース(約280百万kL)に向けては、これまでのエネルギー効率の改善に加えて-11%程度の需要抑制・効率化が必要となるため、引き続き、エネルギー効率の低い分野、エネルギー需要の大きい分野を中心に、エネルギー効率を改善する必要がある。

産業構造を維持する場合、エネルギー単位当たり付加価値を高める必要

経済の各部門において、短期間にエネルギー効率を高めるイノベーションを起こすためには、それ相応の研究開発費や人員の投入を要するだろう。イノベーション以外にこうした効率改善を実現する方策は産業構造を変化させることである。省エネ先進国である欧州を例にみていこう。まず、主要国におけるエネルギー効率性(実質GDP/エネルギー消費量)をみると、英国が最も高く、我が国はドイツより若干低い水準となっている(第2-2-9図(1))。エネルギー効率は、エネルギー投入量に対する付加価値産出量であり、付加価値(GDP)増加要因とエネルギー消費量要因に分解することができる。エネルギー効率の要因分解をみると、英国は、エネルギー消費量を抑えると同時に、GDPの増加も実現している。2004年度を基準とした伸び率では、両者の寄与が同程度となり、エネルギー効率を45%高めている。一方、我が国と同様に製造業比率が高いドイツは、GDPの寄与がエネルギー消費量の寄与の2倍超となっており、この間のエネルギー効率性の高まりは32%と、英国から10%ポイント程度低い。我が国は、英国と同様、省エネの実現によりエネルギー消費量を抑えてきたが、GDPの増加は限定的で、この間のエネルギー効率は30%増と、英国から15%ポイント程度、ドイツから2%ポイント程度低くなっている(第2-2-9図(2))。

こうしたGDPとエネルギー消費の関係は各国の産業構造と関係が深い。英国は、我が国及びドイツと比べて製造業の割合が小さいが、産業別事業所当たりエネルギー原単位をみると、他の産業に比べて製造業のエネルギー消費量は大きい。今後、我が国のエネルギー効率の向上が英国型で進むのであれば、いわゆるエネルギー多消費型の業種の衰退、技術基盤等の流出、空洞化を伴うおそれがある(第2-2-9図(3)(4))と同時に、温暖化対策の観点からは、企業移転先での温室効果ガス排出量が増加し、地球全体としての温室効果ガス排出量がむしろ増加してしまう、カーボン・リーケージの問題が生じる可能性がある47。我が国の産業構造はドイツと同様であるが、これを維持する場合は、各産業におけるエネルギー単位当たりの付加価値を高めていく努力が不可欠である。

デジタル化などの社会構造変化に伴う電力コスト増を見据えた対策が必要

エネルギー需要の先行きを考える際には、先に触れたDX等、今後はさらなるデジタル需要の増加が見込まれており、それに呼応したエネルギー需要の増加が生じると考えられる。こうしたデジタル化の進展と、それに伴う電力コスト増は、我が国に限らず、グローバルに生じている課題である。

そこで、デジタル化に関わる業種の事業所当たりエネルギー消費原単位をみると、電子部品・デバイスは電力を大量に消費する素材産業に匹敵するエネルギー消費を必要とするほか、通信業も輸送用機械と同程度のエネルギー消費を必要とし、非製造業平均比では、約30倍のエネルギーを必要とする(第2-2-10図(1))。

また、建物用途別のエネルギー原単位をみても、電算・情報(データセンターなど)のエネルギー消費が群を抜いて多い。技術進歩等により、2012年度から2019年度にかけて電算・情報のエネルギー原単位は3割強減少しているが、それでも他の建物に比べて電力消費が大きい点に変わりはない。さらに、感染対策によるテレワーク等の拡がりもあり、我が国のインターネットトラヒック量はこれまでのトレンドから大きく上振れており、今後も増加する可能性がある。

こうした経済活動の変化に伴う電力需要の増加に加えて、化石燃料を用いる動力源の見直しが電力需要を新たに創出することも見込まれている。例えば、EU諸国ではガソリン車の販売禁止の方向性が示されるが、代替候補のEV車は多くの電力を必要とする。

カーボンニュートラルと経済成長の同時実現に向けて、発電コスト抑制とイノベーションへの取組が必要

今後、我々が向かうとされる経済社会においては、何らかの技術パラダイムの変化がない限り、電力需要が増える可能性があり、エネルギー問題が供給制約とともに価格上昇を通じて生産性上昇の足かせになるリスクを避けることが必要である。資源エネルギー庁によれば、2020年度の太陽光発電の買取価格(事業用)は、12円/kWhとドイツ(5.5円/kWh)の倍以上あり、価格の低下余地はまだある。カーボンニュートラルの実現に向け、発電コスト抑制とエネルギー効率改善に向けたイノベーションに取り組むことで、カーボンニュートラルと経済成長の同時実現が求められている。また、こうしたイノベーションの促進は、世界の技術やライフスタイル面でのデファクトスタンダートを握るカギとなり、我が国企業の競争力向上にもつながる。

これまで国内における温暖化対策について検討してきたが、この問題は各国ともに直面する課題であり、一国内で完結するものではないことから、国際的な枠組みにおける対応協力が重要である。その中では、温室効果ガス削減の経済的インセンティブを付与するカーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度等)や、カーボン・リーケージ問題を防ぐ炭素国境調整措置の導入など、価格をシグナルとして資源の最適配分を図る考え方、市場機能を活用した解決案も提案されている。市場機能の活用に国際的な技術協力の実施を交えることで、環境と開発の両立を図ることは長らく議論されており、我が国は、こうした議論を積極的にリードしていくことで、我が国企業の新たな成長を後押しする必要がある。

コラム2-3 地球温暖化とグリーン投資

地球温暖化と温室効果ガスに関する国際的な議論は、1985年のフィラハ会議を皮切りに始まった。国際的な議論の歴史はまだ浅いが、35年余りで京都議定書(1997年)やパリ協定(2015年)において、具体的な温室効果ガス削減数値目標や目標達成時期、温室効果ガス排出量に関する報告義務などが導入され(コラム2-3-1図)、欧州をはじめとした先進国を中心に、省エネ対策やエネルギー分野の脱炭素化など、温室効果ガス削減に向けた様々な研究・取組が進んでいる。

実際、世界及び我が国の平均気温及び二酸化炭素濃度は、長期的なすう勢として上昇基調を示している(コラム2-3-2図)。また、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下IPCCという)「第6次評価報告書 第1作業部会(以下、AR6という)」48では、2011~2020年の世界気温平均気温は、工業化以前(1850~1900年)よりも、1.09℃高かった(人間活動は約1℃の地球温暖化をもたらした)との結果が示されている。

こうした気候変動は、<1>人為起源と<2>自然起源の両要因によってもたらされることが広く知られているが、AR6においては、<1>人為的起源について、人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がなく、また、AR6で考慮したすべてのシナリオにおいて、向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は、1.5℃及び2℃を超えると指摘している。

一方、<2>自然起源の気候変動については、地球は1万年前には数千年間、現在よりも暖かく、1000年頃の温暖期は現在と同程度、1200年頃から1850年までは「小氷期」を迎えるなど、人間活動とは無関係に温暖・寒冷化のサイクルがあることが、気候学者の研究により明らかにされている49。現在、工業化以前の限定された期間と比べて気温が上昇していることは事実であるが、その要因については起源の異なる2つの見方があり、<1>人為起源による温暖化に加えて<2>自然起源の温暖化により、<1>で想定した以上の温暖化が進む可能性もある。

また、地球温暖化が進行するにつれて、極端な高温・大雨、幾つかの地域における農業及び生物学的干ばつの増加、強い熱帯低気圧の割合の増加などが指摘されている5051。酷暑に対する熱中症警戒アラートや豪雨などが身近に感じられる事例であるが、例えば、2000年以降の我が国における水災害被害額は、年平均5,000億円に上り、2004年は2兆円を超える額となっている。ここでは振れが大きいために傾向は読み取れないが、自然災害による世界の経済損失額をみると、1978~97年と、98~2017年を比較すると、気候関連部分に限っても2.5倍となったとの報告もある52。さらに、アメリカでの研究事例では、農林水産業以外の業種でも、気温上昇により生産量が有意に減少するとの実証分析結果が示されるなど、温暖化による経済損失の可能性も報告されている(コラム2-3-3図)。

IPCC「1.5℃特別報告書」では、地球温暖化を工業化以前比1.5℃以内に抑える過程で、温室効果ガスが削減されることは、大気の質的な改善をもたらし、結果として人々に健康便益を与えるとしている。一方、そのために必要な総コストや所得減少がもたらす影響に関しては、文献が限定的であるとの理由から評価の対象としていない。ただし、費用便益に関しては、例えば、IMFによる分析では、温暖化対策による便益は、費用を上回るとの報告がなされている53。また、温暖化対策と同時に国連サミットで議論されている持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、以下SDGsという)では、2030年までにSDGsを達成するためには年間5~7兆ドルの資金が必要と報告されている54

温暖化対策も含むSDGsの達成に向けて必要な資金の多くは経済活動の主体である民間部門から調達する必要があり、企業は、ESGレポートなどにより、SDGsへの取組や達成状況を投資家に示し、投資家はこうした取組も投資判断の材料とするなど、機関投資家がけん引する形で、ESG投資への取組が加速している。グリーンボンドの発行額の推移をみると、我が国の発行額は、2014年比で+30倍と市場の急成長がみられることに加え、日本銀行が「気候変動対応を支援するための資金供給」を表明するなど、金融面での取組が強化されている。

また、民間調査会社55によるアジア地域を対象とした調査によると、CO2排出量政策を掲げている企業割合は、香港を筆頭に高いが、具体的なCO2削減目標を掲げている企業割合は、我が国が圧倒的に高い。香港・中国・インドは政策を掲げながらも、具体的な目標設定まではあえて行っていない企業が多い(コラム2-3-4図)。

金融面での後押しが、過剰な企業負担ではなく、新技術の開発や生産性の向上など、経済面のメリットにつながり、好循環を生み出すことが期待される。

3 企業活動のインフラ:人口減少に対応した国土インフラの最適化

人口減少時代を迎えた我が国において、三つ目の課題となる企業活動のインフラとは、国土インフラの維持と最適化である。国土インフラの維持及び維持コスト抑制も含めた最適化は、企業にとっては地方の生産立地拠点を維持するための条件となる。また、企業活動が可能なインフラを維持・最適化することは、地方にとっては雇用創出及び人口維持につながる。こうしたことから、人口減少に対応した国土インフラの最適化は、企業・地方双方にとって重要な課題である。

人口減少と老朽化によりインフラ維持コストは上昇する見込み

我が国は、2008年以降、すう勢的な人口減を辿っており、2007年から2020年の13年間で約280万人の減少となっている。これは、広島県の人口(283万人、2020年時点)に相当する。現状、対策は講じているものの、出生数に反転はみられず、加えて、感染症下で世界的にも出生数が減少しており、今後担税基盤の主力となる生産年齢人口は減少の一途となる可能性がある。その結果、特に、地方圏におけるインフラ維持費用の負担が課題になると見込まれる。

ここで、いわゆるハード面のインフラ整備について、公共事業関係費の推移をみると、2013年度を底に増加基調を辿っている。この間、社会資本ストックも増加しているが、同時に社会資本の減価額も増加し、減耗率は上昇している。国土交通省によれば、こうしたインフラの国民一人当たり維持管理・更新費用は、予防保全が適切になされる場合でも、2018年度の4.1万円から2048年度には6.3万円と1.5倍になるが、予防保全が進まない場合は、11.9万円と2018年度の3倍近くにまで膨れ上がると試算している(第2-2-11図)。

この試算からは、インフラ維持の国民負担軽減には予防保全が重要であるとの含意が導出されるものの、トンネルや橋梁といった交通インフラ関連資産を例として、我が国の主要インフラの予防保全率をみると、国土交通省管轄のものでも合計2割程度しか着手・完了しておらず、都道府県や市区町村、高速道路会社管轄では僅か2~3%にとどまる。一国全体では3%であり、先にみた予防保全が進まないケースが現実味を帯びている56第2-2-12図)。

集住・集約・非保有化により、インフラの維持可能性を確保

先(前掲第2-2-11図)にみた全国合計での一人当たりインフラ維持の将来コストについて、2018年から2038年にかけての変化を当該社会資本が存在する都道府県別にみると、いずれも一人当たり負担額は上昇するが、2018年は、47都道府県のうち、全国平均を11都府県が下回っていたところ、2038年には、予防保全をした場合でも2018年時点の全国平均を下回るのは東京、愛知、千葉、神奈川、埼玉の1都4県へと減少し、大半の自治体が2018年度の全国平均を上回る維持コストを負担する状態に陥る。この20年間のコスト増(予防保全をした場合)を、ストックに起因する維持費用増と負担する人口減に分解すると、一人当たりコストの上昇分が大きい都道府県ほど、後者が大きな増加要因となっている(第2-2-13図)。

このように、人口減少は地域圏の経済活動において必要となるインフラ維持の一人当たり負担を増加させる。また、ハードなインフラ維持だけでなく、ソフトなインフラである行政サービスについてもこうした傾向がある。例えば、人口密度と行政コストの間には、人口密度が高いほど一人当たり行政コストは小さくなる傾向があり、多くの自治体において、人口減少による密度低下、過疎化によるコスト上昇は今後加速する(第2-2-14図(1))。さらに、行政サービス以外にも、民間が提供する経済社会活動に必須なインフラサービスの提供において、人口減少が悪影響をもたらす。生活関連サービス施設(「飲食料品小売業」「ショッピングセンター」「飲食店」「郵便局」「銀行」「一般診療所」「歯科診療所」「介護老人福祉施設」「一般病院」「通所・短期入所介護事業」「介護老人保健施設」「救急告示病院」「有料老人ホーム」)の提供には、一定の需要規模、人口規模が不可欠となる。こうしたサービス提供に必要な人口規模を下回る市町村の面積割合について、都道府県別に計算した「生活関連インフラ維持危険度指数」を求めると、2019年時点においても、27%の面積相当の自治体(3大都市圏を除く)で生活インフラの提供が困難となるリスクがあり、2045年になると、34%程度の面積相当の自治体へと広がる57。(第2-2-14図(2))。

こうした事態を避けるために、生活関連サービスインフラが維持できるように集住の促進、公的設備等の集約化、さらにはハードに頼らないサービス提供体制の整備(デジタル化で代替できる設備58は保有しない)など、早急な実施が求められる。

テレワークなどデジタル化を背景に東京圏一極集中に変化の兆しもみられる

このように、地方圏では、人口減少や設備の老朽化によって経済社会活動に要する人口当たりインフラ維持コストが増加し、維持できなくなる事態が懸念される。一方、人口規模は維持される見込みの東京圏においては、そうした懸念は小さいものの、一極集中による人口密度の高さから一部では規模の不経済が生じている59

例えば、都道府県別人口密度と消費者物価水準の関係を描くと、人口密度が高いほど物価水準は高くなる傾向があり、2019年時点での東京の物価水準は全国平均よりも5%程度高い。そのうち、住居費だけを比べると、3割を超える高さである。住居については、人口密度が高いと住宅当たりの延べ床面積は狭くなるという傾向がある。特に、東京は、単身世帯が多いこともあり、一般世帯の平均人員も一番少なく、住宅当たり延べ床面積も一番狭い。このように、生活維持コストが高いこともあり、実収入の配分(二人以上勤労世帯、2019年)は、選択的支出60の割合が全国に比べて小さい。また、都道府県別婚姻率と合計特殊出生率をみると、若い世代が集う東京の婚姻率は最も高く、子供の数も総数では多いものの61、合計特殊出生率では最も低くなっている(第2-2-15図)。東京一極集中は、規模の不経済を通じたコスト高、それによって生じる生活における厚生水準、満足度の低下と社会の再生産力に脆弱さを抱えている。

こうした中、1年の大半が感染症下であった2020年には、人口移動に変化がみられた。東京への人口流入が前年から減少に転じ、転入超過人口が平年(2015年から2019年の5年平均)から約5万人減少した。5歳ごとに区切られた年齢階層を5つに分類(「子ども世代(14歳以下)」「進学世代(15~19歳)」「就職世代(20~29歳)」「子育て・働き世代(30~54歳)」「セミリタイア・リタイア世代(55歳以上)」)して特徴をみると、平年は転入超過である「子育て・働き世代」及び「子ども世代」が転出超過に転じている62。この二つの世代は親子として一体に捉えることができるが、感染症を契機に「子どもがいる世帯」が他の都道府県へ転出した、あるいは東京への転入をやめた可能性がある。平年差が転入超過となっていることから、これら移動者の受け皿は、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木といった東京近郊県の可能性が高い。

こうした動きが可能となった背景には、テレワークの急速な浸透があると考えられ、転出先としても東京へのアクセスが良い近郊県が選ばれたとも想像できる63。また、一部の企業では、感染拡大を機に転勤制度を見直し、地方在住者でも、テレワークで東京オフィス所属が可能になるなど新たな制度を導入する動きも出ている64。なお、東京の人口移動における平年差は、どの世代も減少している(第2-2-16図)。

人口減少地域では、動きのみられる集住化の加速が重要

感染症を契機として、テレワークが後押しするかたちで東京への人口流入に変化がみられ始めているが、同時に、人口減少地域では、徐々に集住化の動きが進んでいる。都道府県ごとに、市区町村の人口が各都道府県の人口に占める割合を用いて、ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックス(以下、HHIという)を算出65すると、人口が少ない県ほどHHIが高く、当該道府県内において集住化が進んでいる点がうかがえる。また、2015年から2020年までの5年間の変化では66、人口減少率が高い県ほどHHIが高まる傾向がみられており、人口減少につれて集住が加速している点もうかがえる67第2-2-17図)。我が国のインフラ維持最適化に向けては、東京の一極集中の緩和に加えて、人口減少地域では、既にみられ始めている集住化が重要である。


(33)顧客が商品やサービスを購入・利用する際の体験をいう(カスタマーエクスペリエンス(CX))。これには、商品購入時の企業の雰囲気や事後サービスなど商品やサービスを購入・利用する際に得る満足度なども含まれる。
(34)デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会(2020)。
(35)株式会社電通デジタル(2020)。
(36)経済産業省「地域未来牽引企業アンケート」(2020年11月)。
(37)一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(2021)。
(38)アメリカのソフトウェア投資は、自社開発を含めると、パッケージ4割強、受託開発4割弱、自社開発2割。我が国の自社開発ソフトウェアは正確な数字の把握ができないのが現状であるが、IT人材がIT産業に偏在していることを勘案すると、自社開発比率は小さいと考えられる。
(39)デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会(2020)、(株)日立ソリューションズ(2019)他。
(40)アジャイル開発とは、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進める手法。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれている。政府は、規制改革推進会議・成長戦略ワーキング・グループ(第6回、2021年3月)にて、アジャイル開発に関するメリット・デメリットを議論するなど、我が国でも同開発の促進に向けた議論が進んでいる。
(41)内閣府(2020)では、アメリカのIT人材は、IT産業に3割強、その他産業に6割強所属しているのに対し、我が国のIT人材は7割強がIT産業に集中。残る3割弱のうち、公務や教育・学習支援に所属するIT人材は合わせて1%に満たない点を指摘している。
(42)アメリカの9.9兆円に対し、我が国は約6,000億円と、約16倍もの差がある(2017年時点の比較)。
(43)資源エネルギー庁(2021)「令和元年度におけるエネルギー需給実績」による。
(44)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」による。
(45)2013年度から2019年度の6年間における実質GDPの年平均成長率が0.6%、最終エネルギー消費が同-1.4%であるため、エネルギー効率は、年率2%(=0.6-(-1.4))。
(46)平均経済成長率1.4%が実現する場合、エネルギー効率の改善(年率約2%)と整合的なエネルギー需要抑制は、年率約0.6%(2%-1.4%)。これを2020年度から2030年度の11年間に当てはめると、334百万kL(2019年度エネルギー消費実績)×(1-0.6%)^11=314百万kL。
(47)カーボン・リーケージは、一般に<1>国内市場が炭素効率の低い輸入品に脅かされ、国内生産が減少すること、<2>炭素制約を理由に産業拠点が制約の緩い海外に移転し、地球全体での温室効果ガス排出量が減らないこと、の2つの文脈がある。<1>に対しては、炭素国境調整措置など、気候変動対策を採る国が、対応策の不十分な国からの輸入品に対し、水際で炭素課金を払う国際的な枠組みを作ることで防ぐことが検討されている。炭素国境調整措置については、EUで導入に向けた検討が進んでいるが、我が国では「成長に資するカーボンプライシング」の観点から議論の途上である。<2>については、温室効果ガス排出枠の無償割り当てや免税等で対応する案があるが、国・地域により温室効果ガスへの対策・規制の差がある限り、カーボン・リーケージの問題が生じるリスクは常にある。
(48)2021年8月20日時点暫定訳に基づく。今後、専門家の意見を踏まえた確定約に更新予定であり、最新の訳は随時気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipc/ar6/index.html)に掲載予定。
(49)赤祖父(2008)、丸山・川島・戎崎・アーチルボルド(2020)他。
(50)IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書など。
(51)一方、寒冷により誘発される影響(農作物の不作、「最適でない気温」による超過死亡のうち、寒さによる死者が暑さによる死者を上回るなど)も指摘されている(医学誌The Lancet Planetary Health等)。
(52)各国の工業化・経済発展により、同規模の災害でも、その被災額は大きくなっている側面もある。
(53)IMF(2020)。
(54)OECD, The World Bank, UN Environment(2018)。
(55)REFINITIV社。
(56)国土交通省(2020)は、予防保全が進まない背景として、インフラを管理する地方公共団体において、メンテナンスに携わる人的資源が官民ともに不足している点を指摘している(市町村の約半分が技術系職員数5人以下)。人的資源の不足に対し、ドローン等の新技術を活用した維持管理・更新の高度化・効率化、地方公共団体間の連携や国による地方公共団体への支援、住民協力といった多様な主体による連携・協力・支援が必要としている。
(57)各市区町村の2019年及び2045年の人口(推計)を用いて、2045年には維持困難となる可能性がある施設割合を市区町村ごとに計算し、それを各市区町村の面積で加重平均することにより、都道府県単位の言わば「生活関連インフラ維持危険度指数」を導出している。
(58)内閣府政策統括官(経済財政分析担当)(2016)では、政府が施設を持たずに公共サービスの提供を行う手法として公共サービスの「ソフト化」を提示している。IT等の活用で「ソフト化」が図れるものとして、公会堂・市民会館(オンラインによるイベント等のコンテンツ配信)、図書館(電子図書館)、庁舎(窓口業務等のオンライン化)、病院・診療所(遠隔医療システムによる診察)を挙げている。
(59)一人当たり負担という点において、人口が減少する地方圏のような問題は、東京都ではまだ生じていない。ただし、東京都の75歳以上人口が2015年から2045年にかけて55%増加する見込みであるなど、地方で先行する高齢化は、今後東京都でも急速に進む見込みである(付図2-3)。
(60)選択的支出とは、支出弾力性(消費支出総額が1%変化するときに各財・サービスが何%変化するかを示した指標)が1.00以上の、言わば「贅沢品的なもの」を指す。本稿では、中分類のうち、支出弾力性が1.00以上の小分類が大半を占める「被服及び履物」「交通・通信」「教育」「教養娯楽」「その他の消費支出」を選択的支出として計上し、実収入の分配は内閣府にて算出している。
(61)総務省「人口推計」によると、2019年10月1日現在の5歳未満の人口は東京都が最も多く、54万人と全国の約1割を占める。
(62)「セミリタイア・リタイア世代」は平年でも流出超過である。
(63)前掲第1-1-11図では、テレワークの進展を含めた働き方やライフスタイルの変化に伴い、感染拡大後の都心居住者の住替えに伴う住宅需要については、都心では賃貸マンションへのシフトも選択肢となり、郊外では引き続き戸建志向を特徴とした動きがみられる点を指摘している。
(64)カルビー(株)は、オフィス勤務者へ新しい働き方「Calbee New Workstyle」を提示(2020年6月)。モバイルワークを原則とし、業務上支障がないと所属部署が認めた場合は、単身赴任(転勤)を解除する方針を示した。また、富士通(株)も、テレワークや出張で対応できると判断した場合は単身赴任を解除し、自宅に戻って働けるようにする。また、配偶者の転勤などで引っ越しせざるを得ない場合も、リモートで変わらず働けるようにするなど準備を進めている。
(65)HHIは、ある産業における企業の競争状態を測る指標として用いられることが多く、企業の市場占有率の2乗を加算して算出し、市場が独占状態に近いほど指数の値は10000(完全独占)に近づく性質を持つ。本稿では、HHIの手法を用いて、市区町村人口が、所属する都道府県人口に占める割合を2乗し、都道府県ごとに合計することで集住度を算出している。
(66)市区町村の構成比変化があると正確な比較ができなくなるため、この5年間で変化のあった宮城県と福岡県を除く45都道府県ベースとなっている。
(67)政府は、人口減少・少子高齢化社会を踏まえ、2013年に「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申」を取り纏め。同答申を踏まえて、「連携中核都市構想」を制度化し、2014年度から全国展開している。同構想は、過疎化が進む地方都市の経済を持続可能なものとするために、地域において相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワークを強化する政策。人口減少・少子高齢社会でも一定の圏域人口を確保し、社会経済を維持するための拠点形成に取り組んでいる。
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